【リグミの解説】
国政政党の数
日本は、集団主義の国とも言われてきましたが、その実態は、小さな集団をたくさん作ることに特徴があるのでしょうか。本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日の3紙が「衆院きょう解散」です。東京新聞は、同じテーマで、国政政党が15に上ることを指摘しています。
小選挙区比例代表並立制による衆院選挙が始まった1996年から16年経って、政党数が最も多くなっているのは、制度の趣旨を考えると不思議な感じがします。大政党に有利で、少数意見が反映されにくい選挙制度をあえて採用した理由は、日本に2大政党制を定着させるためでした。
2009年の衆院選で、長期政権の自民党から民主党に政権交代したことは、日本の民主主義にとって画期的なことでした。国民の意志がはじめて明瞭な形で示されたからです。それは、「民主党が良い」ではなく、「自民党がダメ」という判断でした。まずは2大政党の勢力を作り、それがどう機能するかやってみよう、という意志表明であったとも言えます。
民主党の最大の問題点
この3年間の民主党政権に対する評価には厳しいものがあります。しかしそれをもって、2大政党制は日本では機能しない、と結論づけられるものではありません。マニフェスト(政権公約)に現実性がなかったこと、あるいはマニフェストにない消費増税を強行したこと、そして大震災や原発事故の対応に問題があっとこと、さらに日米、日韓、日中という基軸となる外交関係で次々と懸案を浮上させてしまったこと、等々。民主党政権の問題点は、実にたくさんありました。
しかし、民主党の最大の問題は、そうした個別の事象の奥にあると思います。それは、「選挙に勝つ」ことだけを共通目標とした「寄り合い所帯」だったということです。かつての自民党の田中派から旧社会党系まで、いわゆる「右」から「左」まで、思想も主義も異なる政治家が、政策の一致を見ないまま民主党という政党を形成していきました。そんな政党は、「選挙で負けそうだ」となると、離党者が相次ぎ、分裂していきます。
野合を繰り返さない
日本の民主主義が今一番学習しなければいけないことは、「野合」では日本を変えられないということです。それにもかかわらず、「第3極」と称する動きがあり、2大政党制を早くも崩そうとしています。ダメだから変える、では何も変わりません。
その方法論を選択した理由、理念、目的を再確認し、徹底検証し、再挑戦するのが、大きな未来を構築する戦略的なアプローチの常道です。それをせず、政策の基本で一致しそうもない新党同士が、「選挙で勝つ」という一点のみで連携して「第3極」を形成しても、日本の政治の漂流は止まるどころか、ひどくなるだけだと懸念します。
今、政治家と政党に必要なものは、「主義」です。個々の「政策」に違いがあっても、「主義」が一致すれば、政策のすりあわせはしていけます。では、「主義」は何によって具体化するのか。それは「物語」です。日本をどんな国にしたいか、という「物語」。それが「大きな物語」と呼べる包括的なものであれば、個々の政策は自ずとその中にポジションを見つけていくことができます。
2つの「大きな物語」
政治・社会・経済の「大きな物語」を語れる政治家が、大きな政党を率いることができれば、2大政党制は機能するようになります。なぜなら、国民はどちらの「物語」の登場人物になりたいか、具体的にイメージし、選択できるからです。それは国の将来に希望を抱き、自ら当事者として、国づくりにコミットしようと意欲を持てる「物語」であることが大切です。
そういう意味で、国論を二分してきた原発を、最大の争点にし、「主義」を明確にし、そこから日本をどういう国にしていくか、民主党と自民党は「大きな物語」を創ることを提唱したいと思います。それを政策的に具体化したものがマニフェストとなります。
日本の政治が、小集団の集積になるのは、一貫した「主義」をもった「大きな物語」を創れないからです。15の「小さな物語」ではなく、骨太な構想を実現する2つの「大きな物語」が魅力を競い合うのが2大政党制です。国民を納得させるストーリーテリングのできる政治家と政党は、登場するでしょうか。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「衆院きょう解散」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「衆院きょう解散」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「衆院きょう解散」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「中国、改革足踏み懸念」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「異例の多党選挙」