2012.10.16 tue

新聞1面トップ 2012年10月16日【解説】1面記事「トップ3」の比較

新聞1面トップ 2012年10月16日【解説】1面記事「トップ3」の比較


【リグミの解説】

1面記事「トップ3」の比較
本日の新聞1面のトップ3記事です。


読売新聞: ①「就労支援36%実らず」、②「尼崎民家3人目遺体」、③「ソフトバンク、買収発表」
朝日新聞: ①「ソフトバンク世界3位」、②「床下に3人目の遺体」、③「原発のあり方、活発に討論」
毎日新聞: ①「犯行声明『7件関与』」、②「米市場に成長力」、③民家床下3人目遺体」
日経新聞: ①「新興国で最先端鋼板」、②「パナソニック6000億円確保」、③「経験が財産、企業を救う」
東京新聞: ①「国会所有財産手付かず」、②「大発見、研究が競争に」、③「本紙原発報道に菊池寛賞」


以下、この中から、注目の記事3つを取り上げます。

東京新聞のジャーナリズム
東京新聞が「菊池寛賞」を受賞した理由は、「福島第1原発事故がなぜ起きたのかを調査報道の手法で探り、情報を隠蔽しよう
とする政府・東京電力を告発し続けた『果敢なるジャーナリズム』に対するもの」。

確かに東京新聞の原発報道は、各記者が良
く勉強しており、情報の具体性や深堀りにおいて、他紙を圧倒しています。ひとつの立場、主義に徹することの潔さ、わかりやすさも体現しています。しかし、客観的視点(サードビュー)を得るためには、原発推進派や当事者たちの立場や意見もより充実させることも大事だと思います。果敢なジャーナリズムの更なるレベルアップを期待します。

役所にも投資効率の発想を
読売新聞の「支援36%実らず」は、生活保護の施策のひとつである「技能習得費」が、十分に就労に役立っていないというもの。
36%を問題にしていますが、逆に言えば63%は資格や技能を取得することで、就職できたわけで、これは相当に効果的な施策であるとも言えます。

支援が実らなかったケースを問題視し、フォローアップ体制を作ることは、一見正しそうですが、実際には効率が悪く、かえって人件費など経費増をもたらす結果になりかねません。それよりも、実を結んだ63%の中味を分析し、成功確率を上げる取り組みや仕組みづくりをした方が、投資効率は高くなる可能性があります。役所仕事に、「支援の成果100%」といった数値結果を求めると、投資効果や利益を度外視して、ヒトやカネを投入し続けます。

官公庁の取組に今必要なのは、「80-20の法則」だと思います。最初の20%の努力で全体の80%の成果が上がり、残りの20%の成果上げるのには、全体の80%の努力を要する、という経験則。80、20の比率はともかくとして、限られた経営資源(ヒト、モノ、カネ)で最大の成果を上げるためには、有用な考え方だと思います。

朝日地球環境フォーラム2012
朝日新聞の「原発のあり方、活発に討論」は、15日に開幕した「朝日地球環境フォーラム2012」の初日の様子を伝えていますが
、これは注目できる内容です。朝日は、脱原発の姿勢を打ち出していますが、このフォーラムの参加者には、原発維持を掲げる経済団体のひとつ経済同友会の幹部も講演をしています。後援に経産省の名前もあります。

基調講演とパネルディスカッションの参加者は、アンマリ・スローター米プリンストン大教授、朴元淳ソウル市長、タルヤ・ハロネン・フィンランド前大統領、長島徹・経済同友会副代表幹事。中国共産党中央党校国際戦略研究所の馬小軍教授が出席したことも、時節柄注目しました。

朴ソウル市長は、福島原発事故を「地球市民全体に対する警告」とし、ライフスタイルを変え、原発全廃へ向けた取り組みを提唱しています。具体的に、2014年までに原発1基分のエネルギー消費を減らすプロジェクトを提案しているのは、わかりやすかったです。

経済界を代表する長島氏は、「必要最低限の原発を持ってもいいのではないか。事故でも惨事にならない技術を開発することが大切」「自然エネルギーがもっと活用されると、原子力はフェードアウトするのでは。ただし、何百年かかるかもしれない」と述べました。これは、原発依存度は下げるべきだが、原発ゼロは現実的でないと考える経済人の中庸な考え方と言えそうです。

一方、ハロネン・フィンランド前大統領は、「二酸化炭素排出量を守るために原発の選択肢もあると思った。でも、長期的には間違いだったかもしれない。投資ができる金があるなら、再生エネに投資する方がいい」と発言。フィンランドは、安定したエネルギーがなければ冬の厳しい気候に耐えられず、ロシアのエネルギーへの依存度を下げる意味でも、原発推進が正しいとの結論を下した国です。その上で、世界で唯一、使用済み核燃料の最終処分場である「オンカロ」の建設を進めています。原発推進において、模範的な取り組みを成している国の元指導者も、再生可能エネルギーへのシフトを示唆していることは、重要です。

原発の100年後
現在の地球の経済・社会は、原発に依存しています。それは、これからも正しい姿なのでしょうか。100年後の原発はどうなっているのか。朝日新聞のフォーラムで、野田首相は基調講演をし、日本は「グリーンエネルギー革命の先頭に立つ」と訴えました。その言や良し。個々の政策判断や優先順位で迷走せず、衆院選挙対策などという小さなコップの中の争いへの対応に拘泥せず、「国家100年の計」に値するエネルギー政策を実現し、歴史に名を残す宰相となってください。


