【リグミの解説】
「チャンバラごっこ」と「おままごと」
男の子は「チャンバラごっこ」、女の子は「おままごと」。昭和20年代から30年代頃の景色には、そんな子供たちの遊び方の典型がありました。平成20年代の子たちは、どんな遊び方をしているのでしょうか。
時代が変わっても、性別が持つエネルギーの違いが、好みや行動に反映されることに、変わりはないと思います。男の子は、どちらかというと、外側に直線的に強く発するエネルギーがあり、女の子は丸く内側に包み込むエネルギーとなる傾向があります。
本日の新聞1面トップ記事は、読売新聞と朝日新聞が「自民党の衆院選向けの公約案」です。毎日新聞は「自民党の安倍総裁の発言に対する日銀の白川総裁の反論」、東京新聞が「対立あおる政治脱却」を訴える記事です。いずれも今度の衆院選で与党復帰が予想される自民党の動静を伝えるものです。そのキーワードは、「右傾化」。
右傾化する自民党
長期政権時代の自民党は、「右」(タカ派、保守)から「左」(ハト派、リベラル)まで抱え込み、そのバランスをはかりながら、全体としては「中道保守」の政党として政権を保持してきたと思います。政権を民主党に奪われ、下野したこの3年間で、自民党は、「国を統べる」責務から解放されたことで、自党をバランスさせていた「タガ」もはずれたように見えます。
総裁候補の中でも最も「右寄り」と言われた安倍氏が総裁に選ばれたことも影響しているようです。衆院選向け公約の中で、「右傾化」を特徴づける政策がいくつもあります。「教科書検定基準を抜本的に改善、近隣諸国条項も見直す」「集団的自衛権の行使可能に」、「国家安全保障会議の創設」「国防軍の保持を明記」「憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和」―。
経済の衰退と右傾化
右傾化する大きな理由のひとつに、日本が坂道のピークを越えて、下り坂を降りていることがあると思います。日本は戦後、政治・外交面で日米安保条約に守られ、国力を経済活動に集中できた時代が長く続きました。経済が右肩上がりで伸びていた時代は、経済力という「強さの源泉」がありました。
今、日本は衰退していく国と捉えられています。中国や韓国が、今までよりもはるかに強い調子で日本を攻撃するのも、経済力の相対関係が逆転しつつあることが背景にあると言われます。
経済雑誌の日経ビジネスは、かつては政治ネタはまず特集しませんでした。それが2012年11月12日号の特集記事は、『ニッポンの国境』です。この特集の結語となるページには、「『強い日本』がすべての解」と書かれています。経済が弱くなったとき、「政治、外交で強くならなければ」と経済誌までが主張する時代になりました。
男女別セグメンテーション
毎日新聞の11月19日の朝刊に掲載された世論調査は、男女別のセグメントデータが開示されています。民主党の支持率は11%で、男女ともに同じ数字です。ところが自民党は、平均は17%ですが、男性25%、女性10%と、男性の支持率が突出しています。右傾化する自民党を支持しているのは、強さを求める男性たち、という構図が見えてきます。
「チャンバラごっこ」は、勝ち負けを競う遊びです。その奥には、破壊するエネルギーがあります。政治や外交は、「チャンバラごっこ」を繰り返します。「Win-Lose」のゲームを本能的にしようとします。男の子の危険な遊びという面は否定できません。
「おままごと」は、守り育てる遊びです。その奥には、創造するエネルギーがあります。経済は、「おままごと」の要素がたくさんあります。経済が発展するためには、企業同士は競争しますが、全体のパイが伸びなければ、国全体は豊かになりません。
「男の子」はもっと「女の子」と一緒に遊ぼう
女の子のエネルギーは、「おままごと」だけでなく、ファッションに、ライフスタイルに、料理やアート、さらに自然に親しむ活動へと広がります。芸能のことで、女性に勝てる男性はどれだけいるでしょうか。「ソフトパワー」というりっぱな国富を、日本は戦後営々と育てきました。そのプロセスは、男性のエネルギーを経済活動に集中させたことで達成された面が大きいでしょう。
しかし、日本がこれだけ豊かになった本当の理由は、女性たちが豊かになった国の果実をどうエンジョイし、次の豊かさにつなげていくか身をもって示してきたからです。ファッションビジネスに携わってきた人なら、世界に冠たる今日の日本のファッションが、どうして生まれたのか、体感できると思います。女の子のエネルギーを家庭に縛り付けておいたつもりの男の子たちが、へたっていく間に、女の子たちは、どんどん「女子力」を発揮してきたのです。
「右」に極端に傾いたり、「左」に暴走したりする男の子のエネルギーに対して、女の子のエネルギーは、いつも真ん中のあたりでバランスさせながら、包み込み、育てます。国家が多くの難題に直面する今、勇ましい男の子の「チャンバラごっこ」の政治メッセージに対して、女の子の感性や直感を「ままごと」と一笑に付さない懐の深い政治環境が、本当に大事になっています。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「集団的自衛権、行使可能に」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「自民、選挙公約きょう発表」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「日銀総裁、安倍氏に反論」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「NTT光回線値下げ」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「対立あおる政治脱却を ~私の手で(下)」