2012.10.12 fri

新聞1面トップ 2012年10月12日【解説】新聞のグローバル化

新聞1面トップ 2012年10月12日【解説】新聞のグローバル化


【リグミの解説】

ノーベル文学賞が1面トップ記事にならない理由
本日の読売、毎日、日経の3紙は、「ソフトバンクが米携帯3位買収」に関する記事です。ノーベル文学賞が中国の小説家、莫言
氏に決まりました。村上春樹氏が受賞していれば、全紙1面トップで大々的に祝賀報道をしていたでしょう。

莫言氏の受賞記事は、読売が社会面(38面)、朝日が1面の3番目記事(2番目はソフトバンク買収)、毎日も1面の3番目記事、日経は社会面(34面)、東京が1面の2番目記事です。新聞が何をどういう順番で速報するかの参考例となります。

グローバル視点からいけば、村上氏受賞で1面トップ、莫言氏なら社会面の一記事で掲載、という報道姿勢は、視野が狭いといえます。重要度の優先順位がローカルに閉じたままでは、グローバルに起きていることを見落とし、日本の未来像も正しく描けなくなります。ノーベル賞は、オリンピック報道とは違う視点があるべきではないでしょうか。


ソフトバンク買収記事のニュアンス
ソフトバンクの買収記事に関しても、事実関係の詳細度とニュアンスの角度に「違い」があり、興味深いです。

  • 読売新聞は、買収の発表を事実を中心に中立的に報道。買収対象の米スプリント社についても表面的な記述のみです。
  • 毎日新聞は、米携帯電話大手3社の一角を占めるスプリント社の経営が苦しく、他2社に水を開けられていること、買収発表で株価が上昇すればソフトバンクの買収が困難となる可能性もあること、そしてスプリント社も買収の不成立に含みを持たせる発言をしていることを報道し、本案件の問題点を指摘する報道です。
  • 日経新聞は、経済紙だけに一番ディール構造を詳細に報道。ソフトバンクが、M&Aで一気に世界3位のポジションを狙っている戦略的意図を紹介しています。

今回の買収案件も、一紙だけ読んでいては、かならずしも買収の背景や意図を十分に理解できません。情報の裏を取る意味でも、さまざまなメディアの報道内容を比較する「サードビュー」が必要です。同時に、新聞各紙はもっと独自色を出していく努力をすべきだと思います。

現状では、各紙は多少の「違い」があるにせよ、企業が発表する内容を基本的になぞるだけの報道にな
っています。もっと内情をえぐり、調査分析を加え、独自の付加価値をもったコンテンツを期待したいと思います。

新聞のグローバル化は可能か
ネットが速報性と双方向性(メディアと読み手のコミュニケーション)を担い、週刊誌や月刊誌、新書等が詳細分析と独自の調
査報道を担う中、新聞の役割はどこにあるのでしょうか。

「情報の一覧性」がひとつの答だと思います。ネットのひとつの問題は、情報がどんどんパーソナライズされていることがあります。検索エンジンの解析と、SNSの交流履歴等によって、興味の範囲や優先順位が勝手につけられ、狭められています。ユーザもまた、世界の全体性には関心が薄く、自分の興味を引く分野だけで満足する傾向があります。

こうした中、世界で何が
起きているか、優先順位をつけて見せる新聞は、貴重なメディアです。しかし、実際には十分にその役割を果たしていません。新聞もまた、問題意識や興味の範囲が狭くなっているからです。

戦略には、大まかに言って「単独主義」と「連携主義」があります。「自前、純血にこだわる」か、「外部との提携、M&Aを活用する」か、の違いです。ネットが世界を席巻し、各国の既成の新聞メディアが後退する中、日本の新聞はあいかわらず「単独主義」で淡々と仕事をこなしているだけです。

ソフトバンクのように、思い切った「連携主義」の戦略を打ち出し、世界の主要なクオリティーペーパーを買収するぐらいの気概がある新聞社はないのでしょうか。各国の主要紙と常時連携したグローバルレベルの「サードビュー」を提供できる新聞が登場すれば、ネットに対抗できる強力なメディアになると思います。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「米携帯3位を買収へ」

  • ソフトバンクは11日、米携帯電話3位の「スプリント・ネクステル」買収の検討に入った。スプリント社も同日、「ソフトバンクと交渉している」とのコメントを発表した。ソフトバンクは、株式公開買い付け(TOB)により、発行済み株式の少なくとも3分の2以上の取得を目指す方向であり、投資額は1兆円を超える見通しだ。
  • スプリント・ネクステルは、2005年にスプリント社がネクステル・コミュニケーション社を買収し誕生。契約数は約5600万件で、米国内全域でサービスを展開している。ベライゾン・ワイヤレス、AT&Tモビリティーと共に米3大携帯通信会社のひとつ。スプリントの時価総額は約151億ドル(約1兆1800億円)。
  • 世界の携帯通信事業の世界売上高(2012年1~3月)は、スプリント・ネクステルが6位で、ソフトバンクは7位。日本国内の携帯電話の契約数は既に人口を上回る規模で、ソフトバンクは、更なる成長の場として海外を目指す必要があると判断したとみられる。買収が実現すれば、通信業界の世界的な再編を加速させる可能性もある。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「ウィルス、日本人作成か」

