2012.10.22 mon

新聞1面トップ 2012年10月22日【解説】「Win-Win」を創造する近道

新聞1面トップ 2012年10月22日【解説】「Win-Win」を創造する近道


【リグミの解説】

本日の新聞1面トップは、読売、朝日、日経が「自社アンケート結果」の記事です。

読売新聞: 景気判断の企業アンケート
景気判断の結果は、下記の記事要約をご参照ください。ここでは、他に2つ、注目される質問について。


(1) 中国事業への対応
「特段の影響ない」=49社(41%)、「投資のあり方について改めて検討する」=25社(21%)、「その他」=25社(21%)、無回
答=20社(17%)―。

調査対象企業が中国での生産と販売、また日本への観光客にどれだけ依存しているかによって、深刻度は変化しますので、ここでは、日本の主要企業の大雑把な全体観として見るべきでしょう。中国人観光客の来日数統計では、9月は前年比10%減であったと、数日前に報道されていました。10月以降、さらに落ちていくのかどうか、短期でない影響の出方に注目をすべきと思います

一方、中国国内の販売では、9月の自動車販売は、トヨタ▲48.9%、ホンダ▲40.5%、日産▲35.3%、マツダ▲35%と激減しました。同時期、BMW 55%増、アウディ20.5%増、現代自動車15%増、メルセデスベンツ10%増、GM 1.7%増でした(参照:Reuters)。経済活動の表層は、勝ち負けのゲームです。短期的には日本企業の穴を他国企業が埋める「Win-Lose」が続くと思われます。

しかし、経済活動のより根幹にあるのは、相互依存の構造です。中国は現在、日本経済にダメージを与える戦略を画策していると思われますが、それは結局、中国自身の景気の足を引っ張ることになります。中国のメディアに、「日本経済に1000のダメージを与えることができるが、中国も800のダメージを受ける」という表現の記事が掲載されました。元は中国の経済研究所の分析のようですが、犠牲を払っても、対抗措置を取るという趣旨と受け取れる報道もされています。真意はどうなのでしょうか。

「1000-800=200」の差があれば、短期的には「Win-Lose」とも言えますが、双方が疲弊するという意味では、長期的には明らかに「Lose-Lose」です。

(2)2030年時点の望ましい原発比率
「25%」=16社(13%)、「15%」=11社(9%)、「0%」=2社(2%)、「その他」=24社(20%)、「わからない」=31社(26%)
、無回答=20社(17%)―。

日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体は、政府の「原発ゼロ」方針に反対を表明するため、9月18日に異例の共同記者会見を開きました(参照:JCAST)。こうした動きと、今回のアンケート結果には、ギャップがあります。ひとつは、実際のアンケート記入部門が広報などで、社内意見を取りまとめて出しているため、と思われます。企業のトップにインタビューすれば、もっと明確な回答が出た可能性はあります。

もうひとつは、企業の「本音」がどこにあるかです。経済活動は、社会のインフラ(下部構造)であり、政治的な判断は、経済に乗っかる上部構造がしていくもの。企業人たるもの、環境変化に柔軟に対応し、利益の源泉を求めていくべき。そんな割り切り力と、現場対応力によって、未来を切り開いてきたのが、今までの日本企業です。政府に文句を言っている暇があったら、省エネと再生可能エネルギーの開発に全力で取り組む。良くも悪くも、そうした「日本的なリアリズム」が見え隠れするアンケート結果です。

朝日新聞: 支持政党の世論調査
朝日が10月に2度目の世論調査です。前回は、読売新聞の世論調査と重なり、その数値も解釈も別れました(参照:「リグミの解説2012年10月3日」)。朝日の今回の調査は、前回調査を一層際立たせたもので、野田民主党の人気はさらに低下、安倍自民党が続伸し、2009年に下野して以来、最高の支持率となった、というもの。

この結果に、民主党はさらなる危機感を持ち、衆院解散・総選挙の時期を後ろ倒ししたい、との思惑が出てくる可能性があります。一方、自民党は一層、年内解散をプッシュしてくるでしょう。でもちょっと考えてみたいことがあります。2009年に、国民が民主党を圧倒的に支持し、政権交代が起きたとき、本当に民主党のマニフェスト内容を評価し、当時の執行部を支持したのでしょうか。

むしろ、自民党が長期政権の末の機能不全に陥り、とにかく政権交代をまずは優先しよう、という空気が蔓延した結
果ではなかったでしょうか。そして今回。マニフェストは穴だらけ、内政でも外交でも政権運営能力に大いに疑問符がついた民主党。これなら自民党の方がましだった、という空気を感じます。

しかし、野田首相と谷垣前総裁が中心になって消費増税法案
を通した3党合意の直後に、自民党が参院に「消費増税」を理由に野田首相を問責する決議案に賛同したのは、大きな疑問符がつく行動でした。結局、自民党は今も政局最優先であり、政策の一貫性は後回しで、何も変わっていない、そう思わせる象徴的な出来事でした。

朝日の世論調査回答者は、衆院の解散・総選挙は「来年でよい」=35%、衆院の小選挙区の「1票の格差」が「違憲状態」のままでは、「衆院選はするべきではない」=42%でした。これに「自民党時代と民主党時代の政権運営の問題点を徹底的に洗い出し、日本の政治体制の在り方について『国民的議論』をしてから、総選挙をすべき」という質問を追加してもらいたいです。

