2012.10.01 mon

新聞1面トップ 2012年10月1日【解説】人事はメッセージ

新聞1面トップ 2012年10月1日【解説】人事はメッセージ


【リグミの解説】

内閣の人事案
今日の読売、朝日、毎日、日経の各紙はそろって、第3次野田内閣の人事予想です。各紙の見出しに踊る人名を文字の大きさ順にしてみました。


読売: ①財務相=城島氏、②国家戦略相=前原氏、③郵政改革相=下地氏、④文科相=田中真紀子氏
朝日: ①財務相=城島氏、②国家戦略相=前原氏、③文科相=田中真紀子氏、④郵政改革相=下地氏
毎日: ①文科相=田中真紀子氏、②環境相=長浜氏、③厚労相=三井氏
日経: ①財務相=城島氏、②総務相=樽床氏、③国家戦略相=前原氏、④文科相=田中真紀子氏


試しにポイント化して各氏の注目度をランク付けしてみました(各紙で1位=4ポイント、2位=3ポイント、3位=2ポイント、4位=1ポイントで合計ポイントを出す)。結果は以下の通りとなりました。

城島氏=12ポイント、前原氏と田中真紀子氏=8ポイント、下地氏と長浜氏と樽床氏=3ポイント、三井氏=2ポイント。

城島氏の注目度が一番なのは、安住財務相の後任として、消費増税法につづく財政再建の大任に就くからでしょうか。前原氏は元党代表で、力のあるグループを率いており、早々に野田再選を支持したことへの論功行賞的人事に注目したからでしょうか。田中真紀子氏は、日中国交正常化を果たした田中首相(当時)の娘で、日中関係へのメッセージ性と、衆院選挙の「顔」の期待もあっての人事、という見立てでしょうか。

人事はメッセージ
人事は、組織のトップが発する最も明確なメッセージだと言われます。誰を重用し、誰を退けるか。どのような背景を持った人
が要職につくのか。あるいは、衆目の一致する実力者が就くポストはどこか。人事の当事者たちは、登用や異動に一喜一憂し、その他の傍観者たちは、外野であれこれと人事の意図について詮索をします。

米GE社の名経営者と言われたジャック・ウェルチ氏は、CEOに就任した当初、新しい経営方針をいくら言葉として発しても、幹部社員を含めて、真剣に聞く者はほとんどいなかったと言います。そこで、思い切った改造人事を断行しました。その結果、社員たちがトップは本気だと気付き、真剣に動き始めたそうです。

そういう観点で今回の野田改造内閣の人事案を見ると、幹事長、副総理、官房長官が変わらず、主要閣僚の経産相、外務相も変更がなく、路線継承の印象が強いです。選挙の「顔」を期待されるのが、政調会長になった細野氏、文科相の田中真紀子氏、幹事長代行の安住氏あたりでしょうか。全体として、民主党が与党として何をしたいのかが、素人目にはあまり伝わってきません

ジャック・ウェルチの4E
ウェルチさんの人事の要諦は、人々の心に「火」を付けることだったと思います。有名な「3つのE」です。①「Energy=仕事を
成し遂げる熱意」、② 「Energize=周囲を元気づける能力」、③「Edge=困難な問題にも決断を下す能力」。ウェルチさんは後に、4つ目の「Execute=実行力」を追加しました。こういう人たちが活躍する組織は強いだろうと想像させるだけの「言葉の力」を感じさせます。

しかし、ウェルチさんの本当のすごさは、人材育成にあったと思います。GEの伝統である社内教育制度を強化し、自らもCEOとしての職務の大半の時間を、人事判断と後継者の育成に充てました。本当に強い組織は、これはという人たちが集まっています。元々優秀だったのか、その組織で潜在能力を開花させたのか、いずれにしても、トップのワンマンショーではない底力をもっています。

言葉力が引き出すフォロワーシップ
トップのリーダーシップは、実は下に就く者たちが決めています。やる気のある優秀なチームが、リーダーの力を引き出すフォ
ロワーシップを発揮するから、組織は結果を残せるのです。日本では、強いことを言うカリスマ的な政治家を国家のリーダーに据えたいという願望が強くなっているように見えます。しかし、カリスマは偶像イメージでしかありません。

今本当に必要なのは、「説明責任を果たす政治」「約束を守る政治」「決められる政治」です(「リグミの解説2012.9.25」)。それはカリスマ首相が勝手に決めて、一方的に進めてしまう政治ではありません。構想力と実行力のある強力な内閣が推進エンジンとなり、それをサポートする与党が一体となって進める政治です。

