2012.10.04 thu

新聞1面トップ 2012年10月4日【解説】原発事故の影響範囲は何㌔?

新聞1面トップ 2012年10月4日【解説】原発事故の影響範囲は何㌔?


【リグミの解説】

読売の記事について: 温室効果ガスの主因は何か
読売新聞の1面トップは、2012年度の温室ガス削減率が当初想定よりも大幅に悪化するという記事です。温室効果ガスの削減効果が高い原発が、ほぼ全基
停止しており、逆に温室効果ガスの排出量が多い火力発電所の稼働が高まっているため、としています。

2008~2012年度までの5
年間の実際の排出量は、年平均12億6780万トンでした。そのうち、電力各社でつくる電気事業連合会が購入し政府に寄付した排出枠は、2008~2011年度までの4年間で2億300万トンだそうです。年平均で、約4%分に当ります。それも2012年度は電力会社のコスト負担増などの問題で、拠出されない可能性を読売は示唆しています。

ここまで書くと、この記事は一貫しているように感じます。しかし疑問もあります。温室効果ガスの排出源は事業所、自動車、家庭などさまざまであり、そうしたセグメントごとの構成比と、排出量の推移のデータがあって、はじめて原発稼働停止と火力発電への依存度合いの高まりが主因かどうか判断できます。結論先にありき、の記事ではないか、生データの確認が必要です。

朝日新聞の記事について: 原発事故の影響範囲は何㌔が妥当なのか
朝日は、
原子力規制委員会が、原発事故の防災重点地域を、現在の半径8~10キロから30キロの拡大する新指針案を提示したことに関連する記事です。従来基準なら、45市町村で約72万5千人だった対象地域が、一気に135市町村と3倍増し、対象人口は480万人で6.6倍に達します。県庁所在地の茨城県水戸市と島根県松江市も対象に加わります。

原発は、3.11以前は「安全神話」で守られていました。しかし火力発電所と違って、電力需要が集中する大都市圏から遠く離れた立地です。住民の反対などで立地可能なエリアが限られる中、交付金と税金のメリットと引き換えに原発を引き受ける自治体は、経済力の乏しい地域という実態があるからです。しかし一番の理由は、原発が「事故に寛容でない」からです。確率は低くても、一旦事故が起きれば、影響範囲は巨大になる原発は、通常の事業とはまったく異なるもです。

その意味で、原子力規制委が原発事故防災重点地域を拡大したのは、適切な判断でしょう。しかし30キロで十分なのでしょうか。福島第1原発事故が起きたあと、米国は自国民に対して50マイル(80キロ)の避難勧告を出しました。最悪を想定するのが米国流とも言われましたが、実際にはこれでも楽観的な数値だったようです。

原発規制委は、ヨウ素を備蓄する範囲として50キロ圏を検討しており、これだけで対象人口は30キロ圏の3倍の1370万人に増えます。さらに大都市も対象に入る80キロ圏では、対象人口はどこまで膨れ上がるのでしょうか。

毎日新聞の記事について: 省庁の予算遂行プロセスにビジネスの観点を
復興予算が直接関係ない活動に配分されている、とする問題についてです。
企業活動においては、予算管理は基本中の基本で、「使途の確認(流用の禁止)」と「費用対効果の検証」と「事業環境の変化の見極め」を、少なくても月次サイクルで遂行します。予定でおりの活動を予算内で行う場合も、一定金額以上は稟議書を回して確認を取るなど、相互チェックが働くようにします。

しかし、国家の予算は、省庁という名の独立事業体に配分され、相互チェックも十分機能せず、本当は何に使われ、どんな効果があったか、さっぱりわかりません。民主党が鳴り物入りで行った事業仕訳で削減された予算も、大半は名前を変えて復活したと言われます。これでは、まるで伏魔殿のようです。

省庁の予算遂行プロセスには、構造的な問題があると思います。第3者機関による継続したチェックと、省庁自らが国民に「説明責任」を半期ごとに果たす、といった抜本的なを仕組みを埋め込む必要があるのではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「温室ガス削減率1%に悪化」

