2012.11.17 sat

新聞1面トップ 2012年11月17日【解説】「万歳」と喜べる政治

新聞1面トップ 2012年11月17日【解説】「万歳」と喜べる政治


【リグミの解説】

衆院解散・総選挙の論点
衆院解散が決定した瞬間、本会議場の議員たちは一斉に「万歳三唱」をしました。慣例に従って、ということなのかもしれませ
んが、一体何が「万歳」に値するのでしょうか。本日の新聞1面トップは、全紙「衆院解散、総選挙」の記事です。各紙の強調点は以下の通りです。

読売: 民主政権の3年問う
朝日: 政権交代の総括
毎日: 民主・自公・第3極の乱立
日経: 政権枠組み焦点に
東京: 衆院解散、課題積み残し


ここから3つのポイントが見えます。第1が「政権交代の検証」(読売、朝日)、第2が「2大政党制の今後」(毎日、日経)、第3が「決められる政治へ」(東京)です。

政権交代の検証
初めて国民が「政権を選択」した国政選挙が2009年のの衆院選でした。この3年間の民主党政権の棚卸をしっかりし、国民は何を
選択し、その結果どういうことが起きたのかを徹底検証すべきだと思います。ただ、そのときにもっぱら民主党のマニフェストの問題や政権運営の稚拙さを指摘するだけでは、本当の検証にはなりません。

必要なのは、民主党に先立つ自民党の長期政権との比較検証です。特に自民党政権末期の「安倍政権(2006年9月~2007年8月の11ヵ月)」、「福田政権(2007年9月~2008年8月の11ヵ月」、「麻生政権(2008年9月~2009年9月の12ヵ月)」と、民主党の3政権の比較検証が大事だと思います。

各政権の長さを比較しても、民主党も「鳩山政権(2009年9月~2010年6月の9ヵ月)」、「菅
政権(2010年6月~2011年9月の15ヵ月)」、野田政権(2011年9月~2012年12月の15ヵ月)」と近似しています。自民党の末期3年と、民主党のスタート3年は、日本の政治環境の基本課題として、一続きです。

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大政党制の今後
民主党は、自民党との「違い」を強調するために「リベラル色」を打ち出しましたが、紆余曲折を経て、自民党と差異の見出し
にくい「保守色」に染まりました。そうであれば、保守本流の自民党に戻した方がいいかというと、下野した自民党は、今度は民主党との「違い」を打ち出すために、「保守色」を一気に強めてきました。

この点で、野田首相の発言の「前に進めるのか、政権交代の前に時計の針を戻して、古い政治に戻るのかが問われる選挙だ」は、一面的な指摘でしょう。かつての自民党は、全体としては「保守」ですが「リベラル」とのバランスを取る「中道保守」を本流としていたと思います。それが機能しなくなったのが、末期の3政権だったのではないでしょうか。そこで「新生自民党」は、「保守色」の鮮明化=右傾化のリスクを恐れなくなりました。

「民主党がダメだから昔の自民党に戻す」は、既に不可能なのではないでしょうか。覆水盆に返らず。むしろ政権交代によって、怪我の功名のように生まれた「保守(右)―リベラル(左)」というややトラディショナルな「二項対立」の軸で、2大政党制の意味と意義を整理した方がいいのではないかと思います。そうすると、「第3極」が本当の「第3の選択肢」なのか、あるいは「保守ーリベラル」の代理戦争なのか、自ずと明らかになると思います。

決められる政治へ
東京新聞は、本日の1面トップ記事で、野田政権の「積み残し課題」を列挙しています(参照:記事要約)。このリストは、総選
挙後に解消するでしょうか。恐らく、新たなリストが積みあがっていくのではないかと思います。なぜでしょうか。逆説的ですが、民主(第1極)と自公(第2極)と「第3極」の「対立軸」がはっきりしないからです。

昨日の「リグミの解説」で、一貫した「主義」をもった2つの「大きな物語」を創ることが、2大政党制の責務だと主張しました。どちらの「大きな物語」がより多くの国民を納得させるか。その魅力度を競うのが選挙です。そして、選挙後は、2つの主義(「保守」と「リベラル」)が示す2つの「物語」を分裂状態にとどめず、国民全体で共有できる「ひとつの物語」にする政治主導が開始されるべきです。

かつて自民党が、自党内の「保守」と「リベラル」をバランスさせたことを、今度は2大政党(ないしは2大勢力)が、正々堂々とした討論と「対話」を通して現実の着地点を見出していく必要があります。「右」か「左」を主張するのは簡単です。有権者の受けもいいかもしれません。でも、一番大変で、一番価値のあることは、「三遊間に落球」させないことです。どの政党も、日本の全体に責任を負っています。

自民党の末期3年と民主党の始まりの3年を総括するのが、今度の選挙です。「決められない政治」から「決められる政治」
へ。そして、本当に意味で「万歳」と喜べる政治を政治家と有権者の「学習能力」が問われています。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「衆院解散、総選挙」