ウェルチ氏の「4E」が人々の記憶に残るのは、気の利いたキャッチコピーだったからではありません。本気で人々の心に「火」を付け、一貫して粘り強く実行し、組織で成果を出し続けたからです。国民は、フォローするに値する政治家、政党を求めています。野田首相と民主党が、与党としての矜持(きょうじ)を示すラストチャンスです。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「財務省、城島氏有力」

  • 野田首相は10月1日に、3度目の内閣改造を行う。民主党から離党者が続出し政権基盤が揺らいだため、衆院選をにらんだ挙党体制の布陣を敷く方針だ。
  • 予想される留任者は以下の通り。岡田副総理、藤村官房長官、玄葉外務相、枝野経済産業相、平野復興相、森本防衛相、羽田国土交通相、郡司農相。
  • 新入閣の予想は以下の通り。財務省=城島・前国会対策委員長、国家戦略相=前原・前政調会長、総務相=樽床・前幹事長代行、環境相=長浜・官房副長官、法相=田中慶秋・衆院議員、文部科学相=田中真紀子・元外相、など。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「財務省に城島氏」

  • 野田首相は10月1日に、第3次改造内閣を発足させる。輿石幹事長、細野政調会長、藤村官房長官を交えて協議をし、内閣・党役員陣を詰めた。
  • 主な留任者は以下の通り。岡田副総理、藤村官房長官、森本防衛相、玄葉外務相、枝野経済産業相、羽田国土交通相、平野復興相、郡司農林水産相。
  • 初入閣は、総務相=樽床・前幹事長代行、厚生労働相=三井・前政調会長代理、環境省兼原発相=長浜・官房副長官、国家公安委員長兼消費者相=小平・衆院議院運営委員長、金融相=中塚・内閣府副大臣。文部科学相に田中真紀子・元外相、郵政民営化相に国民新党の下地幹事長を起用する。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「文科相に田中真紀子氏」

  • 野田首相は10月1日に、3回目の内閣改造を行う。首相は30日、輿石幹事長と会談し、さらに藤村官房長官、細野政調会長、安住幹事長代行、山井国対委員長を加えて最終調整の打合せをした。
  • 留任者(留任理由)は以下の通り。岡田副総理(税と社会保障の一体改革の推進役)、枝野経産相(「2030年代原発ゼロ」方針の決定を主導)、玄葉外相(日中関係などの懸案に対応)、平野復興相(震災復興を担当)、藤村官房長官(女房役として首相を支える)。森本防衛相、羽田国土交通相、郡司農相も留任。
  • 文部科学相に田中真紀子・元外相を起用することが内定した。他に、環境相に長浜・官房副長官、法相兼拉致問題担当相に田中慶秋・党副代表、厚生労働相に小平・衆院議院運営委員長を起用する。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「財務・城島氏、総務・樽床氏」

  • 野田首相は10月1日に、第3次改造内閣を発足させる。首相は30日、閣僚人事などで輿石幹事長らと会談した。交代する閣僚は10人以上となる大幅改造を行う。
  • 内閣の中心となる布陣は変えず、政権の基本路線を維持する。留任者:岡田副総理、藤村官房長官、玄葉外相、森本防衛相、枝野経済産業相、羽田国土交通相、郡司農相、平野復興相。
  • 法相=田中慶秋・党副代表、国家公安委員長=小平・衆院議院運営委員長、金融相=中塚・内閣府副大臣、厚生労働相=三井・政調会長代理。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「震災障害者の警告 ~生き抜く 首都大震災」

  • 阪神大震災で負傷し、体に障害が残った「震災障害者」が、悲痛な声を上げている。2010年に兵庫県と神戸市が始めた調査で、その実態が明らかになった。体に機能障害が残ったとされるのは328人、うち100人以上が既に他界している。
  • 脊髄損傷の野田政吉さんは、倒れてきた家具類で体の自由を奪われた。「震災来たらどうしようかって、もう言えんね。多くを無くした。ただ、身の回りだけはきちんとしておきたい。自分で自分を守るしかないから」と語る。
  • 岡田一男さんは、家屋倒壊で生き埋めになり、圧迫され壊死した部位から毒性物質が全身に回るクラッシュ症候群になり、脚に後遺症が残った。「自分の家のどこが一番強度があるか、知っておくことが命を助ける」と語る。首都圏地震を懸念し、「地震が来るって意識するのと、ノーガードでやられるのでは随分違う」と、普段から想像力を働かせることをアドバイスする。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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