2012.09.27 thu

新聞1面トップ 2012年9月27日【解説】しなやかな日本

新聞1面トップ 2012年9月27日【解説】しなやかな日本


【リグミの解説】

自民党総裁選報道の比較
本日の新聞1面は、読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙すべて自民党総裁選の報道です。安倍元首相が新総裁となりました。決選投票となったのは40年ぶり、第1回投票で2位だった候補の逆転勝利は56年ぶり、そして総裁経験者の再選は初めて、と自民党としては異例づくめのようです。

各紙のスタンスを比較する「サードビュー」の一助として、1面解説と社説のタイトルをご覧ください。

読売: 「責任与党の矜持を」(1面解説)、「政権奪還への政策力を高めよ」(社説)
朝日: 「政権の枠組み、民事は示せ」(1面解説)、「不安ぬぐう外交論を」(社説)
毎日: 「民主より『まし』なのか」(1面解説)、「『古い自民』に引き返すな」(社説)
日経: 「危機打開へ仕切り直しを」(1面解説)、「安倍新総裁は『決める政治』を進めよ」(社説)
東京: 「衆院選で国民が審判」(1面解説)、「表紙を変えただけでは」(社説)

安倍新総裁の評価
安倍新総裁に対する評価のひとつの軸は、対外強硬姿勢をどう判断するかです。中国、韓国との領土問題により、強い日本を標榜する安倍氏に追い風が吹いた面があったと思います。中国と韓国に対して、強硬一辺倒の姿勢では問題を解決できないことを、すべての新聞が指摘しています。その上で、その懸念の度合いを、仮に「軽度=1」「中位=3」「重度=5」に分類すると、以下の通りになるようです。

読売=1(軽度)、日経=2(やや軽度)、東京=3(中位)、毎日=4(やや重度)、朝日=5(重度)

2大政党制の評価軸
日本が成熟した民主主義を目指す上で導入を図ってきた2大政党制は、国家の今回の軸や方向性はぶらない範囲で、2つの異なる立場の政党が政権を競い合う、というものです。モデルはアングロサクソン系の国家の政治体制で、米国の「共和党」対「民主党」、英国の「保守党」対「労働党」が参照されます。

この枠組みを前提に、東京新聞は、民主党も自民党も「保守・タカ派」で差異がないと批判的な解説をしています。保守・タカ派は「自助」を強調し、リベラル・ハト派は「公助」を重んじるという比較をしています。やや類型化され単純化された見方ですが、2大政党制を考える上で基本となる枠組みだと思います。

一方日本では、第3極として急浮上している日本維新の会の橋下大阪市長も、「保守・タカ派」の色彩が濃いため、国全体が右傾化しているように見えます。しかし、国論を二分している原発問題で、脱原発を求める人々は、本来は「リベラル・ハト派」の傾向が強いと思われます。日本が本当に成熟した民主主義国家になっていくためには、エネルギー、外交、社会保障などの重要政策課題で、政党間の「違い」がわかり、一貫した「主義」で政策を掲げ、遂行することが大事です。

日本の悪しき伝統
そのための大前提として、日本の悪しき伝統を変える必要があります。

第1の視点が「個人の失敗に不寛容な日本」です。日本で革新的なビジネスがなかなか浮上してこないのは、リスクを取り失敗すると、2度と浮上できないからです。失敗に対してまことに不寛容です。安倍さんが総裁になり、さらに首相に返り咲くことは、日本が「失敗から学んだ個人を再登用できる柔軟な国」というメッセージになります。安倍さんは、狭量な主義主張に固執せず、日本人全体の可能性を引き上げる公人になっていただきたいと思います。

第2の視点が「みそぎをして過去に蓋をする日本」です。これはある意味、第1の視点の裏返しです。問題を起こした個人は切り捨てられますが、システムの中心にある組織は、大きな問題を起こしても常に防衛されるのが日本のやり方です。自民党は、原発政策を推進してきた母体政党です。福島第1原発の事故をどう捉えるのか。さらに核廃棄物の処理をどうするのか。自民党は、自分たちの犯した失敗や「未必の故意」を真摯に反省し、新しい政策軸を明確に打ち出さない限り、国家を運営する資格はないと言えます。

「強さ」よりも「しなやかさ」を
安倍氏は、政権を一度投げ出した過去を批判されながら、外交上の問題に後押しされるように、首相に返り咲く可能性が高い位置に躍り出ました。自民党自体も、民主党の「敵失」に乗じて政権返り咲きを果たせそうな環境となり、意気が上がっています。野田さんがダメだから安倍さん。民主に期待したけど失敗したから自民に戻そう。これでは何も変わりません。ここは、日本の悪しき伝統を脱する好機にしなければなりません。

