2012.11.05 mon

新聞1面トップ 2012年11月5日【解説】これからのマスコミ

新聞1面トップ 2012年11月5日【解説】これからのマスコミ


【リグミの解説】

人気のバロメーター
人気商売には、人気のバロメーターがあります。タレント、俳優、ミュージシャンにとってのバロメーターは、視聴率やチケッ
トの売れ行き、ファンの数、そして雑誌やテレビでの露出度などがあります。政治家には、支持者の数、マスコミに取り上げられる話題性や論調、それに世論調査が加わり、最後は選挙で舞台立てるかどうかが決まります。

ミュージカル『コーラスライン
』では、ミュージカルの舞台に上がりたい無名の若者たちが必死に踊り、自己アピールしますが、プロデューサーの冷厳な一言で、「アウト」と「イン」が決まるシーンが印象的でした。今日、政治家の「アウト・イン」を判じているのは、マスコミでしょうか。

世論調査というツール

今日の読売新聞の1面トップ記事は、毎月のように繰り返される世論調査です。野田政権の支持率が19%に急落し、政権末期になったと示唆しています。確かに不支持率が68%と合わせて考えると、調査の回答者の傾向性は明らかです。ただ、「今回の支持率急落は衆院解散・総選挙の時期など、今後の政局の影響を与えそうだ」とする読売の書き方は、ちょっと操作的な感じがします

新聞が世論調査というツールを利用して、舞台から見えない場所で「神の声」を響かせる『コーラスライン』のプロデューサーのように、「アウト」を宣告したり、未来を予言するのは、基本的に間違っていると思います。調査はあくまでもひとつの「状況証拠」にすぎません。マーケティング調査で顧客に「何が欲しいか」聞いても、iPhoneのような革新的な製品は生まれないように、世論調査もまた、有権者が本当に求めているものを掘り起こすようにはできていません。

嗜好や気分でなく
人気商売は、「嗜好」(好き嫌い)を対象にしています。それは、大衆の「気分」を反映するものです。でも政治は本来、好き嫌い
の対象ではないはず。いい気分にさせてくれる政治家が、良い政治をしてくれるわけでもありません。「嗜好」や「気分」によって絶えず姿形を変える「世論」を調査する新聞は、その結果で国民や政治家を「煽る」ことが目的なのではないか。そうすれば、新聞を読む人が増え、新聞の人気が高まる。なおかつ新聞の「意見」を頼りにする人たちが増える。こんな計算が働いているのかもしれません。

新聞をはじめとする今のマスコミに決定的な問題は、『コーラスライン』のプロデューサーの立場を手放そうとしないことです。大衆のために、権力をチェックすることがマスコミの役割のはずなのに、いつの間にか自分自身の権力と権威を維持することに汲々とするようになる。政局を煽る内容の世論調査を繰り返す新聞を見ていると、大衆は「嗜好」と「気分」しかない操作しやすい集団だ、という20世紀的なマスコミュニケーション論に、未だにとらわれているように思えてきます。

主義や議論を
「嗜好」(好き嫌い)でなく、「主義」(「すべき」と「すべきでない」)を追求する。「気分」(気持ちいい、気持ちわるい
)に左右されるのでなく、「議論」を積み重ねること。それが今、新聞をはじめとするマスコミに求められていることだと思います。

人気のバロメーターをいくら駆使したところで、それは瞬間風速の姿に
すぎません。国民は本当は何を求めているのか、どこに向かいたいと思っているのか。調査された有権者自身もわかっていないが、心の奥底にもやもやと持つ「思い」を引き出し、それを嗜好や気分の縛りから解放し、在るべき姿に具象化していく「熟議」が、今本当に必要になっています。

その第一歩は、国民を「調査対象」ではなく、「政治の当事者」として扱うことです。新聞が最も苦手とする「双方向のコミュニケーション」に取り組めば、今までの世論調査では不可能な議論の積み重ねを読者とすることになります。それは大変なことですが、この協働作業によって得られる果実はとても大きいものがあります。なぜなら、「熟議」ができる国は、民主主義を成熟させ、国民一人ひとりが「当事者」として国のあり方にコミットしていくからです。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「内閣支持、最低19%」

