【リグミの解説】
読売の記事について: 温室効果ガスの主因は何か
読売新聞の1面トップは、2012年度の温室ガス削減率が当初想定よりも大幅に悪化するという記事です。温室効果ガスの削減効果が高い原発が、ほぼ全基停止しており、逆に温室効果ガスの排出量が多い火力発電所の稼働が高まっているため、としています。
2008~2012年度までの5年間の実際の排出量は、年平均12億6780万トンでした。そのうち、電力各社でつくる電気事業連合会が購入し政府に寄付した排出枠は、2008~2011年度までの4年間で2億300万トンだそうです。年平均で、約4%分に当ります。それも2012年度は電力会社のコスト負担増などの問題で、拠出されない可能性を読売は示唆しています。
ここまで書くと、この記事は一貫しているように感じます。しかし疑問もあります。温室効果ガスの排出源は事業所、自動車、家庭などさまざまであり、そうしたセグメントごとの構成比と、排出量の推移のデータがあって、はじめて原発稼働停止と火力発電への依存度合いの高まりが主因かどうか判断できます。結論先にありき、の記事ではないか、生データの確認が必要です。
朝日新聞の記事について: 原発事故の影響範囲は何㌔が妥当なのか
朝日は、原子力規制委員会が、原発事故の防災重点地域を、現在の半径8~10キロから30キロの拡大する新指針案を提示したことに関連する記事です。従来基準なら、45市町村で約72万5千人だった対象地域が、一気に135市町村と3倍増し、対象人口は480万人で6.6倍に達します。県庁所在地の茨城県水戸市と島根県松江市も対象に加わります。
原発は、3.11以前は「安全神話」で守られていました。しかし火力発電所と違って、電力需要が集中する大都市圏から遠く離れた立地です。住民の反対などで立地可能なエリアが限られる中、交付金と税金のメリットと引き換えに原発を引き受ける自治体は、経済力の乏しい地域という実態があるからです。しかし一番の理由は、原発が「事故に寛容でない」からです。確率は低くても、一旦事故が起きれば、影響範囲は巨大になる原発は、通常の事業とはまったく異なるもです。
その意味で、原子力規制委が原発事故防災重点地域を拡大したのは、適切な判断でしょう。しかし30キロで十分なのでしょうか。福島第1原発事故が起きたあと、米国は自国民に対して50マイル(80キロ)の避難勧告を出しました。最悪を想定するのが米国流とも言われましたが、実際にはこれでも楽観的な数値だったようです。
原発規制委は、ヨウ素を備蓄する範囲として50キロ圏を検討しており、これだけで対象人口は30キロ圏の3倍の1370万人に増えます。さらに大都市も対象に入る80キロ圏では、対象人口はどこまで膨れ上がるのでしょうか。
毎日新聞の記事について: 省庁の予算遂行プロセスにビジネスの観点を
復興予算が直接関係ない活動に配分されている、とする問題についてです。企業活動においては、予算管理は基本中の基本で、「使途の確認(流用の禁止)」と「費用対効果の検証」と「事業環境の変化の見極め」を、少なくても月次サイクルで遂行します。予定でおりの活動を予算内で行う場合も、一定金額以上は稟議書を回して確認を取るなど、相互チェックが働くようにします。
しかし、国家の予算は、省庁という名の独立事業体に配分され、相互チェックも十分機能せず、本当は何に使われ、どんな効果があったか、さっぱりわかりません。民主党が鳴り物入りで行った事業仕訳で削減された予算も、大半は名前を変えて復活したと言われます。これでは、まるで伏魔殿のようです。
省庁の予算遂行プロセスには、構造的な問題があると思います。第3者機関による継続したチェックと、省庁自らが国民に「説明責任」を半期ごとに果たす、といった抜本的なを仕組みを埋め込む必要があるのではないでしょうか。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「温室ガス削減率1%に悪化」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「原発防災域に480万人」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「復興予算使途調査へ」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「アジアの内需開拓 ~ニッポン金融力会議」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「交渉の顔交代、候補地住民反発」