【リグミの解説】
IMFの危機感
本日の読売新聞と日経新聞の1面トップ記事は、「IMF委の共同声明」です。「世界経済は減速し、著しい不確実性と下振れリスクが残る」。東京で48年ぶりに開催されたIMF総会は、厳しさを増す世界経済への強い危機感を滲ませる共同声明で幕を閉じます。
リーマン・ショックに端を発する欧州金融危機。財政破綻の可能性のある国は、緊縮財政を目指すべきなのか、それとも持続的な成長を保持できる内容に留めるべきなのか。IMFは、財政再建という「軸足」(ピボット)を保ったまま、成長軌道へと旋回することを求めているように見えます。そうでないと、世界経済は、「つるべ落とし」に悪化する可能性がある―。失速回避に向け、各国の協調が正念場を迎えています。
日本の将来が見えない
そうした中で開催されたIMF総会のホスト国日本に、痛烈な批判が寄せられました。開催直前になって総会の最重要ポストである財務大臣を内閣改造で交代させたからです。英エコノミスト誌は、「Japan and the IMF:Poor host -Japan gives a lesson in how not to handle economic diplomacy(IMF総会、お粗末な主催国―こんな経済外交は展開してはならないという教訓を見せてくれた日本)」という記事を掲載しました(参照:日経ビジネスオンライン)。
IMF委は、「日本は今年度予算の財源確保と中期的な財政健全化の進展が必要」と指摘しました。赤字国債の発行は、まともな政権運営ができていれば、当然にできていなければならない足元の施策です。ホスト国として不備は、財務大臣の変更だけでないと思います。
48年前のIMF総会は、高度成長を続け、1980年代には「Japan as Number One」にまで上り詰める日本を予感させる場でした。党内融和や、選挙対策を優先する組閣をしたと批判される野田政権が主催した今回は、果たしてどういう位置づけになるのか。日本の「次の48年」が見えてきません。
「話が違う」
エコノミスト誌の日本批判をわかりやすくまとめてしまえば、「急に財務大臣を変えるとは、話が違うじゃないか」ということだと思います。今日の他紙の記事はテーマは別ですが、それぞれ「話が違う」という批判です。
朝日新聞は、沖縄へのオスプレイ配備に関して、米海兵隊の訓練計画を見ると、旧ヘリに比べてオスプレイの発着が急増するのは「話が違う」。
毎日新聞は、「iPS(人工多能性幹細胞)から世界で初めて心筋細胞を作り、重症の心臓病患者に移植した」と発表した森口尚史氏の記者会見の様子を伝えています。何も確証がない話を続ける森口氏にマスコミは振り回されているように見えます。「話が違う」は、新聞社の本音でしょうが、「虚偽のスクープ」を読まされた読者にこそふさわしい言葉です。
東京新聞は、東日本大震災の復興予算が被災地の再建に関係のない使途にどんどん流用されている問題の追求で、今度は全国の河川工事のケースを取り上げています。この記事を読んで、復興予算だけでなく、消費増税も将来、社会保障の充実ではなく、復興関係に流用できることを知りました。自公民3党合意で、附則が潜り込まされているためです。
「話が違う」は、まだまだ続編がありそうです。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「世界経済『成長が減速』」
- 国際通貨基金(IMF)の諮問機関である国際金融委員会(IMFC)は13日、共同声明を採択した。前回4月の「世界経済は徐々に回復している」との景気認識から、「大幅な不確実性と下方リスクが残っている」へと表現を改め、世界経済が減速していることに強い危機感を打ち出した。
- 先進国に対して、「可能な限り成長と親和的な財政政策を採るべきだ」と強調。各国の行き過ぎた緊縮財政が景気の足を引っ張り、金融不安を広げるといった「負の連鎖」を断ち切るために「断固として行動する必要がある」と述べ、構造改革や経済成長へ向けた取り組みを急ぐよう求めた。
- 日本に対しては、「今年度予算の財源確保と中期的な財政健全化のさらなる進展が必要」と指摘。特例公債法案の早期成立を促す国際的な「圧力」となった。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「夜・早朝の訓練3.7倍」
