2012.10.21 sun

新聞1面トップ 2012年10月21日【解説】対決姿勢を超える「対話力」を発揮しよう

新聞1面トップ 2012年10月21日【解説】対決姿勢を超える「対話力」を発揮しよう


【リグミの解説】

胡錦濤総書記の意向
本日の新聞1面トップ記事の白眉は、朝日の調査報道、「紅の党―指導者たち(1)」です。尖閣諸島問題で緊迫する日中関係。中
国共産党の最高指導部9人のうち、日本批判の言葉を表明していないのは、胡錦濤総書記ただ1人と言われています。最高指導者の胡氏は、どこまで指導力を発揮し、国をどの方向に導こうとしているのか。今までの国内報道では、今一つ判然としませんでした。

しかし、今回の朝日の記事は、軍事衝突を視野に入れた対日強硬姿勢が、胡氏の意を受けたものだと報じています。日中の衝突が明らかになった当初、中国共産党は人民解放軍を掌握しきれておらず、軍がこの機に軍事行動を通して勢力拡大を図る可能性もある、という観測がありました。実際は、党の最高指導部の統一的な意思のもとで、動いている様子がこの記事から伝わってきます。

日中・日韓関係の失敗
胡氏は、10年前に総書記に就任したとき、新たな日中関係を模索しました。朝日の記事は、それが挫折した最後の瞬間が、ウラジ
オストクにおけるAPEC会場での野田首相との「立ち話」であったことを示唆します。尖閣の国有化に断固反対したにもかかわらず、野田政権は翌日に国有化を決定。それを聞いた胡錦濤氏は、「絶対に許さないと憤った」という側近の声を紹介しています

中国はメンツの国と言われます。野田首相とのやりとりは、国家の最高権力者のメンツが潰された瞬間だった。そういう捉え方もできます。
胡氏は当初、党総書記、国家主席、中央軍事委員会主席の3役をすべて引退する予定だったそうです。日中衝突で、軍事委主席は続投することになりました。

この記事を読んでいると、韓国の李明大統領の下での日韓関係と、どこか通底するものを感じます。李大統領は、就任当初、未来志向の日韓関係を標榜し、首脳同士が定期的に会談を重ねるシャトル外交を提唱しました。去年の今ごろ開催された日韓首脳会談の様子を伝える記事を読み返すと、日韓関係は表層的には良好であった風に見えます。しかし1年弱後には、大統領による初の竹島上陸を敢行、さらに天皇謝罪発言をするに及んで、日韓関係は一気に緊迫しました。

対話力の発揮
日本は、この5年から10年ほどの間、日中・日韓の関係を「戦略的互恵」と「未来志向」に作り変えていける可能性がありました
。何がうまくいかなかったのでしょうか。「立場」と「主義」は違っても、信頼関係を築くことは可能です。何があっても、真正面からしっかり話し合えば、問題点の共有をはかり、譲れないところと譲れるところの折り合いをつけ、外交的な着地点を探ることは可能です。こうした骨太な「対話力」が、トップ同士だけでなく、あらゆる政府関係者のレベルで重層的に成されてこそ、成果を上げるものです。

今、「戦略的互恵」と「未来志向」を語る人はいません。火中の栗を拾い、こじれてしまった日中・日韓関係の修復を図るのは誰でしょうか。良好な関係づくりを志向し挫折し、反目し合う指導者たちが仲直りし、もう一度やり直すのか。それとも、新指導体制に移行したあとに登場するニューフェースが、新外交を創造するのか。中国の新体制移行は11月、韓国の大統領選は12月。日本の衆院解散・総選挙はいつか。近い将来に誕生する政権政党と首相は、国内受けが良いだけでは、国の方向性を誤らせます。

使われるキーワードは何であれ、内実において「戦略的互恵」と「未来志向」を創造できる胆力、構想力、実行力のある政治家であることが、何よりも重要です。今こそ日本の指導者は、対決姿勢を超える「対話力」を国内外に発揮するときです。

文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「海上プラント国産推進」

  • 政府は、海上大型プラント建造に関する技術開発支援に乗り出す方針を固めた。韓国や中国などの企業に比べて、技術力の遅れが指摘される国内企業に補助金を出し、支援する。
  • プラントは、生産設備が整った規模の大きな工場を指す。海底油田から採掘した原油を蒸留し、ガソリンや軽油などの石油製品を精製する。ガス田で取得した天然ガスから不要物や環境汚染物質、水分などを除去し、冷却を行って液化する。
  • 韓国や中国は、官民を挙げて海外のプラント受注シェア拡大を目指している。海洋開発の国産技術は、エネルギー安全保障の観点からも重要だ。将来の日本の排他的経済水域(EEZ)での資源開発もにらみ、自前の海上大型プラント建造技術を育成する国家戦略の一環となる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「『引退』の胡総書記、軍事委主席は続投 ~紅の党」