安倍さんは「強い日本」を打ち出していますが、強さはもろさと一対です。本当に必要なのは、私たちの内側にあるソフトパワーを引き出す「しなやかな日本」です。


(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 自民総裁に安倍氏

  • 26日に行われた自民党総裁選で、1回目の投票で2位だった安倍晋三元首相が決選投票の末、新総裁に選ばれた。決選投票となったのは40年ぶり。逆転勝利は56年ぶり。
  • 第1回投票の結果は以下の通り(カッコ内は国会議員票、党員票)。①石破氏199票(34、165)、②安倍氏141票(54、87)、③石原氏96票(58、38)、④町村氏34票(27、7)、⑤林氏27票(24、3)。決選投票の結果は以下の通り(国会議員票のみ)。①安倍氏108票、②石破氏89票。
  • 安倍氏は、党員票の過半数を獲得した石破氏を幹事長などの重要ポストで処遇する考え。自民党は安倍新総裁のもとで、2009年以来の政権復帰を目指す。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 自民総裁に安倍氏

  • 26日に行われた自民党総裁選で、安倍晋三元首相が決選投票の末、石破茂前政調会長を破り、第25代総裁に選ばれた。総裁経験者の再選出は初めてのケースとなる。
  • 第1回投票の結果は以下の通り(カッコ内は国会議員票、地方票)。①石破氏199票(34、165)、②安倍氏141票(54、87)、③石原氏96票(58、38)、④町村氏34票(27、7)、⑤林氏27票(24、3)。決選投票の結果は以下の通り(国会議員票のみ)。①安倍氏108票、②石破氏89票。
  • 安倍氏は総裁選後に「新総裁の使命は日本を取り戻し、政権を奪取することだ」と述べた。党員の過半数の票を獲得した石破氏を要職で起用する考えを表明しており、幹事長起用を検討している。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 自民党総裁、再び安倍氏

  • 26日に行われた自民党総裁選で、安倍晋三元首相が決選投票の末、石破茂前政調会長を破り、第25代総裁に選ばれた。安倍氏の総裁就任は5年ぶり。
  • 第1回投票の結果は以下の通り(カッコ内は国会議員票198票の内訳、地方票300票の内訳)。①石破氏199票(34、165)、②安倍氏141票(54、87)、③石原氏96票(58、38)、④町村氏34票(27、7)、⑤林氏27票(24、3)。決選投票の結果は以下の通り(国会議員票のみ)。①安倍氏108票、②石破氏89票。
  • 安倍氏は総裁選後に「5年前に突然、首相を辞任し迷惑をかけた。責任をしっかり胸に刻み、政権奪還に向けて全力を尽くしていく」と述べた。地方票の過半を獲得した石破氏を「選挙の顔」として要職に起用する方針。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 自民総裁に安倍元首相

  • 26日に行われた自民党総裁選で、安倍晋三元首相が第25代総裁に選ばれた。1回目投票で地方票の過半を獲得しトップに立った石破前政調会長は、全体の過半数には届かず、決選投票で破れた。
  • 第1回投票の結果は以下の通り(カッコ内は国会議員票、党員・党友票)。①石破氏199票(34、165)、②安倍氏141票(54、87)、③石原氏96票(58、38)、④町村氏34票(27、7)、⑤林氏27票(24、3)。決選投票の結果は以下の通り(国会議員票のみ)。①安倍氏108票、②石破氏89票。
  • 安倍氏は、野田政権を秋の臨時国会で衆院解散・総選挙に追い込む考えを強調した。地方票の過半を獲得した石破氏を要職に起用する方針。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 民も自も「タカ派」

  • 26日に行われた自民党総裁選で、安倍晋三元首相が新総裁に選ばれた。代表選で再選した民主党の野田首相と共に、2大政党の顔が決定し、次の衆院選挙の構図が固まった。
  • 民主党も自民党も、党内で最も保守的でタカ派のリーダーを選んだ。野田政権は「自民党野田派」と皮肉られている。自民党の総裁候補は、街頭演説の約半分を外交・安保に費やし、「自衛隊の能力向上」や「集団的自衛権」などの言葉が飛び交った。米ワシントンポスト紙と英エコノミスト誌は、日本の右傾化を指摘し、リベラルの不在に警鐘を鳴らす。
  • 国民の手が届かないところで決まった民主と自民のタカ派・保守路線。民意の審判を受けるのは、次の衆院選だ。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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