  • ウィルスに感染していたPCからネット上に犯罪予告が書き込まれていた事件で、検出されたウィルスに日本語の文言が残っていた。作成過程で日本語が使われた可能性があり、事件に日本人が関与した疑いが強まっている。
  • 感染したPCは、国内の無料掲示板サイトに定期的にアクセスし、暗号化された指示を受け取る仕組みになっていた。プログラムの中の日本語は、暗号の解読処理に使われた。
  • 暗号文には、「爆破予告を書き込め」といった指示が含まれ、ウィルス感染したPCは指示通りに動いていた。暗号文の発信元は、海外サーバーを経由しており、発信元が特定されるのを避けるためと見られる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「米携帯3位買収を検討」

  • ソフトバンクは、米携帯電話3位の「スプリント・ネクステル」を買収する方向で検討に入った。株式公開買い付け(TOB)により、発行済み株式の少なくとも3分の2以上の取得を目指す方向であり、投資額は1兆円を超え、2兆円近くに上る可能性もある。
  • スプリント・ネクステルは、2005年にスプリント社とネクステル社が合併し誕生。契約数は約5600万件で、米国内全域でサービスを展開している。競争激化と、最新の高速通信規格「LTE」の投資負担などで、赤字経営が続く。3大携帯通信会社の一角ながら、「AT&T」「ベライゾン・ワイヤレス」に大きく引き離され、抜本的な経営改善が求めれている。
  • 国内契約数3位のソフトバンクは、スプリント買収が実現すれば、系列契約数は9000万件に達し、NTTドコモ(約6100万件)、KDDI(約3600万件)を上回り、米国1、2位の「AT&T」「ベライゾン・ワイヤレス」の各約1億件に迫る。スプリント社は、ソフトバンクとの交渉を認めるが、「合意に達する保証はない」とのコメントを発表。ソフトバンクの買収発表により株価が急上昇すれば、3分の2の獲得が難しくなる可能性もある。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「米携帯3、5位買収へ」

  • ソフトバンクは、米携帯電話3位の「スプリント・ネクステル」を買収する方向で検討に入った。今年度内にも発行済み株式の少なくとも3分の2超の取得を目指す。同時に、スプリントを通して米5位のメトロPCSコミュニケーションズの買収も検討している。想定される買収総額は、2兆円を超える。
  • スプリント・ネクステルは、1899年に創業。長距離通信で発展し、2005年にネクステル・コミュニケーションズを買収し現社名になった。2011年12月期の業績は、売上高336億ドル(約2兆6000億円)、最終赤字が28億ドル(約2200億円)で、5期連続の赤字。契約数は、5600万件。メトロPCSの契約数は、930万件。
  • ソフトバンクは、一連の買収を通して、携帯電話事業で年間6兆円の売上高を目指す。ソフトバンクの契約数3014万件に、既に買収合意しているイー・アクセスの413万件を加え、今回の買収対象のスプリントとメトロを合わせると、約1億件となり、契約数でAT&Tに匹敵する規模となる。売上高では、米ベライゾン・ワイヤレス、中国移動(チャイナモバイル)に次ぐ3位となる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「膨張続ける復興予算」

  • 政府は、2011年度から「5年間で少なくとも19兆円」が被災地の復旧・復興に必要な予算と見積もった。財源として、所得税や住民税などを臨時増税し、10兆5千億円をまかなうことにした。だが、2011年度から3年間だけで、政府が示した大枠を突破する22兆円に達する見通しだ。
  • 予算の使い方が問題視されている主の復興関連事業は、以下の通り。▽経産省:国内立地推進事業費補助金(2950億円)、▽経産省:中小企業組合共同施設等災害復旧事業(2003億円)、▽外務省:アジア太平洋・北米地域との青少年交流(72億円)、▽文科省:日本原子力研究開発機構の運営(42億円)、▽内閣府:沖縄の国道整備(34億円)―。
  • ある官僚は「復興予算は別枠で、いくらでも要求できるので、各省とも予算獲得に知恵を絞っている」と明かす。国民に臨時増税を課しておきながら、復興を名目に予算獲得に走る霞が関。2013年度も4兆円の概算要求が各省庁から出されている。こうした霞が関の姿勢は、到底許されない。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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