【リグミの解説】
1面記事「トップ3」の比較
本日の新聞1面のトップ3記事です。
読売新聞: ①「就労支援36%実らず」、②「尼崎民家3人目遺体」、③「ソフトバンク、買収発表」
朝日新聞: ①「ソフトバンク世界3位」、②「床下に3人目の遺体」、③「原発のあり方、活発に討論」
毎日新聞: ①「犯行声明『7件関与』」、②「米市場に成長力」、③民家床下3人目遺体」
日経新聞: ①「新興国で最先端鋼板」、②「パナソニック6000億円確保」、③「経験が財産、企業を救う」
東京新聞: ①「国会所有財産手付かず」、②「大発見、研究が競争に」、③「本紙原発報道に菊池寛賞」
以下、この中から、注目の記事3つを取り上げます。
東京新聞のジャーナリズム
東京新聞が「菊池寛賞」を受賞した理由は、「福島第1原発事故がなぜ起きたのかを調査報道の手法で探り、情報を隠蔽しようとする政府・東京電力を告発し続けた『果敢なるジャーナリズム』に対するもの」。
確かに東京新聞の原発報道は、各記者が良く勉強しており、情報の具体性や深堀りにおいて、他紙を圧倒しています。ひとつの立場、主義に徹することの潔さ、わかりやすさも体現しています。しかし、客観的視点(サードビュー)を得るためには、原発推進派や当事者たちの立場や意見もより充実させることも大事だと思います。果敢なジャーナリズムの更なるレベルアップを期待します。
役所にも投資効率の発想を
読売新聞の「支援36%実らず」は、生活保護の施策のひとつである「技能習得費」が、十分に就労に役立っていないというもの。36%を問題にしていますが、逆に言えば63%は資格や技能を取得することで、就職できたわけで、これは相当に効果的な施策であるとも言えます。
支援が実らなかったケースを問題視し、フォローアップ体制を作ることは、一見正しそうですが、実際には効率が悪く、かえって人件費など経費増をもたらす結果になりかねません。それよりも、実を結んだ63%の中味を分析し、成功確率を上げる取り組みや仕組みづくりをした方が、投資効率は高くなる可能性があります。役所仕事に、「支援の成果100%」といった数値結果を求めると、投資効果や利益を度外視して、ヒトやカネを投入し続けます。
官公庁の取組に今必要なのは、「80-20の法則」だと思います。最初の20%の努力で全体の80%の成果が上がり、残りの20%の成果上げるのには、全体の80%の努力を要する、という経験則。80、20の比率はともかくとして、限られた経営資源(ヒト、モノ、カネ)で最大の成果を上げるためには、有用な考え方だと思います。
朝日地球環境フォーラム2012
朝日新聞の「原発のあり方、活発に討論」は、15日に開幕した「朝日地球環境フォーラム2012」の初日の様子を伝えていますが、これは注目できる内容です。朝日は、脱原発の姿勢を打ち出していますが、このフォーラムの参加者には、原発維持を掲げる経済団体のひとつ経済同友会の幹部も講演をしています。後援に経産省の名前もあります。
基調講演とパネルディスカッションの参加者は、アンマリ・スローター米プリンストン大教授、朴元淳ソウル市長、タルヤ・ハロネン・フィンランド前大統領、長島徹・経済同友会副代表幹事。中国共産党中央党校国際戦略研究所の馬小軍教授が出席したことも、時節柄注目しました。
朴ソウル市長は、福島原発事故を「地球市民全体に対する警告」とし、ライフスタイルを変え、原発全廃へ向けた取り組みを提唱しています。具体的に、2014年までに原発1基分のエネルギー消費を減らすプロジェクトを提案しているのは、わかりやすかったです。
経済界を代表する長島氏は、「必要最低限の原発を持ってもいいのではないか。事故でも惨事にならない技術を開発することが大切」「自然エネルギーがもっと活用されると、原子力はフェードアウトするのでは。ただし、何百年かかるかもしれない」と述べました。これは、原発依存度は下げるべきだが、原発ゼロは現実的でないと考える経済人の中庸な考え方と言えそうです。
一方、ハロネン・フィンランド前大統領は、「二酸化炭素排出量を守るために原発の選択肢もあると思った。でも、長期的には間違いだったかもしれない。投資ができる金があるなら、再生エネに投資する方がいい」と発言。フィンランドは、安定したエネルギーがなければ冬の厳しい気候に耐えられず、ロシアのエネルギーへの依存度を下げる意味でも、原発推進が正しいとの結論を下した国です。その上で、世界で唯一、使用済み核燃料の最終処分場である「オンカロ」の建設を進めています。原発推進において、模範的な取り組みを成している国の元指導者も、再生可能エネルギーへのシフトを示唆していることは、重要です。
原発の100年後
現在の地球の経済・社会は、原発に依存しています。それは、これからも正しい姿なのでしょうか。100年後の原発はどうなっているのか。朝日新聞のフォーラムで、野田首相は基調講演をし、日本は「グリーンエネルギー革命の先頭に立つ」と訴えました。その言や良し。個々の政策判断や優先順位で迷走せず、衆院選挙対策などという小さなコップの中の争いへの対応に拘泥せず、「国家100年の計」に値するエネルギー政策を実現し、歴史に名を残す宰相となってください。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「就労支援36%実らず」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「ソフトバンク世界3位」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「犯行声明『7件関与』」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「新興国で最先端鋼板」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「国会所有財産手付かず」