2012.10.26 fri

新聞1面トップ 2012年10月26日【解説】日本に対する愛

新聞1面トップ 2012年10月26日【解説】日本に対する愛


【リグミの解説】

3種類のリーダー
リーダーには、3つのタイプがあります。「現在の世界を維持するリーダー」「現状を破
壊するリーダー」「新しい世界を創造するリーダー」です。石原慎太郎・東京都知事が突然、都知事の辞任を表明。保守勢力を結集する新党を立ち上げ、民主、自民に対抗する第3極の要を目指します。本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、東京の4紙が、この話題を大きく取り上げています。マスコミは、都民は、そして国民は、石原さんをどのタイプのリーダーとみなしているのでしょうか。

石原都知事も、日本維新の会代表の橋下・大阪市長も、国政レベルの発言が多く、そこに期待と懸念の両方が渦巻いています。政治家は、言葉の人です。何を発言し、どんな演説をし、論敵とどう討論してきたか。その内容と、語り口、雰囲気に人々は注目します。しかし、政権政党の執行部・閣僚や自治体の首長であれば、言葉と共に、政策の実行内容を棚卸し、客観的に評価する必要があります。何を言ったか以上に、何をしたかを問われるのがリーダーです。

石原都知事の実績
石原さんの都知事として取り組んできた主要な政策は、以下のものがあります。

 

「新銀行東京」 「認証保育所制度の創設」 「福祉改革」 「米軍基地返還」 「外形標準課税」 「カジノ構想」 「後楽園競輪復活構想」 「首都大学東京」 「ディーゼル車排ガス規制」 「羽田空港再拡張事業」 「臨海副都心開発」 「首都機能移転に反対」 「東京オリンピック構想」 「東京マラソン」 「三宅島オートバイレース大会」 「築地市場移転計画」 「参議院議員宿舎建て替えに反対表明」 「都立霊園再開発」 「都営住宅・特別養護老人ホームの増設拒否」 「都立児童養護施設の廃止」 「非実在青少年規制」 「東京都による尖閣諸島購入計画」 (引用:Wikipedia)。


このリストの個々の施策の評価はともかく、内容は多岐に渡っており、都政にインパクトを与えてきたことがわかります。

1995年に「世界都市博覧会中止」を公約に掲げ、圧倒的な支持を得て都知事当選した青島幸雄氏は、公約の都市博中止以外は官僚・役人任せの行政に終始したと言われます。結果として「現在の世界を維持するリーダー」だったということになるでしょうか。青島さんと比較すると、都民の持続的な支持を受けて、3期目を務める石原さんは、「現状を破壊するリーダー」と、「新しい世界を創造するリーダー」の両面を併せ持っているように見えます。

石原氏の人物像
「破壊と創造を繰り返すリーダー」石原氏は、どんな人物なのでしょうか。1968年に参院選(全国区)に自民党から出馬しトッ
プ当選を果たした当時から、石原氏のことを良く知る人物のお話を聞いたことがあります。日本の国会では、演説や質疑応答をするとき、野次がつきものです。石原さんは、自分に向けられた野次が我慢なりません。演説しているときに野次が飛んでくると、その人物の方を向き「うるさい、黙れ!」と一喝。こんな政治家はいなかったので、拍手喝采となります。ところが、「1、2回でやめておけばいいものを、石原さんは野次が来るたびに『うるさい!』とやりかえす。それを見ていて、最初は賞賛していた議員たちも、次第に嫌気がさしてきた」といいます。

これは、石原さんの性格的な特徴をよく象徴するエピソードだと思います。攻撃されれば、かならずその場でやり返す。常に局地戦で勝利しようとする。そんな無意識的ともいえる行動特性がうかがえます。これは、前線で戦う小隊長としては評価できるかもしれませんが、大部隊を束ねる大将にはふさわしくありません。石原さんは、自民党の国会議員時代に、総理大臣になると公言してきましたが、一匹狼的な言動を繰り返し、人望がなかったと言われます。1995年に任期途中で突然衆議院議員を辞めたときは、政治の世界から足を洗う気持ちだったとも聞きます。

都知事となって何が変わったのか。首長となり、責任の範囲と権限がはっきりしたことで、石原さんの良い面が浮上したのかもしれません。ブレーンに恵まれ、人を使って政策を実行していくアプローチを身につけたことも、大きいのではないかと想像します。「破壊」するだけでなく、「創造」をする。その道程の中間には、たくさんの「現状維持」のこともある。そのバランスの取り方を知ったことで、3期目まで継続する長期政権となったのではないでしょうか。

国政に求められる大局観
問題は、国政ではこのアプローチが通用しそうにないことです。自治体の首長と違い、責任の範囲と権限が分散する国政レベル
は、政策の大局観を持ち、政局運営能力に長ける必要がありますが、これは石原さんが一番苦手とするところではないでしょうか。何よりも、日本国への「思い」の強さが情念のレベルに偏り、理念や戦略に高められていないことが心配です。