  • 衆院が16日、解散された。野田内閣は、臨時閣議で「12月4日公示―12月16日投開票」の衆院選日程を正式決定。3年4ヵ月ぶりに衆院選挙戦に突入する。
  • 野田首相が8月8日の自公との党首会談で「近いうち」の約束をしてから、ちょうど100日後の解散となった。首相は、「前に進めるのか、政権交代の前に時計の針を戻して、古い政治に戻るのかが問われる選挙だ」と訴え、「まず比較第1党になることが大事だ」と強調。
  • 自民党の安倍総裁は、「間違った政治主導による混乱と停滞に終止符を打つ戦いだ」と位置付ける。同党の石破幹事長は、衆院選の目標を「単独過半数」とする。公明党の山口代表も、「自公で安定した多数を確保する」と言明。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「政権交代、総括へ」

  • 衆院は16日、解散された。政府は臨時閣議で「12月4日公示―12月16日投開票」の衆院選日程を決定。民主党による政権交代の3年4ヵ月を総括する選挙戦が、事実上始まった。
  • 野田首相は、解散理由を「(消費増税法が)実現した暁には近いうちに国民に信を問うと申し上げた。その約束を果たすためだ」と説明。選挙戦で、①社会保障制度改革、②環太平洋経済連携協定(TPP)など関係国との経済連携推進、③脱原発依存、④冷静で現実的な外交・安全保障、⑤国会議員の定数削減や脱世襲政治などの政治改革―を訴えていく考えを明らかにした。
  • 自民党の安倍総裁は、「どの党が経済、外交敗北を立て直せるのか問う選挙だ」と訴えた。民主党が「比較第1党を目指す」としているのに対して、自公は両党で過半数確保を目標にする。一方、第3極は、民自公体制に代わる政権の受け皿作りを目指しており、日本維新の会などの議席獲得状況によって、選挙後の政権の枠組みに影響が出る可能性がある。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「衆院解散、総選挙」

  • 衆院は16日、解散された。政府は臨時閣議で「12月4日公示―12月16日投開票」の衆院選日程を決定した。野田首相は、「目標は比較第1党」とし、単独過半数を掲げなかった。自民、公明両党は、「自公で過半数」を目指す。
  • 衆院小選挙区の「1票の格差」を是正する「0増5減」関連法が16日に成立したが、区割り作業が間に合わないため、今回の衆院選は、最高裁が「違憲状態」と判断した格差を残したままの選挙となる。小選挙区制の導入で「2大政党」に向かっていたが、3年前の政権交代を経て、14政党が乱立する状況での解散となる。
  • 野田首相は、自民党の原発政策を「10年も立ち止まれば旧来の政策の惰性で行うしかない」と批判。外交・安全保障政策についても「極端に走れば排外主義につながり、日本が危うい」と訴えた。自民党の安倍総裁は、「日本を取り戻すための戦いだ。最大の争点は、どの党が停滞する経済を立て直し、被災地を復興でき、外交敗北を立て直すことができるかだ」と主張した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「衆院解散、総選挙へ」

  • 衆院は16日、解散された。政府は臨時閣議で「12月4日公示―12月16日投開票」の衆院選日程を正式決定。各党の選挙戦が事実上開始された。民主党は、政権運営の審判を受け、政権奪回を狙う自民党と対決する。日本維新の会など「第3極」の伸長によっては、選挙後の政権の枠組みづくりが焦点となる。
  • 野田首相は解散について、「『近いうちに』国民に信を問う」との約束を果たすためだ。国民の政治への信頼を回復できると判断した」と説明した。しかし民主党は、離党の意向表明をする議員が9人に上る。自民党、公明党などは、民主党政権で経済状況や外交関係が悪化したと批判を強めている。民自の2大政党に対抗する「第3極」の結集の動きも活発化している。
  • 選挙の争点は、経済再生・成長戦略、▽エネルギー政策、▽外交・安全保障政策―など。民主党は、マニフェストの詰めを急ぐ。自民党は、デフレ脱却や成長戦略の骨子を決めた。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「お任せ政治、脱却の時」

  • 衆院は16日、解散した。政府は臨時閣議で「12月4日公示―12月16日投開票」の衆院選日程を決定。消費税率を引き上げる前に国会議員が身を切る改革や、国民生活に直結する経済対策など、多くの課題を積み残したまま、事実上の選挙戦に突入する。
  • 小選挙区300、比例代表180、計480の議席を目指して1100人を超える候補者が出馬予定だ。衆院の「1票の格差」是正のため、「0増5減」の法律は成立したが、新たな区割りは間に合わず、最高裁が「違憲状態」と判断した現行選挙区で選挙が行われる。身を切る改革のひとつだった衆院議員定数の削減も、民自公が次期通常国会に先送りしたが、合意が守られる保証はない。
  • 衆院解散で積み残しとなった主な課題は、以下の通り。▽エネルギー基本政策、▽2012年度補正予算を伴う大型経済対策、▽復興予算の不適切使用問題、▽原子力損害賠償法の改正、▽衆院小選挙区の「1票の格差」是正、▽衆院の定数削減、▽国会同意人事(原子力規制委員会の委員長、委員など)、▽マイナンバー関連法案、▽公務員制度改革関連法案―。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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