(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「就労支援36%実らず」

  • 会計検査院が、生活保護の一種である「技能習得費」について調べたところ、2009~2010年に23都道府県で給付された約1万3500件(計約6億9000万円)のうち、資格を取得していなかったケースが1270件(9.4%)あった。また、資格は取ったが、就職しなかったケースが約3680件(27.3%)に上った。合計で約36%の4950件、金額で計約1億2000万円が、就労に結び付いていなかった。
  • 技能習得費は、8つある生活保護の一つ「生業扶助」で認められている。自治体が就労意思などを確認し、資格ごとに7万4000円までを給付する。厚生労働省によると、2010年度の給付は、1万994件、計約5億5000万円。同費の給付に際して、就職の内定は条件ではなく、自治体側が必要性を認めれば給付される。
  • 自治体関係者によると、就労意思を後押しするため、それほど働く意思が強くない受給者に給付するケースも少なくないという。検査院は、多額の国費を投じる以上、技能習得費がより有効に活用されるべきだとし、通学や就職活動の状況をきめ細かく把握する仕組みの構築を厚労省に求めていく。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「ソフトバンク世界3位」

  • ソフトバンクは15日、米携帯3位のスプリント・ネクステルを201億ドル(1兆5709億円)で買収し、同社の70%の株式を取得すると発表した。孫社長は、「アメリカでもう一度、ゼロから挑戦を始める。いずれは世界一になる」と語る。
  • ソフトバンクとスプリントに、国内4位で既に買収に合意したイー・アクセスと合わせると、2012年1~6月期の携帯事業の売上高は2.5兆円で、AT&T(米国)と同規模の世界3位となる。1位はチャイナモバイル(中国)の3.3兆円、2位はベライゾン・ワイヤレス(米国)の2.8兆円。
  • ソフトバンクは、アップルのiPhoneをてこにした拡大戦略を米国でも応用する。世界3位となる規模を活かし、端末メーカーとの交渉を優位に進め、人気のある端末を安くそろえたい考えだ。しかし市場は、財務の悪化などを懸念しており、東京株式市場でのソフトバンクの株価は、買収が伝わってから2営業日で21%超の大幅下落となった。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「犯行声明『7件関与』」

  • インターネット上で7件の犯罪予告があっ事件に関連して、東京放送(TBS)に送られた「犯行声明」とみられるメールが、都内の弁護士にも送信されていたことが分かった。警視庁などは、今回の「犯行声明」は「かなり信憑性が高い」としており、発信元の特定などを進める。
  • 「犯行声明」で関与したとされる事件は、以下の通り。①6月29日:横浜市HPに小学校襲撃予告、②7月29日:大阪市HPに無差別殺人予告、③8月1日:日本航空に爆破予告メール、④8月27日:お茶の水女子大付属幼稚園に襲撃メール、⑤8月27日:有名タレント事務所に脅迫メール、⑥9月10日:ネット掲示板に伊勢神宮爆破予告、⑦9月10日:ネット掲示板に任天堂爆破予告―。
  • 「犯行声明」は、「警察に照合すれば私が本物の犯人であることの証明になる」と強調。事件に使われたウィルスのファイル名を明かしており、逮捕された男性2人のPCから発見されたものと同じであったことが確認されている。警察幹部は犯行声明について「警察に挑戦的な意図が感じられるメールだ」と分析している。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「新興国で最先端鋼板」

  • 新日鉄住金は2013年に、タイ、メキシコ、ブラジルで、最高強度の自動車用高性能鋼板の生産を開始する。車体軽量化のカギを握る先端素材であり、燃費向上に貢献する。輸出から現地生産に転換していく。
  • 新日鉄住金の自動車用鋼板の海外生産体制は、以下の通り。▽最高強度の高性能鋼板=「米国」「メキシコ(新工場建設中)」「ブラジル(既存の合併工場を利用)」「タイ(新工場建設中)」「欧州(技術供与)」、▽既存の高強度鋼板=「中国」「インド(建設中)」―。
  • 新日鉄住金が現地生産する最高強度の高性能鋼板は、これまで高強度とされた鋼板の1.6倍の強度がある。既存の鋼板から置き換えると、1~2割軽量化できる。日系自動車メーカーは、新興国で増産や部材の現地調達拡大を進めており、同社は迅速に供給できる体制作りを進める。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「国会所有財産手付かず」

  • 都心の一等地などにあり、利用が限られている国会所管の国有財産の処分が進んでいない。東日本大震災後には、復興財源の一部にするという考えも示されたが、放置されたままだ。
  • 売却されず放置されたままの衆参両院の所管財産は、以下の通り。▽衆院:「事務局分室(旧衆院事務総長公邸)=台帳簿価20億円」「法制局分室(旧衆院法制局長公邸)=同7億円」、▽参院:「速記者養成所=同14億円」「五反田分室=同10億円」「青梅橋寮=同4.9億円」「旧参院法制局長公邸=同3.7億円」「一番町職員宿舎=同2億円」―。
  • 国会改革問題に取り組む民主党の花崎衆院議員は、「施設はほとんど利用されていない。管理人として国会職員OBに人件費も払っている。放置は国民の理解を得られない」と批判する。消費増税で国民に負担増を求める一方で、足元の無駄の削減には甘い政府の対応の象徴だ。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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