2012.10.29 mon

新聞1面トップ 2012年10月29日【解説】対立を超える知恵

新聞1面トップ 2012年10月29日【解説】対立を超える知恵


【リグミの解説】

政局の行方を占う選挙
本日は読売と毎日が1面トップで、「鹿児島3区の衆院補選」で自民党が勝利したことを伝えています。

この報道の要旨は、「次
期衆院選の前哨戦となる選挙で、民主党と自民党の幹部が現地入りする総力戦となった」⇒「自民党候補(公明党推薦)が与党候補(国民新党候補・民主推薦)に勝利した」⇒「自民党・野党が勢いづき、解散圧力を野田首相にかけ、厳しい政権運営になる」⇒「でも、得票差の少ない辛勝だったので楽観は禁物」といった感じです。

「民主党は追いつめられる、しかし自民党も追いつめ切れていない、むしろ、この結果は第3極を勢いづけさせることになるか」。典型的な「政局と選挙の動向を占う速報」という位置づけで、2紙の内容は大同小異。

この一連の報道姿勢でいくなら、各党の
選挙資金や大衆受けの動きを追いかけ、次期衆院選の時期が遅れると「金欠で息切れになるのはどこか?」、「ブームの賞味期限が切れるのはいつか?」を追いかける週刊誌ネタの方が、まだ面白く役にも立つのではないでしょうか。

争点にならない原発
新聞であれば、今回の選挙で、なぜ原発が争点にならなかったかを調査分析してもらいたいです。鹿児島3区には稼働停止してい
る九州電力川内原発がありますが、自民党候補も国民新党(与党)候補も「再稼働容認」のため、争点にならなかった、というのが理由ですが、では肝心の選挙民はどうだったのか。

今回の投票率は、56.6%でした。前回の民主党が大勝した国政選挙での同区の投票率は、72.95%。先日、最高裁が2010年参院選挙の「1票の格差」を「違憲状態」とする判決を出しました。2009年の衆院選も既に「違憲状態」との判決が出ています。いくら、「1票の格差」を問題にしても、肝心の選挙民である私たちが選挙に対して醒めていては、何も変わりません。

首相官邸前デモがもたらしたもの
毎週金曜日に開催されている「首相官邸前デモ」も、ここにきてすっかりトーン・ダウンをしています。今までデモなどの抗議
運動に参加したことのなかった普通の生活者が、ネットなどを介して多数参加し、ムーブメントを起こしたのが、今回のデモの一大特徴と言われます。

「普通生活者」が、政治・社会の大きなテーマの「当事者」になり、集合的な意志を発揮するのが、新
しいムーブメントの意義であるとすれば、大事なのは、「興味の持続」と「具体的な行動」と「変化を創る」ことです。

ここには、リーダーはいません。ムーブメントをサポートするファシリテーターはいますが、「普通生活者」1人ひとりが「当事者」として行動することが必要です。「鹿児島3区の衆院補選」を、政局を占うレベルでしか議論できない政治と報道の貧困を嘆く代わりに、自主的に何ができるか考える。その方が、健全で前向きです。

対立を超える知恵
たとえば、九州の電力事情を調べ、原発再稼働の必要性がどのぐらいあるか、地域住民が自主的に検討する。そんな動きを、九州以外の人々も、ネットなどで共有し、参加する。「首相官邸前デモ」の「次」の一手は、いくらでもあります。

これは、脱原発派への提唱ではありません。原発推進派も等しく参加すべき活動です。両方の「主義」が原理的に分離されてしまったら、過去の「原発賛成派vs反対派」の二の舞です。そのような不毛なことを繰り返さない知恵が、今の日本にはとりわけ大切です。


(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「衆院補選、自民が勝利」

  • 28日に投開票された衆院鹿児島3区補欠選挙は、自民党の宮路和明氏(公明党推薦)が勝利した。宮路氏は、元衆院議員で元厚生労働副大臣。国民新党県代表の野間健氏(民主党推薦)を接戦の末に破った。7回目の当選となる。
  • 補選は、国民新党の松下忠洋前郵政改革・金融相の死去に伴って実施された。次期衆院選の前哨戦と位置付けられ、与野党とも幹部を投入して総力戦を展開した。自民党は、安倍総裁のもとでの初の国政選挙に勝利したことで、政権奪回にはずみをつけそうだ。野党は、臨時国会で早期の衆院解散を要求し、対決姿勢を強めるものと見られ、野田首相は厳しい政権運営を強いられる。
  • 衆院の新しい構成は、以下の通り。▽民主党・無所属クラブ・国民新党=248、▽自民党・無所属の会=119、▽国民の生活が第一・きづな=47、▽公明党=21、▽共産党=9、▽社民党・市民連合=6、▽みんなの党=5、▽日本維新の会=5人、▽改革無所属の会=4、▽減税日本・平安=4、▽新党大地・真民主=3、▽たちあがれ日本=2、▽無所属=6、▽欠員1―。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「売られる野生動物 ~地球異変」