  • 東シナ海で実施された中国海軍と国家海洋局などの合同演習は、「日本への威嚇」。中国国防大教授で戦略立案に携わる李大光(大佐)が明言した。尖閣諸島の周辺海域で日中両国の艦船が衝突した場合、「海軍がかならず介入するとの決意」を示すものだという。
  • 軍事衝突を視野に入れた対日強硬姿勢は、胡錦濤・中国共産党総書記の意を受けたものだ、と複数の党関係者はいう。尖閣諸島の国有化を決めた日本政府の対応を聞いた胡錦濤は、「絶対に許さない」と憤った。一旦はすべての役職を引退すると表明した胡は、軍事委主席は続投することを決めた。
  • 尖閣情勢が緊迫する中で軍のトップが交代することへの懸念から、胡の慰留を求める声が広がった。10年前、総書記に就任した胡は、新たな日中関係の構築を模索し、挫折した。その対日関係の未曾有の悪化によって、軍の指揮権を掌握したまま院政を敷く道が、胡の眼前に開いた。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「海外での事件、救済漏れ」

  • 「犯罪被害給付制度」は、事件発生場所を国内に限定しており、海外で犯罪に遭遇した被害者や遺族が、公的支援金を受け取れないケースがある。関係者から、改善を求める声が上がっている。同制度は、国外での犯罪遭遇に際しては、当事国の救済制度に委ねる制度設計になっている。しかし、制度のない国や外国人を対象にしない国がある。
  • 「犯罪被害給付制度」は、1974年の三菱重工ビル爆破事件を契機に導入が検討され、1981に法制化された。地下鉄サリン事件などを受け、給付額の引き上げがなされた。被害者や遺族への給付金は、被害程度により18~約4000万円。都道府県の公安委員会が担当する。
  • 外務省によると、海外での日本人被害者数は、2007~2011の5年間、毎年5000人を超えている。殺人など犯罪による死者は、この5年間で確認されているだけで90人に上る。太田達也・慶応大教授(刑事政策)は、「国内在住の自国民が海外で事件に遭った場合は、給付金の適用対象とすることが望ましい」と語る。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「電力5社、値上げへ」

  • 北海道、東北、関西、四国、九州の5電力会社が、来週以降の電気料金の値上げをする見通しとなった。原発が停止し、火力などの燃料調達費が経営を圧迫しているため。
  • 10電力会社の業績見通しと値上げの有無は、以下の通り(数字は利益額)。◇「値上げを検討」①北海道電力=▲470億円、②東北電力=▲400億円、③関西電力=▲1250億円、⑤九州電力=1650億円―。◇「値上げ回避」①中部電力=▲40億円、②北陸電力=115億円、③中国電力=利益未定―。◇「その他」①東京電力=値上げ確定、②沖縄電力=原発保有せず業績堅調―。
  • 関電は、来年4~9月中の値上げを目指す。家庭向けで1割強、企業向けは2~3割の値上げを軸に調整する。関電は、全従業員対象とした給与カットや設備投資抑制、保有資産売却などを進める方針だ。値上げ回避の中部、北陸、中国の3電力は、原発依存度が低く、内部留保も比較的手厚い。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「就学援助14年で1.5倍」

  • 義務教育の就学援助制度を利用する東京都内の児童・生徒は、2011年度に18万5726人に上った。1997年には12万人だった受給者は、1.5倍に増加している。長引く不況で、子育て家庭の困窮を反映している。
  • 就学援助制度は、生活保護世帯(要保護世帯)や困窮世帯(準要保護世帯)に、市区町村が学用品費や給食費、入学寿運備金、修学旅行費などを支援する。平均受給額は、年間約8万3500円。
  • 公立中学の生徒の就学援助受給率は、37区市で2割超、18区市では3割超となる。最高は足立区の46.6%で、板橋区、墨田区、荒川区、江東区も4割を超える。文部科学省によると、都内の援助受給率は、23.4%で全国で5番目に高い。1番は大阪府の27.3%。全国平均は15.6%。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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