2012.11.20 tue

新聞1面トップ 2012年11月20日【解説】日本ブランドを再生する政治

新聞1面トップ 2012年11月20日【解説】日本ブランドを再生する政治


【リグミの解説】

新装開店
ファッションや飲食などのブランドショップを展開している事業者は、定期的に店舗のリニューアル(改装)をします。内装や
設備等が傷むということもありますが、イメージを一新して、顧客を飽きさせない必要があるからです。政治も、ファッションに似たところがあります。

本日の新聞1面トップも3紙が衆院選挙関連の記事です。読売は、野田首相がTPP推進を公認条件にすることで、離党者がさらに増える可能性を指摘。朝日は、自民党の安倍総裁が日銀の金融政策に関する発言をは日々エスカレートさせ、株価が上昇していると報道。毎日は、日本維新の会に太陽の党が合流するシナリオは、1ヵ月前の橋下氏と石原氏の秘密会談で決まっていたとスクープ。

メディア戦略
ファッション・ビジネスは、ブランドイメージを確立し、維持発展させることが生命線となります。そのために、店舗を磨き、
魅力的な商品やサービスを提供し、そして、雑誌などのメディアにさまざまな形で登場することを画策します。お金があれば、「純広」と呼ばれるイメージ広告を出稿します。より顧客にアピールするのが「タイアップ広告」です。雑誌の編集部が取材した記事という体裁を取りますが、企業側がお金を出してページを買い取って作る広告記事です。

ブランドにとって一番効率が良いのは、雑誌社が取材し自主的に記事にしてくれるケースです。ブランドに力があれば、雑誌は勝手に取り上げてくれます。そのブランドのことを記事にすれば、読者が注目し、雑誌が売れるからです。同じことが政治についても言えます。発言力のある政治家や政党は、新聞や雑誌がどんどん取り上げてくれます。勢い、政治家はマスコミ受けの良い発言をし、注目されることを狙います。

自民党の変化
自民党が3年前に下野した途端、新聞は手のひらを返したように、自民党のことや所属議員の動静を伝えなくなりました。自民党
の議員たちは、野党の悲哀を初めて体験しました。自民党は、既成のメディアを相手にしても、与党民主党の露出度には勝てないとわかり、独自のメディア戦略を練りました。その様子が、日経ビジネス2012年9月24号の『国会議員「IT活用度」ランキング」に詳しく報じられています。

同誌によると、自民党は、15政党で唯一、「HP」「ブログ」「動画配信」「メルマガ」「ツイッター」「フェイスブック」「ネット献金」のすべてを活用。政党と政治家個人の連携度も高く、ソーシャルメディア上の双方向のコミュニケーションでも最上位の評価となりました。少なくても、メディア戦略では、自民党は変わりました。正確には、変わらざるを得まえんでした。

勇ましい発言
それが、民主党の敵失もあり、衆院選で与党に復帰できそうな勢いとなった今日、新聞や雑誌の自民党の取り上げ方は、既に与
党並みです。自民党というお店のリニューアルは成功したように見えます。しかし、メディアの消費者である有権者は、実は自民党のどこが変わり、どこが変わっていないのか、よくわかりません。ファッション・ビジネスであれば、顧客は感覚で反応します。「いい感じ」がすれば、成功です。しかし、政治は、「なぜいい感じ」なのかを語らなければなりません。

その「語り」の最たるものが、選挙戦における政党幹部や政治家個人の演説であり、メディア取材への回答です。自民党の安倍総裁の「輪転機をぐるぐる回して無制限にお札を刷る」という日銀をけん制する金融政策に関する発言は、とてもわかりやすいです。「無制限」という言葉使いが、何かしら幻想を抱かせます。積極果敢な経済政策を次々と打ち出し、日本を再生するというイメージ戦略には、ぴったりの表現ともいえます。

でも、有権者はちょっと冷静になる必要があります。日本維新の会の橋下氏や同党に合流した石原氏などは、「個人ブランド」の作り方を良く理解した政治家です。メディア受けする発言をし、脚光を浴びることで、政治的影響力の維持と拡大を図ります。そして選挙になると、すべての政党と、すべての政治家が、同じ路線を突っ走り始めます。合戦だ!と雄叫びを上げ、拳を突き上げます。安倍さんも、橋下さんや石原さん並みの「個人ブランド」づくりを決意したように見えますが、どうなのでしょか

政治とブランド
政治は、ブランド・ビジネスに似て、数年に一度、選挙という名のリニューアルを繰り返します。問題は、ブランド政治家の中
味です。安倍総裁は、自身が首相であったときと、何が変わったのでしょうか。どこが同じなのでしょうか。橋本氏と石原氏は、毎日新聞がスクープした秘密会談で本当は何を「握った」のでしょうか。橋下氏は、「脱原発」の看板を下げたことを批判されると、既成政党よりも維新の方がよほど政策が一致していると反駁しました。

今回の米国の大統領選では、相手陣営を攻撃するネガティブ・キャンペーンのテレビ広告が実に5割を超えたそうです。オバマ大統領が初当選した4年前は、1割弱にすぎませんでした。合戦であれば、相手を攻撃し足を引っ張れば、勝てます。しかし、上質なブランド・ビジネスは、そういうことは決してしません。自分のブランドイメージを傷つけるだけだからです。自分自身を磨き、高めることで、消費者にアピールし、選択してもらう。それが、ブランドの本来の姿です。