  • 野田内閣の支持率は、昨年9月の発足以来最低の19%となった。2~4日に実施した読売新聞の世論調査による。第3次改造内閣発足直後の前回調査(10月1~2日)では34%に回復したが、今回は15ポイントも下落した。不支持率は68%(前回56%)。
  • 政党支持率と次期衆院選比例選の投票先は、以下の通り。政党支持率:▽民主党=11%、▽自民党=24%、▽日本維新の会=3%、▽石原新党=1%―。次期衆院選比例選の投票先:▽民主党=10%、▽自民党=25%、▽日本維新の会=12%、▽石原新党=9%―。
  • 次期衆院選の投票先は、自民党がトップの25%だが、前回の36%から11ポイント落した。民主党は、10%で前回の18%から8ポイント下落。一方、第3極の中核と見られる日本維新の会の12%(前回13%)、石原新党の9%、みんなの党の3%を加えると24%となり、自民党とほぼ拮抗する勢力となる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「除染手当、作業員に渡らず」

  • 政府主導による東京電力福島第1原発周辺の除染作業で、「特殊勤務手当」が作業員本人に支給されない事例が相次いでいることが判明した。同手当は、通常の給料とは別に、現場の線量や原発からの距離に応じて1日3300円~1万円が、税金から支払われる。
  • 環境省は既に18件(計35億円)を発注し、数千人が働いているが、元請けのゼネコンの下に下請けがいくつも連なる構造の中で、手当が「中抜き」されていると見られる。朝日新聞の取材で、複数の下請け会社幹部が「作業員に渡していない」と答えた。作業員も「受け取っていない」と証言。
  • 環境省は、「手当は被曝の危険性と精神的労苦に対するもので、作業員に支給されていないとすれば大変な問題だ。しっかり調べて再発防止策を取る」(水・大気環境局の小林局長)と話し、実態調査に乗り出す。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「大飯地層、判断割れ」

  • 関西電力大飯原発の敷地内を通る断層「F-6破砕帯」について、現地調査した原子力規制員会の調査団は、「活断層」と「地滑り」で意見が分かれた。4日の会合では結論が出ず、7日に再び会合を開き、関電の意見を聞いた上で議論する。
  • 新たに見つかった地層のずれが、活断層とみなされる12万~13万年前以降に動いた可能性が高いことについては、意見が一致した。しかし、動いた原因が地震に伴う活動か、地滑りかで5人の委員の見解が真っ二つに割れた。
  • 問題のずれについて、関電は10月31日の中間報告で「地滑り」と主張している。大飯原発は、全国で現在唯一稼働している原発だが、「活断層」と判明した場合、規制委は関電に運転停止を求める方針だ。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「『宅急便』当日配送に」

  • ヤマトホールディングスは、2016年までに東京、名古屋、大阪の3大都市間で「宅急便」の当日配送を始める。約600億円を投じ、大型物流拠点を新設し、最新鋭の自動仕分け機を導入して集荷・配送時間を大幅に短縮する。
  • 現在は、全国に約70あるハブ拠点間で貨物のやり取りをしているが、新サービスに向けた第1段階として、神奈川県に「ゲートウェー」と呼ぶ国内最大級の物流拠点を開設する。2016年までに、愛知県と大阪府にも「ゲートウェー」を建設する。来夏には、まず東京―大阪間で当日配送の試験運用を始める。
  • 割安な価格で当日配送が可能になると、急成長する「ネット通販」や生鮮食品輸送が一段と活発になり、市場を広げると見られる。新たな付加価値によりビジネス機会の創出にもなり、消費者の利便性も高まりそうだ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「万里の長城、2邦人死亡」

  • 中国河北省張家口市懐来県にある万里の長城で3日夜、日本人女性2人が死亡し、日本人男性1人が行方不明になった。日本人女性1人は無事だった。死亡したのは「渡辺邦子」さん(68)と「小川」さん(62)。行方不明は「柳井尽一郎」さん(78)。
  • 日本人4人とガイドの中国人1人の計5人で山歩きをしていて、暴風や雪のために動けなくなった。下山したガイドから警察に通報があった。
  • 現場は、多くの観光客が訪れる北京の八達嶺の万里の長城とは別の場所で、一般客はあまり訪れないという。当日は大雪が降り、現場は標高が高く吹雪だった可能性もある。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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