2012.10.30 tue

新聞1面トップ 2012年10月30日【解説】自動運転バスに乗りますか?

新聞1面トップ 2012年10月30日【解説】自動運転バスに乗りますか?


【リグミの解説】

クルマの自動運転
「運転がすべて自動化されたバスに乗りたいと思いますか?


この質問は、「人間を信頼するか、機械を信頼するか」の二項対立の質問で、ちょっと適切ではないかもしれません。完全自動化の手前で進んでいること。それは、ドライバーが運転ミスを犯しにくいクルマを設計し、万一ミスを犯したときは機械が人間のミスをフォローアップしていく。それが今、進んでいる技術革新の方向です。

本日の読売新聞の1面トップは、「バス自動ブレーキ義務
化」の記事です。

事故原因と対策
最近のクルマの安全技術は、長足の進歩を遂げています。クルマの事故が起きると、日本ではほとんどのケースでドライバーの
過失に焦点が当てられます。しかし、自動車という複雑な構造をもった機械を操作した結果起きた事故で、運転者の責任だけ見ていては、絶対にわからないことがあります。

自動車ジャーナリストの清水和夫さんが、自動車月刊誌『カーグラフィック』に連載している「WARNING LAMP」で、関越道バス事故を取り上げました(2012年7月号)。居眠りをした運転手の問題以外に、「道路構造の欠陥」、「シートベルト装着率の低さ」を指摘。今後の対策として、「居眠り防止ステム」や「ドライブレコーダーの装着」を提案しています(参考:「『バス事故』『原発事故』『ダルビッシュ敗戦』にみる責任の取り方」)。

清水さんは、同じ連載の11月号では、自家用車のペダル配置の問題を指摘しています。FF(前輪駆動)の右ハンドル車では、右前輪のホイールハウスが運転席にせり出し、結果としてアクセルもブレーキも「左寄り」に設置されるケースが多くなります。これが、パニックブレーキの時に踏み間違いの原因にもなり得ます。

クルマの設計段階から、ドライバーにとって自然なペダル
配置を目指すのが本来のあるべき姿です。清水さんは、「人が運転を間違えるなら、クルマ側も問題があるのではないだろうか。人が間違えやすいなら、間違えにくいクルマを開発する努力を怠ってはいけない」と言います(『カーグラフィック』2012年2月号P196)。

自動車メーカーの対応
自動車が今日のレベルまで安全性を向上させてきた大きな要因のひとつに、ドイツのメーカーの取り組みがあります。速度無制
限のアウトバーンでは、事故が起きれば大変なことになります。速度を制限すれば、重大事故は減らせますが、ドイツは全面的な制限はしないで来ています。自動車メーカーも競って高速走行に優れたクルマを開発してきました。

同時に重大事故が発生すると、メーカーは事故現場に行って事故原因とクルマの構造上の問題を自ら確認し、対策を講じてきました。事故の原因は、ドライバーにあったとしても、その事故の被害を小さくすることは可能です。さらに、事故そのものを減らしていく取り組みは、交通システム全体を統合的に捉えることで、より促進していけます。

大手自動車メーカは、クルマ社会の遠い将来の姿として「運転の自動化」を目指しています。各社が開発を進めている自動ブレーキも、その流れの中の技術革新のひとつです。

原因責任と結果責任
ドライバーの過失や、バス運行会社の運営体制を責めるのは、一見、事故の「原因責任」を追及しているように見えます。しか
し事故の全体を見ていない一点絞りの原因追求は、事故を起こした当事者(関係者)を処罰して終わりとする「結果責任」型になる危険性を秘めています。

原発事故の原因追求も同じ構造的問題を秘めています。国会の事故調査委員会は、大津波の可能性が指摘されながら、福島第1原発の津波対策を怠った東京電力と当時の原子力保安院の怠慢を指摘し、福島第1原発事故は「人災」であったと断定しました。その指摘は重く受け止めなければなりません。同時に、「人災」という言葉が、一人歩きする危険もあります。

新しく設置された原子力規制委員会は、原発の安全性の新基準づくりを進めています。それに対して、新潟県の泉田知事は、安全委を訪問し、安全基準の策定より東京電力福島第1原発事故の原因究明を急ぐべきだ、という考えを表明しました。「福島事故の原因が明らかになっていないのに、安全基準作りが進んでいる。不信感がある」と泉田知事は語りました(東京新聞2面)。

福島と同程度の事故想定で安全基準を作って良いのか。もっと甚大な被害になる可能性を想定すべきではないのか。「最悪」を想定したくないというメンタリティーも、「結果責任」で済まそうとする背景にあると思います。脱原発を決意したドイツのシュレーダー前首相は、「原発はミスに寛容でない」と語っています。確率が低くても、一旦事故が発生すれば、被害の大きさは目を覆うものがあります。そして人間は、ミスを犯すものです(参照「リグミの解説」2012年10月23日)。

英知を結集する
今日の新聞1面は、東京新聞のトップ記事をはじめ、新しい安全委が出した「放射線量予測マップ」に間違いがあったことを各紙
が報道しています。方位の情報を正しくシミュレーションソフトに入力していなかったのが原因のようです。安全委が、安全の前提となる「ミス対応」に甘い姿勢であったことを露呈してしまったのは、大変残念なことです。