日本ブランドの再生
ブランド・ビジネスの本質は、芭蕉の「不易流行」にあります。その時代の気分や進取の文化を打ち出す「流行」がなければ、
退屈で飽きられます。しかし俳諧の本質である「不易」を忘れては、泡沫のように消えていくもの。永続するブランドは、「不易」と「流行」の絶妙のバランスを体得しています。

日本という国の「不易流行」を本当に理解し、体現できる政党と政治家は存在するでしょうか。ネガティブ・キャンペーンや向う受けのする勇ましい発言は、「衆愚」の政治の典型です。少々地味でも、本当の日本の「ソフトパワー」を理解し、引き出す政治が今本当に必要です。

政治は、有権者の賢明さの度量計です。「衆愚主義」(人気取りの政治、それに反応する大衆)から
「衆知主義」(みなで知恵を出し合い、政治・社会・経済を良くしていく態度)に移行できるか。日本のブランド力を試す選挙が来月実施されます。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「民主党離党11人に拡大」

  • 野田首相が衆院解散を明言した14日以降、民主党の離党表明者が計11人に上った。第3極への合流や、新党結成を目指す動きが相次ぐ。
  • 首相は、TPP推進を民主党の公認基準とし、選挙態勢を固めたい考えだ。「重たい立場だった人だろうが、きちっと守っていただくことが公認に基準だ」と語り、鳩山首相がTPP反対の姿勢を改めなければ、公認しない可能性も示唆する。TPP推進を公認基準とすることで、離党者がさらに発生する可能性もある。
  • 民主党では、山田正彦元農相、小沢鋭仁元環境相、坂口直人前衆院議員の3人が離党届を提出した。山田氏は、亀井静香元金融相と新党結成を目指す考えを表明。小沢氏と坂口氏は、日本維新の会から立候補する方向だ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「市場、連日の安倍相場」

  • 自民党の安倍総裁は、大胆な金融緩和を唱えており、安倍氏を「次の首相」とみている株式市場は、連日の高値に沸いている。日経平均株価の終値が2ヵ月ぶりに9100円台をつけ、3営業日で500円近くも値を上げた。
  • 安倍総裁の発言と実現への課題は、以下の通り。▽「日銀と政策協調し、2、3%のインフレ目標を設定する」⇒日銀は慎重、▽「輪転機をぐるぐる回して無制限にお札を刷る」⇒円の価値が下がり、通貨の信用が損なわれる恐れ、▽「建設国債は日銀にすべて買ってもらう」⇒財政法に抵触か、▽「日銀総裁にはインフレ目標に賛成してくれる人を選ぶ」⇒衆参両院の同意が必要、▽「日銀には雇用に対しても責任を負わせる」⇒日銀の改正が必要―。
  • 安倍氏の発言は日々エスカレートしている。野田首相と前原経済財政相はこれを批判、日銀擁護に回る。一方、日本維新の会とみんなの党の「共通公約」には、「日銀法改正と、政府・日銀の物価目標に関するアコード(協定)締結」が盛り込まれるなど、金融政策をめぐる与野党の舌戦も熱を帯びてきている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「1ヵ月前に役割『取引』 ~流動維新(1)」

  • 「橋下氏は国政に出馬せず、石原氏が代表に就く」。土壇場で決着したかのように見える役割分担は、実際には約1ヵ月前の極秘会談で決まっていた。
  • 橋下氏は苦境にあった。維新は国政政党化後、支持率が低下。地元の近畿以外で、橋下氏の「一枚看板」に限界が見え始めていた。しかし反転攻勢のために国政に出馬すれば、「市長を投げ出した」と地元の支持が揺らぐ危険があった。
  • 維新単独では、数人の議員を当選させるにとどまり、その次の選挙も見通せない。石原氏の合流で、石原氏が「ワンポイント先発」として出馬し、維新が一定の勢力を確保した上で、橋下氏がそれを基盤に「次」を狙う新たな戦力が固まった。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「リクルートがネット通販」

  • リクルートホールディングスが、インターネット通販に参入する。衣料や家電などの小売店が出店する仮想商店街の運営を、来年3月にも開始する。楽天などより高い購入額の3%の買い物ポイントを付与。出店者のシステム使用料は、楽天の半分の2.5%にし、アピールする。
  • 国内の主なネット通販運営会社は、以下の通り。▽楽天(総合小売)=約1兆1000億円、▽アマゾン(総合小売)=約5000億円、▽ヤフー(総合小売)=約3000億円、▽アスクル(オフィス用品)=約1300億円、▽スタートトゥディ(ファッション、ゾゾタウン運営)=約820億円―。
  • 国内のネット通販市場(コンテンツ配信などを含む)は、2011年に約8兆5000億円となり、5年で2倍弱に拡大した(経産省)。扱い商材が増え、スマートフォンの普及で顧客も増えている。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「福島、終わらぬ除染」

  • 除染を終えた福島県の山間の地域で、除染後しばらくすると放射線量が再び上昇するケースが出ている。風雨で運ばれた放射性物質が線量を上げているとみられる。
  • 除染後、線量の値が上がっているのは、いずれも地表付近で、腰あたりの値はぐんと落ちる。しかし生活圏に線量を放つ物質が残っていることが不安材料であることに変わりはない。
  • 東北大の石井慶造教授(放射線工学)は、「ある程度汚染されてしまった地域では、除染は一度では終わらない。息の長い取り組みが必要だ」と語る。住民からは、「何度除染すればいいのか」と悲鳴にも似た声が上がる。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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