2012.10.10 wed

新聞1面トップ 2012年10月10日【解説】握りこぶしでは握手はできない

新聞1面トップ 2012年10月10日【解説】握りこぶしでは握手はできない


【リグミの解説】

読売新聞: 「EUと米国の自由貿易圏構想」について
グローバル化は、経済の魅力度の競争という側面が強く、国同士や地域間で自由貿易の協定を結ぶのが流れになっています。EUが米国に持ちかけようとしている包括的連携協定が実現すると、世界のGDPの5割近くになるそうです。


これに比肩しうるものは、アジア太平洋経済協力(APEC)でしょうか。日本、米国、中国、ロシア、韓国、オーストラリアを含む21ヵ国が参加し、GDPは世界の5割を超えます。日本で国論を二分しているTPPも、APEC域内の重層的な取り組みのひとつです。APEC自体が打ち出しているのが、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想です(参照:経済産業省)。

日中韓は、領土問題を契機に、経済関係も冷え込む事態になっていますが、世界の流れは、経済連携の強化にあります。経済が政治にもたらす最大の恩恵は、「Win-Win」か「Lose-Lose」しかない、という二者択一を迫るところにあります。握りこぶしでは握手はできません。握手してから公正なルールの下で正々堂々と戦うのが、21世紀型の国の在り方だと思います。

朝日新聞: 「北海道の節電」について
北海道は冬の暖房に使う電力が夏よりも多いため、政府は冬の節電要請を検討しています。原発が稼働しない状況では、最大10%の節電目標が必要になるかもしれない、と北海道電力の社長は発言しています。脱原発の立場を掲げる朝日新聞は、夏冬のピーク需要を押える「節電社会」を実現できれば、原発の再稼働は不要と示唆します。


原発依存度の高い関西電力は、夏のピーク需要に対応するため、大飯原発3、4号機を再稼働しましたが、実際には原発なしの発電能力の範囲内の需要だったようです。実質的に原発なしで「計画停電」もなく厳しい夏を乗り切れたのだから、冬も可能ではないか。これは普通の人の平均的な感覚だと思います。

電力会社と政府は、広報的な情報でなく、客観的なデータを詳細に開示し、事実がどうだったのかを説明すべきです。国民に再び節電を呼びかけ、協力を取り付けるのであれば、今夏にどういう「仮説」を立て「結果」はどうだったのかを検証し、発表することが大前提となります。

エネルギー政策は、机上の理論だけでなく、現実の施策の中で「仮説―検証」を繰り返す必要があります。その「学習プロセス」は、国民を巻き込んだものとすべきです。そして、原発の再稼働が必要となる場合にも、「ピーク時に限定した再稼働」という選択肢を排除すべきではないと思います。

東京新聞: 「原子力発電環境整備機構(NUMO)のアンケート」について
「使用済み核燃料の95%がリサイクルできます。どうしてもリサイクルできない約5%が高レベル放射性廃棄物として残ることを知っていますか」という質問は、国民を誤らせるものだと批判する記事です。「再利用できるのはわずか1%であり、99%はごみと化す可能性が高い」(東京新聞)からです。


東京新聞の指摘に対して、NUMOは、「設問に誤りはない」と繰り返すばかりだそうです。マスコミの糾弾と、相手のリアクションは、いつも噛み合いません。公開討論会のような「場」をネットなどで設け、公正は判断ができる専門家をジャッジにつけ、お互いに十分に「説明責任」を果たせると面白いのではないでしょうか。

NUMOのアンケートには、5万人が回答したそうです。ビジネスの感覚からすると、ありえないスケールであり、費用対効果をまったく考えていないのではないかと疑います。そこまでコストと手間をかけたのであれば、ここは公開討論で、そのメリットと成果を堂々と主張してもらいたいものです。