  • 環境省の試算によると、今年度の日本の温室効果ガスの排出量は、1990年度比1.0%減に留まる。関西電力大飯原発3、4号基を除くすべての原発が停止していることによる影響で、排出量が大幅に増える。
  • 京都議定書で義務付けられた2008~2012年度の5年間の削減は、平均8.0%となる見込みで、6.0%減の義務は達成する。リーマン・ショックによる経済活動の低迷の影響で、2009年度に13.7%減となったことが大きい。
  • 温室ガスは実際には基準年より増えているが、海外から購入した排出枠と、国内森林が吸収する温室効果ガスで相殺し、全体で8.0%減となる。試算には、電力各社で作る電気事業連合会が購入し、政府に寄付した2011年度までの4年分の排出枠も含まれている。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「原発防災域に480万人」

  • 原子力規制委員会は3日、新しい原子力災害対策指針案に基づく防災重点区域を明らかにした。これまで原発から半径8~10キロだった防災重点区域のめやすを30キロに拡大した。対象市町村は、21道府県135市町村で、対象人口は480万人に上る。
  • 30キロ県内で人口が多い上位3原発は以下の通り。①日本原子力発電東海第2原発(茨城県)=93万1537人、②中部電力浜岡原発(静岡県)=74万4219人、③中国電力島根原発(島根県)=44万802人。
  • 規制委の田中委員長は、防災計画を見直し、体制を整備することが、原発再稼働の前提との考えを示している。提示された指針案は、原発50キロ県内の住民を対象に、安定ヨウ素剤の備蓄を検討する必要があるとする。対象人口は、約1370万人となる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「復興予算使途調査へ」

  • 衆院決算行政監視委員会の理事らが3日、東日本大震災の復興予算の使途について、財務省から説明を受けた。同委は、復興予算が被災地以外で震災対策などとして支出されていることは、「うやむやにできる問題ではない」とする。
  • 復興予算の使途で問題視されている主な事業は以下の通り。①国内立地推進事業費補助金(経済産業省)=2950億円、②日本原子力研究開発機構運営費交付金など(文部科学省)=107億円、③アジア大洋州、北米地域との青少年交流(外務省)=72億4700万円、④鯨類捕獲調査安定化推進対策(農林水産省)=22億8400万円、⑤国税庁施設費(財務省)=5億6000万円。
  • 復興予算の主な財源には復興増税が充てられており、平野復興相も調査に入っている。城島財務相は「来年度の予算編成に向けて必要な事業を厳しく限定していく」と語った。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「アジアの内需開拓 ~ニッポン金融力会議

  • 日本再生につながる金融の在り方を探る「ニッポン金融力会議」の第1回トップ・シンポジウムが開催された(主催・日本経済新聞社)。3メガバンクと2大証券会社のトップが一堂に会し、アジア内需の取り込みと、日本経済の成長力強化への貢献について語った。
  • 金融機関トップの主な発言は以下の通り。三菱UFJ・平野頭取=「日本企業のアジア進出を現地でサポートできる分野を拡大する」、三井住友・国部頭取=「社会基盤の整備を金融面から支えていく」、みずほ・佐藤社長=「アジア債券市場発展へ中心的な役割を担う」、野村・永井CEO=「取引先がアジアの内需を取り込む活動を支援する」、大和・日比野社長=「日本の金融資産とアジアの成長を結び付ける」。
  • 日本経済新聞社は、日本経済の再生には経済の血液である金融の力を生かす必要がある、との観点から「ニッポン金融力会議」を立ち上げ、提言や情報を発信していく。シンポジウムや個人向けセミナーも開催する。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「交渉の顔交代、候補地住民反発」

  • 内閣改造で、横光克彦氏が環境副大臣を退任した。横光氏は、東京電力福島第1原発事故で発生した「指定廃棄物」の最終処分場の選定を指揮してきた。
  • 横光氏は、9月に栃木県矢板市と茨城県高萩市を候補地に選んだが、事前に地元と協議せず結果だけを伝え、批判を浴びた。両候補地で反対運動が広がっており、責任者交代に懸念や不満の声が上がっている。
  • 環境省は、住民説明会で安全性などの理解を求めていく構えだが、「交渉の顔」が交代する影響は否めない。横光氏は、選定問題が暗礁に乗り上げたまま退任することについて、「残念です・・・」と語る。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