【リグミの解説】
株式市場の低迷
本日の1面トップ記事は、読売新聞と日経新聞が株式市場に関してです。世界中で株式取引が低迷しており、資金が債券に流れています。米国では、株価指数などに沿って運用した場合、過去5年間米国株ではほとんど利益が出なかった一方、米国債券投資は35%の利益をもたらした、と日経新聞は報じています。
2008年のリーマン・ショックで世界の景気は冷え込み、今般の欧州債務危機につながってきています。価格変動を嫌い、投資マネーがより安全な債券に流れているとすれば、何やら日本の金融市場を後追いしているようにも思えます。
日本市場の特殊性
しかし、日本の市場は、他国には見られない特殊な構造をしているのではないでしょうか。日本の国債は、きわめて低金利です。それを国内の機関投資家は、購入しています。その御蔭で、歳入の2倍の歳出がある日本国の財政は成り立っています。
どうしてこんな構図が成り立つのか。さまざまな要因が考えられますが、突き詰めれば、株式市場の低迷に根本原因があると思います。日経平均株価は、高度成長期から一貫して右肩上がりで成長し、1990年をピークを打ったあと、この20年間は、一転して右肩下がりが続いています(参照:Wikipedia)。
これを米国のダウ平均株価と比較すると、違いがよくわかります。ダウ平均は、1990年代も一貫して上昇し続け、約3倍になりました。2000年代に入ると上下動が激しくなりますが、長期トレンドは今もって成長基調といえます(参照Wikipedia)。要するに、この20年、日本の株式市場は、まったく当てにできない状況が続いているのです。
インサイダー問題
そんな日本の株式市場では、インサイダー取引の問題が繰り返されています。読売新聞は、日本証券業協会がインサイダー社員を永久追放する仕組みづくりを検討していることを伝えています。
インサイダー取引の問題は、この言葉がなかった昔からずっとありました。日本の証券市場の構造問題と言うべきかもしれません。問題社員を処罰し、証券会社のトップが陳謝し、経営陣が入れ替わっても、インサイダー問題は一向になくなりません。
ここにもさまざまな要因が考えられますが、右肩下がりの株式市場では、インサイダー取引でもしなければ株で儲けることなどできない、という市場関係者の「本音」が根本要因なのではないでしょうか。
現状維持は衰退
「経済成長がすべての問題を解決する」という考え方があります。それが真実でないことは、この30年ほどの世界各国の事例を分析すれば、容易にわかります。しかし、経済が低迷すれば、多くの問題の解決の糸口を見失うことになるのも事実です。
有限な資源を浪費し、環境への負荷を高め、将来世代に負債を負わせる形で追い求める経済成長には、限界があります。持続可能な社会が、大きなテーマになっています。そこで注意すべきことは、「持続可能」とは一定の状態を維持することではない、ということです。
成長を止めたとき、ほとんど自動的に衰退が始まります。もうこれぐらいでいい、と思ったとき、得たものを失っていくのです。「持続可能」とは、単純な成長志向を改め、成長の中味を持続的に変容していく取り組みを指します。エネルギーの主力を原発から再生可能エネルギーへシフトするのは、そうした変化・変容の好例です。
社会を進化させるエンジン
より良い未来を創造する企業の成長を応援し、その成功の果実を共有する場を提供することが、株式市場の本来の役割です。経済は、健全な社会の基盤です。過去に獲得した財を守り、目減りさせていくだけでは、文化も文明も衰退していきます。
これからの経済成長は、社会基盤の量的充実よりも質的な転換を中心にしたものとなり、それが社会を大きく進化させるエンジンの役割になっていくのではないか。日本の再生のために、経済の位置づけを、原点に戻って見つめ直すべき時です。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「インサイダー社員永久追放」
- 日本証券業協会(日証協)は、企業の公募増資に際してのインサイダー取引問題への対応として、情報漏洩に関わった証券会社の社員を証券営業から永久追放する制度の検討に入った。証券取引等監視委員会は、今年3月以降、証券会社による5件のインサイダー取引を摘発した。野村証券、大和証券、SMBC日興証券で情報漏洩が明らかになった。
- 証券会社の社員らは、国に「証券外務員」の登録を行うことで営業活動ができる。証券会社の自主規制団体である日証協は、国から証券外務員の登録事務を請け負っている。不正に関わった社員は、資格を剥奪し、再取得できないようにするなど、事実上証券営業に携われたない仕組みを検討する。