中国の「南方人物週刊」というメディアは、石原慎太郎氏のインタビュー記事を2年前に掲載しています。その日本語訳が、東京都のホームページに転載されています。同誌が石原氏を取材したのは、「〝嫌中人物〟を取材し、報道する理由は、相手を知り、よりうまく応対するため」でした。その記事にある一文が目を引きます。
 

「石原慎太郎の日本に対する愛を疑うものはいない。論争となるのは、この愛が正常なのか病的なのかというところだ。」(引用:東京都ウェブサイト)。


局地戦の主眼は、「破壊」です。相手を撃破すれば「勝利」となります。しかし、真の国益のためには、局地戦を我慢して「現状維持」すべきことが無数にあります。その先に、高邁な理念と、周到に練り上げられた戦略をもって「創造」する国家の未来像があります。石原慎太郎氏の「日本に対する愛」が、東アジア諸国との関係改善と相互繁栄をもたらす「正常なもの」であることを願います。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「石原都知事辞任」

  • 石原慎太郎・東京都知事は25日、都議会議長に辞表を提出した。自らが代表を務める新党を結成し、次期衆院選に出馬することを表明。日本維新の会との連携を視野に入れ、民主党、自民党に対抗する第3極勢力の結集を図る。
  • 新党には、たちあがれ日本の平沼代表や園田幹事長など同党の衆参国会議員5人が参加する見通しだ。さらに、立ち上がれ日本が主催する政治塾のOB約70人を中心に、新人候補を選考する。
  • 綱領の検討も進める。自主憲法の制定や国家の危機管理体制の再構築などが柱となる見通し。日本維新の会・代表の橋下氏は、「石原氏のパワーがないと日本の統治機構を変えるといっても難しい」と歓迎する一方、「政策で一致しなければ国民にそっぽを向かれる。野合じゃだめだ」と語った。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「石原都知事が辞任」

  • 石原慎太郎・東京都知事は25日、都知事の辞職を表明した。近く自ら代表となる新党を結成し、次期衆院選で比例区から立候補する意向だ。後継には、猪瀬直樹・副知事を指名した。
  • 新党は、石原氏が「応援団長」を務める「たちあがれ日本」を母体とし、保守勢力の再結成を目指す。日本維新の会との連携については、「橋下さんとはまず連携、連帯でしょう。政策のすりあわせも随分してきた」と意欲を示す。
  • 石原氏は、「最後のご奉公。硬直した中央官僚の支配体制を変えないとダメ。役人と戦っていかないと、この国は沈んで窒息して死ぬ」と語り、憲法改正への意欲を表明。尖閣諸島に船の避難場所が必要との見解も示した。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「石原都知事、辞職し新党」

  • 石原慎太郎・東京都知事は25日、都知事の辞職を表明した。新党を結成し、党首として次期衆院選で比例区から立候補する意向だ。後継には、猪瀬直樹・副知事を指名した。
  • 石原氏は、「命のあるうちに最後のご奉公がしたい」「日本を支配する、硬直した官僚の支配制度を変えないと駄目だ」と述べた。新党の政策として、現行憲法の破棄、中央集権体制の打破を挙げる。
  • 新党には、たちあがれ日本に所属する衆参議院5人が参加する。たちあがれ日本が主催する政治塾の塾生30~40人の中からも候補者を擁立する。民主党を離党した無所属議員らが新党に参加予定とする。日本維新の会とも「連帯、連携する」と言及した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「日本郵政、2015年秋上場」

  • 持ち株会社の日本郵政は、2015年秋をめどに株式を上場する。国の持ち株比率を3分の1まで下げる道筋を示すことで、来年4月にも住宅ローンに参入する。持ち株の3分の2を売却すると、最大7兆円程度の売却収入が見込める大型上場となる。
  • 日本郵政グループは、政府100%保有の持ち株会社の傘下に「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」「日本郵便」の3社を持つ。従業員数は23万人で、20万人が日本郵便(2012年3月末時点)。連結純資産は約11兆円。
  • 日本郵政は、下地郵政民営化担当相や総務省など関係省庁に原案を提示し、29日に開催される政府の郵政民営化委員会で了承を得たい意向だ。郵政の事業領域拡大に対して、民間企業が反発しそうだ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「石原知事、辞職表明」

  • 石原慎太郎・東京都知事は25日、都知事の辞職を表明した。「新党をつくって、仲間と一緒に国会に復帰しようと思っている」と述べ、自らが代表となる新党を結成する意向だ。都知事選の投開票日は、12月16日が有力視されている。石原氏は、後継に猪瀬直樹・副知事の名を挙げた。
  • 石原氏は、「都知事を務め、東京だけでなく、日本のためになることをやろうと思ったが、行政に関して国の妨害に遭って非常に苦しい思いをした」と述べた。新党の政策として、官僚制度の打破や憲法改正を掲げる。
  • 新党には、たちあがれ日本の衆参議員5人が参加する見通し。日本維新の会など保守勢力と連携し、民主党、自民党に対抗する第3極の結集を目指す。石原氏自身も次期衆院選で比例代表から立候補する意向だ。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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