高速運行をする大型バスに「自動ブレーキ」を義務化するという国土交通省の対応は、「人間はミスを犯す」という前提で、甚大な事故を軽減しようとする動きとして、評価できます。原発の安全基準については、何をどう組み立てていけばいいのでしょうか。はるかに複雑なシステムであり、事故の影響も比較にならない原発では、文字通り「人類の英知を結集した対策」が求められています。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「バス自動ブレーキ義務化」

  • 国土交通省は、大型バスに「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」の装着を義務化する見通しだ。有識者検討会の了承を得た後、年内にも正式に決定する。大型トラックは既に義務化が決まっている。
  • 「自動ブレーキ」は、レーダーなどを使って前方を走る車などの障害物との距離を測定し、衝突する危険がある場合は自動的にブレーキをかける装置。大型トラックの場合、自動ブレーキで衝突速度が20キロ下がれば、追突される側の死亡者数を90%削減できるとの試算もある。
  • 大型バスは、高速走行中に自動ブレーキで急制動がかかると、乗客が怪我をする恐れがあるため、国土交通省では義務化を見送っていた。今年7月、乗客が急制動時に前方の椅子に衝突しても怪我をしない構造が義務付けらたことで、自動ブレーキの義務化に踏み切った。新車のバスを対象に、数年以内にも規制が始まる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】  「激突国会、異例の幕開け」

  • 野田首相は、29日に召集された臨時国会の所信表明演説を、衆院本会議で行った。野党多数の参院は、先の国会で首相問責決議を可決しており、野田首相の演説を拒否したため、片側の院だけで演説する初めての事態となった。
  • 野田首相の演説は、「1票の格差」を是正する選挙制度改革について、今国会中に結論を出すことに強い決意を示した。特例公社債法案では、「不毛な党派対立の政治」をせず結論を出すべきと、野党を牽制した。早期解散には否定的な考えをにじませ、経済再生への取り組みに意欲を示した。
  • 自民党の安倍総裁は、「一番重要な約束を果たしていない中で何を言っても心に届かない」と首相を批判。野党は、衆院での代表質問には出席するが、参院では代表質問も開かない方針だ。臨時国会は、冒頭から野党が激しくぶつかり合う展開となっている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「電力値上げ全国拡大」

  • 関西電力の八木社長は29日、電気料金値上げの具体的検討を開始したことを正式に表明した。原発が停止していることで、火力発電燃料コストが増大し、財務体質が悪化しているためた。値上げの時期と幅は「未定」。
  • 29日に発表された関電の2012年9月中間決算は、最終(当期)損益が1167億円の赤字(前年同期204億円の黒字)。上期としては創業以来最悪となった。関電は、原発の発電比率が5割程度と大手で最も高く、コスト削減策だけでは燃料費増の影響を補いきれなかった。福島第1原発事故前と比較すると、年7000億円の燃料費増となる見通し。
  • 九州電力も、原発の稼働停止により、今期4700億円の追加コストが発生しており、30日の中間決算発表で関電と同時期の値上げ実施を表明する。北海道電力、四国電力、東北電力も値上げを検討しており、9月の東京電力から始まった値上げが全国に波及する。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「中国リスク収益圧迫」

  • 中国の景気減速や反日の高まりによる販売不振により、企業業績に影響が出ている。上場企業の2013年3月期の経常利益は、期初想定の20%増(前期比)から16%増に低下する。「中国リスク」が重荷となる企業が増えそうだ。
  • 中国リスクで最終損益見通しを修正した事例は、以下の通り(カッコ内は従来予想からの引き下げ額)。◇「中国景気の減速」 三菱商事=3300億円(▲1700億円)、三菱ケミカルHD=1250億円(▲350億円)、JFE=350億円(▲450億円)、日立建機=330億円(▲70億円)、◇「反日で買い控えや工場被害」 ホンダ=3750億円(▲950億円)、キャノン2340億円(▲160億円)、小糸製作所=145億円(▲35億円)、ミツミ電機=▲125億円(▲135億円)―。
  • 上場企業の通期経常利益予想は、今後さらに下振れする可能性がある。ただし、内需企業を中心に堅調な企業もあり、2桁増は確保する見込み。オリエンタルランドは、テーマパークの入場者数が増え、収益を改善する。中国への依存度が低い企業は、比較的堅調だ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「拡散予測、6原発で誤り」

  • 原子力規制委員会は、24日に公表した原発の重大事故の際の放射性物質拡散予測マップに誤りがあった、と発表した。誤りがあったのは、日本原子力発電東海第2、同社敦賀、東京電力柏崎刈羽、北陸電力志賀、九州電力玄界、同社川内の6原発。
  • 予測マップは、16方位ごとに国際的な避難基準とされる「1週間の積算被曝線量が100ミリシーベルト」に達するのは、原発から何キロ離れた地点かを計算した。4つのケースで、予測結果の方位が少しずつずれていた。東海第2の場合、全体が反時計回りに22.5度ずれていた。玄海と川内では、方角のほかに距離もわずかに違っていた。
  • 規制委の事務局となる規制庁の森本英香次長は、「緊張感を持った取り組みができなかった。関心が高く、自治体が防災計画の参考にする資料。ミスをお詫びしたい」と謝罪した。同庁は、各自治体に誤りを連絡し、謝罪を開始した。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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