文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「EU・米、経済協定構想」

  • 欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は、EUと米国の自由貿易協定(FTA)を軸とした包括的連携協定の交渉開始をEU加盟国に提案する準備をしている。EUと米国は、世界のGDPの5割近くを占めており、実現すれば巨大な自由貿易圏の創設となる。
  • 欧州委は、EUの財政・金融危機を克服するために、自由貿易の拡大が「経済成長のエンジン」として不可欠と考えている。また、米国が太平洋重視を打ち出し、環太平洋経済連携協定(TPP)構想を推進していることへの焦りもあるとみられる。
  • 米国も、経済構造が似ているEUとの連携強化が実現すれば、比較的短期間で貿易拡大や雇用増加を生み出せるメリットがある。今回の動きにより、EUと日本との経済連携協定(EPA)の交渉が後回しにされる可能性もあり、日本の交渉関係者は警戒している。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「政府、冬の節電要請検討」

  • 政府は、北海道電力管内について、数値目標を立てて節電を求める方向で検討に入った。北海道は、暖房などで冬に最も電力を使うが、火力発電をフル活用することで、地域ごとに順番に電力を止める「計画停電」は見送る方向だ。
  • 北海道電の川合社長は、原発が稼働せず、火力発電にトラブルが相次いだ場合、「10%以上の節電が必要」との考えを示した。北海道以外の地域は、夏よりも電力使用量は減るため、数値目標は立てない。ただし、「夏に定着した節電を冬も続けるべきだ」(経済産業省幹部)として節電を呼びかける。
  • 現在稼働している原発は、関西電力大飯原発の2基だけであり、夏に続いて冬も原発なしで乗り切ると、「電力不足に備えて原発を再稼働する必要がある」とする電力業界や政府の根拠が揺らぐ。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「シリア政権通達『反体制派患者を拘束』」

  • シリアのアサド政権は、国内の病院で外傷患者の身元や負傷経緯を調査し、反体制派の活動と無関係であることが判明するまで、患者を院外に出さないよう病院側に指示していることが判明した。この指示は、政権側の情報機関から口頭で通達された。
  • 北部のアレッポやダマスカス郊外などで政府軍と反体制派の戦闘が続いており、巻き込まれた市民が病院に行くと、反体制活動と関係なくても「誤認逮捕」される可能性があり、「人々は病院に行くことを警戒している」(病院関係者)という。
  • 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、反体制デモの負傷者を治療した医師らが逮捕された事例もあり、「(アサド政権は)病院を反体制派の鎮圧の手段に使っている」と報告書に記している。シリア情勢の混迷は、市民生活に深刻な影響を与えている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「レアアース脱中国進む」

  • トヨタ自動車や三菱電機は、ハイブリッド車やエアコン用の高性能モーターに使う磁石に、レアアース(希土類)を使わない新型磁石の開発に乗り出す。新開発の磁石は、鉄の磁石にレアアースを混ぜなくても強い磁力を保てるものを目指す。
  • レアアース全体の中国依存度は5割程度まで低下している。しかしハイブリッド車や省エネ家電に使う「ジスプロシウム」はなお9割超と高い。各社は、レアアースの調達先の多様化や、使用料の削減、他のレアアースへの切り替えなどを進めてきたが、今回の取り組みは、まったくレアアースを使わない強力磁石の開発という新段階となる。
  • ダイキン工業、デンソー、愛知製鋼、NECトーキンなど11社・団体による「高効率モーター用磁性材料技術研究組合」が10月に発足し、2021年度の実用化を目指す。経済産業省は、開発費の補助や税優遇などで、この組合を支援する。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「再処理、誤った設問」

  • 原子力発電環境整備機構(NUMO)が2010年に全国規模で実施したアンケートで、「使用済み核燃料の95%がリサイクルできます。どうしてもリサイクルできない約5%が高レベル放射性廃棄物として残ることを知っていますか」と聞いていた。だが実際には、再利用できるのはわずか1%であり、99%はごみと化す可能性が高い。
  • アンケートでいう「「95%」は回収ウランがほとんどで、建前上は資源とされるが、使うあてはなく、ゴミと化す可能性が高い。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定を担うNUMOは、不正確なアンケートで誤った認識を広げる結果になっている。アンケートには、5万人を超える人が回答した。
  • NUMOになぜ不正確なアンケート設問をしたのか問い合わせたところ、「当時の経緯はわからないが、誤った情報を出すはずがない。(95%再利用の部分も)間違っていない」(広報担当者)と繰り返すのみで、是正する考えは示されなかった。NUMOは2002年に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の公募を始めたが、応募は1自治体のみ(後に撤回)で、選定のめどは立っていない。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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