- 米軍普天間飛行場に配備された新型輸送機オスプレイ12機の訓練は、旧型の輸送ヘリに比べ、普天間飛行場では夜間早朝の使用が3.7倍、伊江島で2.3倍になる。それが米海兵隊の環境審査報告書から浮かび上がる実態だ。
- 沖縄での年間訓練回数の変化は、以下の通り。▽伊江島補助飛行場=旧型ヘリ2880回⇒オスプレイ6760回(2.3倍)、▽ブルービーチ訓練場=旧型ヘリ28回⇒オスプレイ1680回(60倍)、▽普天間飛行場(夜間早朝)=旧型ヘリ76回⇒オスプレイ280回(3.7倍)―。
- 最も負担が大きくなりそうなのは、伊江島だ。米軍佐世保基地の強襲揚陸艦の甲板にそっくりな滑走路があり、オスプレイが離着陸訓練をする。大城勝正・伊江村長は、「防衛政策に協力してきた。そのうえで訓練増に納得できるはずがない」と憤る。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「森口氏『論文にウソ』」
- 日本人研究者・森口尚史氏が、「iPS(人工多能性幹細胞)から世界で初めて心筋細胞を作り、重症の心臓病患者に移植した」と発表した件につき、記者会見をした。今年2月以降6件行ったとする手術について「昨年6月前半に1件だけ行った。ウソをついたことになる」と話し、「申し訳なかった」と謝罪した。
- 森口氏は会見で、昨年6月に行ったとする病院名を明確に答えなかった。手術に立ち会った医師名については「言わないでほしいと言われている」とし、手術の日時についても「確認しないとわからない」と、証拠となるような事実を明らかにしなかった。
- 森口氏が手術を行ったと主張したハーバード大学系列のマサチューセッツ総合病院や、森口氏が所属し「倫理委員会の暫定承認を得た」とするハーバード大でも、協力者は見つかっていない。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「財政再建、成長に配慮」
- 国際通貨基金(IMF)の諮問機関である国際金融委員会(IMFC)は13日、共同声明を採択した。世界経済の現状に強い警戒感を表明し、先進国に対して財政健全化などの構造改革を、成長に配慮して進めるよう要請した。ラガルドIMF専務理事は、日銀の追加金融緩和に期待感を示した。
- 共同声明のポイントは、以下の通り。▽「世界経済は減速し、著しい不確実性と下振れリスクが残る」、▽「欧州安定メカニズム(ESM)の発足を歓迎するが、さらなる措置が必要」、▽「米国は『財政の崖』の解消、債務上限の引き上げが不可欠」、▽「日本は今年度予算の財源確保と中期的な財政健全化の進展が必要」、▽「出資比率見直しなどIMF改革の緊急性を再確認。加盟国に手続き完了を求める」―。
- 声明は、新興国・途上国について、食料高に対応した金融引き締めが景気減速の原因と指摘し、食品以外の商品価格は下落するなど「リスクが複合している」との分析を示した。成長を維持するために、金融・財政政策を柔軟に活用する必要性を訴える。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「河川整備、7割被災地外」
- 東日本大震災の復興予算の使途の問題で、本年度の河川整備費の7割が、被災地以外に投じられていることが判明した。事業は北海道から九州まで全国で行われているが、岩手、福島両県はゼロだ。復興に名を借りたバラマキ型公共事業になっている。
- 本年度の復興予算が投じられている全国の河川は、以下の通り。▽北海道=十勝川(17億円)、▽宮城県=名取川、鳴瀬川、北上川(125億円)、▽新潟県=阿賀野川、信濃川(41億円)、▽石川県=梯川(11億円)、▽愛知県=庄内川(12億円)、▽鳥取県・島根県=斐伊川(19億円)、▽徳島県=吉野川、那賀川(48億円)、▽大分県=大分川、大野川(24億円)、▽熊本県=緑川、菊池川(37億円)、▽宮崎県=小丸川、大淀川(29億円)―。
- 消費税増税法でも、自民公の3党合意の結果、附則に「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に重点配分する」と規定された。五十嵐敬喜・法政大教授(東日本大震災復興構想会議・専門委員)は、「消費税引き上げ分も公共事業ばらまきに流用される恐れがある」と指摘する。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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