【リグミの解説】
文明国の条件
『真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず村を破らず 人を殺さざるべし』
日本初の公害事件と言われる「足尾銅山鉱毒事件」を告発し、政府に闘いを挑んだ政治家、田中正造の言葉です。戦後の経済発展の結果、日本は子供の数が減り、老人の数が増えました。人口は増え、国は豊かになりましたが、果たして田中が指摘したような文明国になれたのでしょうか。
少子高齢化の現実
「少子高齢化」。課題先進国の日本を象徴する言葉。少子」と「高齢化」は、セットで語られますが、ちょっと考えればわかるように、この2つのテーマはある意味、正反対です。昔は長生きは珍しく老人の数は限られていましたが、高齢者は、現にたくさん存在し、これから益々増えていきます。かつてたくさんいた子供たちは、その数がどんどん減っています。
1950年の65歳以上の人口は、416万人で人口に占める比率は4.9%でした。30年後の1980年は、2.5倍強増えて大台超えの1065万人で9.1%になりました。さらに30年後の2010年には、再び2.5倍強の増加となり、2874万人で22.5%に達しました(参照:総務省統計局)。
一方、15歳未満の子供の数は、どういう推移でしょうか。1950年は2979万人で、人口に占める比率は35.4%もありました。それが、30年後の1980年は1割近く減って、2752万人で23.5%になりました。この段階で、3人に1人以上が子供だったのが、5人に1人に。さらに30年後の2010年の子供の数は、3分の2まで減り、1831万人で14.3%になりました(参照:総務省統計局)。
長生きは幸福か
長生きできることは、よろこばしいことです。でも今の日本の老人たちは、かならずしもハッピーではないように見えます。経済面の不安があったり、病気や怪我に苛まれたり、孤独な境遇になってしまったり。高齢者を支えていくのは、文明社会の義務であり、それをどれだけ上手に達成するかに文明度、先進度が表れます。
課題先進国・日本は、老人の不安をなくし、活き活きと社会の表舞台で活躍できる社会を実現することを目指すべきです。日経ビジネス2012年9月10日号に「隠居ベーション」という記事で「100歳現役時代」を提唱していました。課題が深刻であればあるほど、こういう「前向きさ」はとても大事だと思います。高齢化の問題は、老人たちが「自立」した存在としてハッピーに生きられることが、目指す姿といえます。
一方の少子化の問題は、社会の「連帯」がカギになります。今のお母さんたちは、とても孤独だと思います。子供を産むことを躊躇し、やっと決意し、出産しても、子育て環境は存外に大変で、音を上げそうになることの連続です。昔は当然のように存在した大家族の助け合い、共同体の支援が今はありません。
まずは、お父さんたちを職場の拘束から解き、子育てに相当の時間を割けるようにすべきです。それから、元気な高齢者たちが、いい形で子育て支援に協力できる仕組みを作り、世代間をまたぐ助け合いができないものかと思います。
子供たちのしあわせのために
こんなことをいろいろと考えたのは、今日の東京新聞の1面トップ記事「日本脳炎ワクチン、重い副作用104人」を読んで、日本は本当に子供たちを大切にしているのだろうか、と疑問になったからです。子供たちが受けると良いとされるワクチンの種類はとても多いです。
「B型肝炎ワクチン」「ロタウイルスワクチン」「ヒブワクチン」「小児用肺炎球菌ワクチン」「四種混合(DPT-IPV)ワクチン
・三種混合(DPT)ワクチン・二種混合(DT)ワクチン」「不活化ポリオワクチン」「BCGワクチン 」「MR(麻しん風しん混合)
ワクチン」「おたふくかぜワクチン」「みずぼうそうワクチン(水痘ワクチン)「日本脳炎ワクチン」「インフルエンザワクチ
ン」「HPVワクチン」「A型肝炎ワクチン」・・・(参照:KNOW・VPD)。
このリストを見て、悩まないお母さんはいないと思います。摂取すべきか否か。そして接種期限やインターバルが異なり、スケジュールをどうするかも悩みの種です。今は国もリスクを回避したいので、接種を推奨したりしなかったり、個別で親に判断させたりしているようです。その親たちは、一所懸命情報交換をし、悩んでいます。病気を広めないために、摂取すべきだと社会的な圧力もあります。しかし、副作用が指摘される中、どこまで接種すべきか。
今月17日に岐阜県美濃市で10歳の男の子が日本脳炎ワクチンを接種後に急死しました。こうした事例を厚生省は1年に1度だけ集計していたため、対応が後手後手に回っていました。本当に子供たちのしあわせにためにワクチンをほどこすのであれば、副作用はなく、まして重度の障害や死亡事例が出ることなど論外のはず。たまたま発生した事例は、運が悪かった。確率は低いのだから全体としては気にしなくていい。これが国の本音でしょうか。
『少しでも人の命に害ありて 少しぐらいはよいと思うなよ』
田中正造のもうひとつの言葉を、文明国・日本は噛みしめる必要があります。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「防災情報、携帯に自動配信」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「それでも中国に店を」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「23都道府県、予定外の借金」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「JXエネ、室蘭製油所停止」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「日本脳炎ワクチン、重い副作用104人」