【リグミの解説】
国会の役割
国会の役割って何なんでしょうか。国会の一番重要な仕事は、言うまでもなく「法律の制定」です。立法権こそ国会の最大の権限であり、ミッションです。その他に、国家予算の議決、内閣総理大臣の指名、条約の承認、弾劾裁判所の設置、憲法改正の発議といった重要な役割が続きます(参照「あすなろ学習塾」)。しかし国会は、「一番重要な法律の制定」を怠ったまま、解散の時期を探っています。
本日の読売、朝日、毎日の3紙の1面トップ記事は、「衆院解散時期を巡る政局」の記事です。「1票の格差」是正と、TPPへの参加表明をテコに、年内解散の可能性が高まったことを受け、各紙とも記事に力が入っています。解説のタイトルを比較します。
読売: 「TPP争点化、民主に激震 輿石氏『そんな解散ない』 岡田・前原氏、流れ後押し」
朝日: 「TPP、民主に動揺 首相、解散の大義に 日米関係強化狙う」
毎日: 「TPP参加表明検討、閣内統一が第1関門 農業、自動車 難交渉は必至」
日経: 「解散・TPP、民主大揺れ 首相 改革姿勢アピール 反対派 『野田降ろし』探る」
東京: 「年内解散なら『違憲』」
憲法違反
5紙の中で、唯一見識を示したのが東京新聞だと思います。「1票の格差」是正のための選挙制度改革法案を可決しても、「首相が年内解散に踏み切れば、最高裁判決を無視して、違憲状態のまま衆院選が行われることになる」と指摘しています。法案成立後、有識者で作る衆院選挙区審議会が新たな区割りを政府に勧告し、それを反映した公選法改正案を成立させる必要があるからです。有権者への周知期間も含めると、このプロセス全体は、3~4ヵ月かかるそうです。
国会が、「法律の制定」という一番重要な仕事を政争の具にし、解散時期でせめぎ合う。挙句の果てに衆院解散・総選挙をしてみたら、実はそれは憲法違反の選挙だった、ということになる。そういう問題を、どうして大手全国紙は指摘しないのでしょうか。国会議員は、立法という自分の一番大事な仕事を疎かにし、選挙のことばかり考え、最高裁の判決も重視しないというのは、どう考えても変です。
ジャーナリズムの役割
ジャーナリズムの原義の「ジャーナル(Journal)」は、毎日のことを記録する日誌・日記という意味です。毎日起きることは、大きな歴史の一コマです。人生の毎日が、その人物の貴重でかけがえのない瞬間の積み重ねであるように、政治・経済・社会で起きていることも、日本と世界の大潮流を象徴する現象です。毎日起きることは、「虫の目」で細かく見ていく必要があります。しかし同時に、泡沫のように浮かんでは消える現象にとらわれず、対局を見据える「鳥の目」がなければ、何も見えないに等しいもの。
「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える」という諺は、マスコミにも当てはめる必要がありそうです。「新聞屋は次の選挙を煽る記事を書き、ジャーナリストは現代史のファーストドラフトを書く」。日々繰り返される「小さな物語」の集積が、どんな「大きな物語」を創り上げているのか。「日誌」の奥に隠された真実を垣間見たいものです。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「選挙改正法案、14日提出」
- 民主党は、選挙制度改革法案を14日に国会提出する方針を固めた。同法案は、衆院選の「1票の格差」是正のため、小選挙区の「0増5減」を盛り込んだもの。国会提出後に、自民、公明の両党と法案の修正協議を行いたい意向だ。同党は、衆院解散に向けた環境整備を加速させている。
- 「1票の格差」是正が可能かどうかは、民自公の3党の修正協議の進み方次第だ。民主党は、比例定数の40削減を盛り込む意向だが、「0増5減」を先行実施したい自公に配慮して、定数削減部分を切り分けて提出する案も浮上している。民主党の安住幹事長代行は、「注意深く野党と話合いながら、出口(結論)を探りたい」と語り、同法案の早期成立に意欲を示す。
- 一方、政府は9日、北朝鮮との外務省局長級の政府間協議を15、16日にモンゴルのウランバートルで行うと発表した。野田首相が狙う年内衆院解散に向け、外交で政権浮揚を図る狙いもあると見られる。また、首相が環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加表明に意欲を示していることには、民主党内の慎重派に反発が広がっており、分裂含みの情勢となっている。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「民主、解散巡り攻防」
