【リグミの解説】
一国一城の主
「宮仕えを続けるか、一国一城の主になるか」。勤め人で行くか、独立開業するかは、働く人の2大選択肢として常にあります。「一国一城の主」派には、ベンチャー事業を立ち上げ、大きく成功させるという夢を持つ人も少なくないと思います。しかしベンチャーは、有望なアイデア、資金手当、チームづくり、協力先の開拓など、関門がたくさんあり、いささか狭き門でもあります。より現実的な道として、フランチャイズの店を始めるという選択肢があります。
そのフランチャイズの雄であるコンビニの経営者が、地域との関係づくりで苦労しています。東京新聞の本日の1面トップ記事は、コンビニ経営者の苦悩を追っています。きっかけは、同紙に掲載された投書でした。東京都大田区の神社の例大祭のおり、地元の町会副会長が奉納金を集めた際、大手コンビニが200円しか出さなかったことが発端でした。「地域の人たちをお客さんにしているコンビニ店が200円とは理不尽ではありませんか。個人商店のやっかみでしょうか」と批判。この投書に反響が相次ぎました。
コンビニのフランチャイジーになるメリット
東京都内でもシャッターの降りたままの商店が目立ち始めている昨今、経営の苦しい商店も少なくありません。そんな中で、祭となれば地元商店街が音頭取りをし、街の活性化に取り組みます。奉納金の相場は、3千~5千円ぐらい。中には、売り上げの維持も苦しい中、毎年1万円を払う商店主も見かけることがあります。「おつきあい」ということもあるでしょうが、「商売繁盛」を願う気持ちも込められているのだと思います。
東京新聞の記事を読むと、コンビニの本部ロイヤルティーは、粗利益額の3~7割を支払わなければならないそうです。国内のコンビニは、4万6千店を超え、今も成長を続けています。高額のロイヤルティーを支払ってでも、コンビニのフランチャイジーになるメリットが大きいから、これだけたくさんのコンビニが存在していることがわかります。
「一国一城の主」を目指す者にとって、大手コンビのブランド力(信頼感、集客力)、商品調達と開発力、経営指導は、喉から手が出るほど欲しいものばかりです。たくさんのロイヤルティーを支払っても、それ以上の坪当たり売上高を達成すれば、儲けることができます。大手コンビの中でも、たとえばセブンイレブンは、2割ぐらい坪当たり売上高が高いようで、№1になるのには、ちゃんと理由があります。
コンビニ本部のメリット
問題は、コンビニのフランチャイズがモデル設定する売上高を達成できなかったときです。一定のアルバイト数がいないと、店は回せないので、しわ寄せはオーナー夫婦に来ます。24時間体制で店に入り、しかも自分の給料をきりつめる。コンビニ本部の目に触れないところで、労働条件の悪化が日常化してしまいます。「宮仕えの方がよかったな」、と経営者が弱音を吐きたくなる状況がずっと続き、構造化してしまう問題もあるのではないでしょうか。
一方、コンビニ本部側のメリットとデメリットはどうでしょうか。フランチャイズシステムは「ヒト、カネ」の経営資源を節約でき、高効率であり、システムを確立すれば、早期に全国展開できます。日本のコンビニは、本部(フランチャイザー)とコンビニ経営者(フランチャイジー)の切り分けによって、大きな成功を収めた純国産のビジネス・モデルです。
フランチャイズ方式か直営出店か
コンビニの成功にもかかわらず、直営方式にこだわる小売・飲食チェーンもあります。直営方式は、高コストになりますが、出店戦略の自由度が高いこと、店舗スタッフの教育などに一元的に取り組めるメリットがあります。フランチャイズ方式と直営方式は、経営の合理的な判断のみならず、企業文化の違いも生みます。たとえば、スターバックスコーヒーが直営方式にこだわるのは、「カネ」がよりかかっても、「ヒト」という経営資源にコミットすることが、ブランドにとって一番大切だと知っているからです。
コンビニを初めとする全国展開チェーンがかならず取る基本戦略は、地域ドミナント出店があります。1店の商圏を細かく設定し、あるエリアをできるだけ自店で独占しようとします。その結果、ブランド力と流通システムや経営指導体制で、優位に立てます。「一国一城の主」は、いわばこの本部の冷厳な戦略を担う先兵のように位置づけられています。実態は、「コンビニ王国の一傭兵」なのかもしれません。
コンビニの社会貢献
コンビニは、世界に輸出できる優れたビジネス・システムです。でもまだ完璧ではありません。コンビニ経営者にしわ寄せがいくうちは、日本が世界に誇る「ソフトパワー」と公言することはできません。コンビニ経営は、スピードの競争をしています。他社より速く出店する。他社より速く新商品を開発し導入する。他社より速く商品を回転させ売上を稼ぐ。
しかしコンビニはもうひとつの競争をしています。時間をじっくりかけて、地域社会のインフラとなることです。災害や犯罪に強い街となる上で、コンビニの果たすべき役割はますます大きくなりつつあります。かつて街の中心にあった酒屋や米屋や雑貨店がコンビニ変わって何十年。街の様相は一変しました。しかし、街のすべての店をコンビニにすることはできません。それは望ましくもありません。コンビニのビジネス・モデルは、社会との共生、「Win-Win」のモデルへと進化すべき時期に来ています。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「解散へ民自公前進」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「年内解散、流れ加速」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「民自公、修正に大筋合意」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「首相、年内解散を決意」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「コンビニ、地域密着に壁」