  • コンゴ共和国のヌアバレ・ヌドキ国立公園を中心に、3ヵ国にまたがる熱帯林が世界遺産に登録された。ゴリラやゾウなど多くの野生動物が暮らす豊かな生態系が評価された。だが、この豊かな森の動物が食い尽くされつつある。
  • 熱帯雨林が広がるコンゴでは、野生動物の肉は「ブッシュミート」と呼ばれ、昔からたんぱく源のひとつになってきた。ただし、自家消費分のみで、動物の数が維持される持続可能な利用だった。ところが、内戦が終わった2000年頃から事態が変わった。人口が急増し、ブッシュミートが都市で大量消費されるようになった。
  • 国連食糧農業機関(FAO)によると、周辺6ヵ国で消費されるブッシュミートは、1990年代の4倍以上に増加した。アフリカの熱帯雨林での狩猟は、野生動物を絶滅させず、持続可能に利用できるレベルの6倍以上になるという。国際NGO野生生物保護協会の西原智昭さんは、「野生動物は木々の種を運ぶなど森にとっても重要。動物の減少は森そのものの存続の危機だ」と語る。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「衆院補選、自民が辛勝」

  • 28日に投開票された衆院鹿児島3区補欠選挙は、自民党の宮路和明氏(公明党推薦)が勝利した。国民新党の新人、野間健氏を破り、7選を果たした。次期衆院選の行方を占う前哨戦を兼ねた補選での敗戦は、政権維持を目指す与党にとって痛手となった。
  • 自民党と公明党は、臨時国会で早期の衆院解散を要求し、対決姿勢を強めるものと見られる。ただ、約5700票差という予想以上の僅差での勝利であり、楽観を戒める声も出ている。
  • 野田政権と、自民党の安倍総裁の体制にとって、初の国政選挙となった。投票率は56.60%で前回衆院選同区の72.95%を大きく下回った。当日有権者数は、25万8853人。得票数は、宮路氏が70,694人、野間氏が65,025人。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「耐震診断を義務化」

  • 国土交通省は、オフィスビルやマンションなど、利用者の多い大規模建物の耐震診断を所有者に義務付ける方針だ。有識者の意見を聞いた上で、2013年の通常国会に「耐震改修促進法」の改正案を提出する方向で調整する。違反には、50万~100万円程度の罰金を検討する。
  • 対象見込みは、床面積5千平方メートル(約1500坪)以上の大規模建物と、幹線道路や震災時の避難路沿いにある建物。1981年以前の古い耐震基準で建てられたオフィスビル、マンション、学校、百貨店、劇場などが含まれ、全国で1万~2万棟あるとみられる。
  • 大地震で倒壊の危険のある建物には、耐震性能を高める改修や建て替えを求めていく。調査や改修に必要な費用(数百万~1千万円)は、国や自治体が補助する。首都直下型地震などに備え、震災に強い街づくりを急ぐ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「震災復興予算、原発輸出調査に流用」

  • 経済産業省は、東日本大震災の復興予算で、2012年度3次補正予算に盛り込まれた中から5億円をベトナムへの原発輸出に関する調査事業費として支出していたことが判明した。復興予算が、被災地復興と無関係な海外での原発推進事業にまで流用されるずさんな使途決定が、浮き彫りになった。
  • 経産省によると、日本政府の受注が2010年10月に決まったベトナムのニントゥアン第2原発の建設に向け、現地で地震の原因となる断層の有無などを調査する事業。同省は、「インフラの海外輸出を進めることが、被災地の関係企業に経済効果をもたらす」と説明する。
  • 原発輸出の調査費を復興予算から計上することは被災者の心情を逆なでする、との東京新聞の指摘に対して、経産省資源エネルギー庁原子力政策課は、「真摯に受け止める」と答えた。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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