多くの人々が、当事者意識をもって、冷静に客観的に日本の向かうべき方向について、熟議できる環境を整えること。遠回りなようで、それが結局は、外交と内政において「Win-Win」を創造するための近道です。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「景気『足踏み』倍増75%」

  • 景気の現状は、「足踏み(踊り場)状態」と答えた企業が90社(76%)だった。4月調査時の42社(36%)から倍増した。読売新聞社が国内主要119社を対象に行った景気アンケートの結果。
  • 企業の景気認識の推移は、以下の通り(2011年秋⇒2012年春⇒2012年秋)。▽「はっきりと回復」=4社(3%)⇒1社(1%)⇒0社(0%)、▽「緩やかに回復」=60社(51%)⇒73社(62%)⇒11社(9%)、▽「足踏み(踊り場)状態」=47社(40%)⇒42社(36%)⇒90社(76%)、▽「緩やかに悪化」=6社(5%)⇒2社(2%)⇒18社(15%)―。
  • 景気が「足踏み」または「悪化」している要因(複数回答)は、①「中国など新興国経済の減速」=76社(64%)、②「欧州の財政金融危機の継続」=70社(59%)。日中関係の悪化を受けた中国事業への対応は、「特段の影響はない」が最多で49社(41%)、「投資の在り方を改めて検討する」は25社(21%)だった。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「野田内閣支持、最低18%」

  • 朝日新聞社が20、21日に実施した全国世論調査(RDD法)で、野田内閣の支持率は、18%となった。前回の緊急調査(10月1、2日)では23%だった。はじめて2割を切る過去最低の支持率。今までは、8月定例調査の22%が最低だった。野田内閣の不支持率は、59%で過去最高。前回は56%、7、8月は58%だった。
  • 政党支持率と衆院比例区の投票先は、以下の通り。▽「政党支持率」民主党=11%(前回14%)、自民党=26%(前回21%)、日本維新の会=2%(前回2%)、▽「衆院比例区の投票先」民主党=13%(前回17%)、自民党=36%(前回30%)、日本維新の会=3%(前回4%)―。自民党は、2009年の野党転落以来、最高の数値。
  • 衆院の解散・総選挙の時期と「一票の格差」については、以下の通り。▽衆院の解散・総選挙の時期:「今年中にするほうがよい」=49%、「来年でよい」=35%、▽衆院の小選挙区の「1票の格差」が「違憲状態」のままでは、「衆院選はするべきではない」=42%、「衆院選をしてもよい」=28%―。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「日台漁業協定、再開へ」

  • 尖閣諸島海域の漁業権を巡る日本と台湾の協議が、11月にも再開することが明らかになった。2009年2月に中断して以来となる。日本側が9月上旬に提案したもの。
  • 尖閣諸島を巡る問題で、日中間の対立は解決の糸口が見えない中、中国は台湾に「尖閣防衛の共闘」を迫っている。しかし台湾は、武力統一を放棄しない中国に取り込まれないよう、最も重要な米国との良好な関係を確保すると共に、日台関係の安定も維持したい。日本は、中台連携を阻止するために、日台間の「唯一の問題」とされる漁業問題に真剣に取り組み始めた。
  • 日台漁業協議は、2005年の15回協議で排他的経済水域(EEZ)を巡り対立し、協議中断となった。2008年6月に台湾の遊漁船が、日本の巡視船と衝突、沈没したことを受け、2009年2月の16回協議で、トラブル発生時の緊急通報システムの構築では合意したが、漁業権の進展はないまま、今日に至っている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「大卒内定、2年連続増」

  • 主要企業の大卒採用内定者数(2013年春入社)は、2012年春実績の3.5%増となり、2年連続で伸びた。日本経済新聞社が21日にまとめた調査の結果。非製造業は、20業種中15業種でプラスに転じ、全体で6.6%増で5年ぶりの増加となった。
  • 2013年4月定期採用状況は、以下の通り。▽大卒合計=910社、採用84,424人(前年比3.5%)、▽短大・専門学校・高専合計=752社、採用4,462人(前年比▲6.8%)、▽高卒合計=828社、採用11,618人(前年比▲18.1%)―。
  • 団塊世代の大量退職に備えるためと、海外や環境関連などの成長分野を開拓するために、採用を増やす。ただ景気の先行きには、不透明感も広がっており、景気動向次第で就職環境は再び冷え込む可能性もある。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「電力選び個別相談」

  • 東京都世田谷区は、電力選びの個別相談の取り組みとして、「エネルギー・コンシェルジェ(仮称)」制度を導入する方針を決めた。再生可能エネルギーの導入方法などを区民にアドバイスする。
  • 太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーについては、大手電力会社に固定価格で買い取りを義務付ける国の制度が始まった。各自治体でも、太陽光発電パネル設置の補助事業などがある。しかし、窓口が別々で分けりにくく、利用しにくい面がある。
  • エネルギー・コンシェルジェは、再生エネに関する諸制度や機器に通じた相談員で、区が登録し、要請に応じて家庭に派遣する。住宅条件に応じて、最も有利な再生エネの導入方法をアドバイスする。世田谷区は、太陽光パネルの普及事業を行い、生協による家庭向け電力共同購入構想にも前向きな姿勢を示し、脱原発を後押ししている。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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