- 日証協は、金融商品取引法に違反する不正があった証券会社に対する過怠金の上限も、現在の5億円から引き上げることを検討する。日証協は16日、今回のインサイダー取引で、野村証券に対して3億円の過怠金を科すと発表した。これは実質的に過去最高額となる。SMBC日興証券も2億円が科されている。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「サイバー捜査、後手後手」
- 他人のPCを遠隔操作し犯罪予告を書き込んだ「真犯人」は、捜査を翻弄する2つの手法をとっている。1つは「遠隔操作」であり、もう1つは「ウェブサイトが抱える弱点の悪用」だ。
- URLをクリックすると、知らぬ間に自分のPCから横浜市のサイトに犯行予告を書き込む仕掛けが、ある掲示板に埋め込まれていた。横浜市のサイトは、こうした書き込みをブロックする対策が取られていなかった。
- 今までの警察のサイバー犯罪の捜査は、「IPアドレス頼みの面があった」(警視庁幹部)。IPアドレスを過信し、裏付け捜査が不十分だったため、たどりついたPCは遠隔操作されていたにもかかわらず、誤認逮捕を疑われるケースが相次いだ。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「結婚理由、賠償打ち切り」
- 東京電力は、福島第1原発事故の賠償を巡り、避難生活中に結婚した複数の女性への支給を打ち切っていた。避難指示を受けた「精神的損害」に対する賠償に関するもので、「結婚で生活基盤が整った」ことを理由とする。
- 文部科学省の審議会が賠償範囲を定めた中間指針に、結婚の規定はない。文科省の原子力損害賠償対策室は、「長期的避難の精神的苦痛は結婚でなくならない」とする。賠償状況を監督する経済産業省資源エネルギー庁も、「結婚で打ち切りはおかしい」と批判する。
- 東電広報部は、結婚を理由に複数の賠償の打ち切りがあったことを認め、「個別案件は答えられない。判断基準はケース・バイ・ケースだ」と述べる。文科省と資源エネルギー庁は、実態把握の検討を始めた。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「株取引7年ぶり低水準」
- 2012年7~9月の世界の株式売買代金は、7年ぶりの低水準に落ち込んだ。景気の先行きが不透明なため、投資家は価格変動リスクを極端に恐れ、資産を株式から債券などに振り替えているためだ。
- 7~9月のニューヨーク証券取引所の売買代金は、前年同月比の4割減で8年ぶりの低水準。東京証券取引所第1部もで8年ぶり、ロンドン証券取引所は7年ぶりの低水準となる。米国では、2008年から今年10月までに累計4700億ドル弱(約37兆円)が株式投信から流出し、約1兆ドルが債券投信に流入した。
- 値上がり益を期待して積極的に株式投資をする時代が長く続いたが、「成長期待が後退し、相場低迷が長期化しそうだ」と、みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは語る。株式市場の活力低下が続くと、企業への成長マネーの供給が滞り、積極的な設備投資などができなくなる可能性がある。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「復興へ付け替え横行」
- 各府省は、これまで一般会計として扱ってきた事業を、復興予算に付け替えて継続を図っていたことが判明した。一般会計の予算査定は厳しくなっており、関連性のない復興予算獲得に飛びつき、野放図に認められているのが実情だ。
- 一般会計から復興予算に財源が付け替えられた主な事業は、以下の通り。▽外務省=「21世紀東アジア青少年大交流計画」約70億円(2007~2011年度平均)⇒「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流」72億円、▽防衛省=「航空機・輸送機の取得など」2015年までに購入⇒「消耗回復のための航空機・輸送機の取得」400億円、▽内閣府「地域自殺対策緊急強化基金」約33億円(2009~2011年度平均)⇒同事業名で37億円、▽文科省=「国際熱核融合実験炉研究支援事業」約53億円(2007~2011年度平均)⇒同事業名で42億円―。
- 宮入興一・愛知大名誉教授(財政学)は、「日本再生を名目にすれば、復興予算は何にでも使えるため、霞が関は名称や目的を巧みに変更して、復興予算への付け替えを行っている。こうした事態を防ぐには、本年度と来年度の復興特別会計について、有識者などの外部の目を入れて精査する必要がある」と語る。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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