- 野田首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加する意向を固めた。自民党が慎重なTPPに意欲を示すことで、自公の意向とは別に、解散の主導権を握る意図もある。民主党内では、複数の閣僚がTPP交渉参加を支持する一方、慎重派が離党を探る動きも出始めている。
- 岡田副総理、枝野経産相、前原国家戦略相は、早期のTPPの交渉参加表明を主張し、衆院選での争点化を求めている。9日に都内で開催された日米財界人会議では、TPP交渉参加を強く支持することを盛り込んだ共同声明を採択した。
- しかし、首相がTPP交渉参加を表明すれば、民主党内の慎重派を刺激することになる。その急先鋒である山田正彦・元農水相ら「TPPを慎重に考える会」のメンバー約10人が会合を開催。15日に超党派議員による国民集会を開き、首相の参加表明に反対することで一致した。民主党は、一気に分裂含みの様相となった。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「『年内解散』風強まる」
- 野田首相が「近いうち」の衆院解散の約束履行に本腰を入れ始めたことで、「年内解散」風がにわかに強まってきた。首相は、自民党からの「ウソつき」批判をかなり気にしている。首相周辺は、「年内解散は1つの選択肢」と語っている。しかし政権浮揚を図れないまま解散・総選挙をすれば、民主党の惨敗は免れない。
- そこで首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加表明を衆院選の争点に掲げたい考えだ。前原国家戦略相、岡田副総理など首相に近い閣僚からも、前向きな発言が相次いでいる。1人の閣僚は、「追い込まれた解散ではなく、少しでも打って出る姿勢を示すにはTPP交渉への参加決定しかない」と語る。
- だが、輿石幹事長はTPPの争点化を明確に否定している。同氏はまた、「今解散したら50~60人しか残らないだろう」とも語ったという。首相が交渉参加を表明すれば、民主党内のTPP反対派が集団離党する可能性もある。首相は、党分裂覚悟で捨て身の年内解散に踏み切れるのか、注目される。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「今期6%増益に減速」
- 上場企業の収益減速が一段と強まり、2013年3月期の予想経常利益は、前期比6%増にとどまる見通しだ。期初想定では、2割増が見込まれていた。業績下方修正が続き、3兆円強の下振れとなるが、その8割を製造業が占める。
- 2013年3月期の経常利益予想を下方修正した主な企業:◇パナソニック=5250億円下方修正、修正予想▲3650億円、◇三菱商事=2100億円下方修正、修正予想2800億円、◇シャープ=1900億円下方修正、修正予想▲2100億円、◇日産自動車=1350億円下方修正、修正予想5450億円、◇ホンダ=950億円下方修正、修正予想5400億円、◇NTT=950億円下方修正、修正予想1兆1700億円、◇コスモ石油=690億円下方修正、修正予想250億円、◇コマツ=560億円下方修正、修正予想2520億円―。
- 電気や自動車、化学など日本を代表する産業の苦戦が足を引っ張る構図が鮮明化した。ただ、伸び率が鈍化するとはいえ、経常増益は確保する。東日本大震災やタイ洪水の影響が減ること、内需が底堅いこと、さらに東南アジアなどの成長をうまくとらえた企業が堅調なことが要因だ。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「ストーカー規制、後手」
- 神奈川県逗子市のストーカー事件で、千通を超える脅迫めいたメールがあった。しかしストーカー規制法ができた2000年当時、メールが普及途上であったため、電話やファックスと違い、連続メールに対する規制はない。神奈川県警は、メールの文言が丁寧で脅迫的でないとして、取り締まらなかった。
- 規正法には2005年をめどに見直す付則があり、メールが急速に普及する背景もあったが、その後一度も改正されていない。警視庁によると、今春の都道府県県警の担当者会議では、「連続メールは規制できないのか」との問い合わせが相次いだ。警視庁内には、「議員立法のため、国会で機運が高まらないと改正は難しい」との声もある。
- 刑事訴訟法では、逮捕状を示して要旨を告げるように定めている。そのため、被害者の住所や結婚後の名字を読み上げた。このため被害を防げなかった。逗子署の山口副所長は、「旧姓を知らせるなど、取り得る手段はあったかもしれない」と話す。ストーカー規制法が成立して12年経つが、実効性はいまだに問題がある。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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