【リグミの解説】
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、日経が「自社アンケート結果」の記事です。
読売新聞: 景気判断の企業アンケート
景気判断の結果は、下記の記事要約をご参照ください。ここでは、他に2つ、注目される質問について。
(1) 中国事業への対応
「特段の影響ない」=49社(41%)、「投資のあり方について改めて検討する」=25社(21%)、「その他」=25社(21%)、無回答=20社(17%)―。
調査対象企業が中国での生産と販売、また日本への観光客にどれだけ依存しているかによって、深刻度は変化しますので、ここでは、日本の主要企業の大雑把な全体観として見るべきでしょう。中国人観光客の来日数統計では、9月は前年比10%減であったと、数日前に報道されていました。10月以降、さらに落ちていくのかどうか、短期でない影響の出方に注目をすべきと思います。
一方、中国国内の販売では、9月の自動車販売は、トヨタ▲48.9%、ホンダ▲40.5%、日産▲35.3%、マツダ▲35%と激減しました。同時期、BMW 55%増、アウディ20.5%増、現代自動車15%増、メルセデスベンツ10%増、GM 1.7%増でした(参照:Reuters)。経済活動の表層は、勝ち負けのゲームです。短期的には日本企業の穴を他国企業が埋める「Win-Lose」が続くと思われます。
しかし、経済活動のより根幹にあるのは、相互依存の構造です。中国は現在、日本経済にダメージを与える戦略を画策していると思われますが、それは結局、中国自身の景気の足を引っ張ることになります。中国のメディアに、「日本経済に1000のダメージを与えることができるが、中国も800のダメージを受ける」という表現の記事が掲載されました。元は中国の経済研究所の分析のようですが、犠牲を払っても、対抗措置を取るという趣旨と受け取れる報道もされています。真意はどうなのでしょうか。
「1000-800=200」の差があれば、短期的には「Win-Lose」とも言えますが、双方が疲弊するという意味では、長期的には明らかに「Lose-Lose」です。
(2)2030年時点の望ましい原発比率
「25%」=16社(13%)、「15%」=11社(9%)、「0%」=2社(2%)、「その他」=24社(20%)、「わからない」=31社(26%)、無回答=20社(17%)―。
日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体は、政府の「原発ゼロ」方針に反対を表明するため、9月18日に異例の共同記者会見を開きました(参照:JCAST)。こうした動きと、今回のアンケート結果には、ギャップがあります。ひとつは、実際のアンケート記入部門が広報などで、社内意見を取りまとめて出しているため、と思われます。企業のトップにインタビューすれば、もっと明確な回答が出た可能性はあります。
もうひとつは、企業の「本音」がどこにあるかです。経済活動は、社会のインフラ(下部構造)であり、政治的な判断は、経済に乗っかる上部構造がしていくもの。企業人たるもの、環境変化に柔軟に対応し、利益の源泉を求めていくべき。そんな割り切り力と、現場対応力によって、未来を切り開いてきたのが、今までの日本企業です。政府に文句を言っている暇があったら、省エネと再生可能エネルギーの開発に全力で取り組む。良くも悪くも、そうした「日本的なリアリズム」が見え隠れするアンケート結果です。
朝日新聞: 支持政党の世論調査
朝日が10月に2度目の世論調査です。前回は、読売新聞の世論調査と重なり、その数値も解釈も別れました(参照:「リグミの解説2012年10月3日」)。朝日の今回の調査は、前回調査を一層際立たせたもので、野田民主党の人気はさらに低下、安倍自民党が続伸し、2009年に下野して以来、最高の支持率となった、というもの。
この結果に、民主党はさらなる危機感を持ち、衆院解散・総選挙の時期を後ろ倒ししたい、との思惑が出てくる可能性があります。一方、自民党は一層、年内解散をプッシュしてくるでしょう。でもちょっと考えてみたいことがあります。2009年に、国民が民主党を圧倒的に支持し、政権交代が起きたとき、本当に民主党のマニフェスト内容を評価し、当時の執行部を支持したのでしょうか。
むしろ、自民党が長期政権の末の機能不全に陥り、とにかく政権交代をまずは優先しよう、という空気が蔓延した結果ではなかったでしょうか。そして今回。マニフェストは穴だらけ、内政でも外交でも政権運営能力に大いに疑問符がついた民主党。これなら自民党の方がましだった、という空気を感じます。
しかし、野田首相と谷垣前総裁が中心になって消費増税法案を通した3党合意の直後に、自民党が参院に「消費増税」を理由に野田首相を問責する決議案に賛同したのは、大きな疑問符がつく行動でした。結局、自民党は今も政局最優先であり、政策の一貫性は後回しで、何も変わっていない、そう思わせる象徴的な出来事でした。
朝日の世論調査回答者は、衆院の解散・総選挙は「来年でよい」=35%、衆院の小選挙区の「1票の格差」が「違憲状態」のままでは、「衆院選はするべきではない」=42%でした。これに「自民党時代と民主党時代の政権運営の問題点を徹底的に洗い出し、日本の政治体制の在り方について『国民的議論』をしてから、総選挙をすべき」という質問を追加してもらいたいです。
多くの人々が、当事者意識をもって、冷静に客観的に日本の向かうべき方向について、熟議できる環境を整えること。遠回りなようで、それが結局は、外交と内政において「Win-Win」を創造するための近道です。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「景気『足踏み』倍増75%」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「野田内閣支持、最低18%」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「日台漁業協定、再開へ」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「大卒内定、2年連続増」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「電力選び個別相談」