2012.09.26 wed

新聞1面トップ 2012年9月26日【解説】日中の建て前と本音

新聞1面トップ 2012年9月26日【解説】日中の建て前と本音


【リグミの解説】

中国の建前と本音
本日の読売新聞の1面トップは、尖閣諸島問題を打開するため開催された、日中の外務次官による協議の様子を伝える記事です。詳細は明らかにされていませんが、相当に厳しい応酬があったようです。昼食を含めて4時間に及ぶ会議でしたが、双方が自分の立場(=建前)を主張する内容だったようです。外相会談を日本側が提案し、中国側が回答を保留したことことからも、次につながる一手が見つからなかったことがうかがえます。

ただ、中国側が、間接的な表現で、1978年に鄧小平副首相(当時)が言及した尖閣諸島の「棚上げ」に戻ることを求めたことに注目しました。少なくても中国外務省レベルでは、これ以上対立が激化することを回避したい、との意向(=本音)があるのでしょう。

日本に伝わる情報の多くは、中国共産党の指導者の中にある強硬論や、人民解放軍の動向など、対立を煽るかのような内容が少なくありません。日本国内も、戦争となる可能性を想定した強硬な議論も散見され、まことにきな臭い雰囲気が漂っています。そんな中、外交の現場で、互いが折り合える現実的な着地点を探ることは、大切です。建前から本音にギアを入れ替えるタイキングを探るのが、実務者の役割ですので、粘り強い交渉を期待したいです。

日本の建て前と本音
ただ、日本が尖閣国有化を取りやめることは、尖閣の実効支配の事実を放棄するメッセージとなる可能性があり、現状では相当に困難だと思います。同様に、中国側も、日本が国有化を取りやめただけで、以後尖閣問題を「棚上げ」にすることを国内世論が許すとは考えにくいからです。2010年の海上保安庁と中国漁船の衝突事件以来、火種を抱え続けてきた尖閣問題は、石原都知事が引き金を引いた国有化の動きで、「覆水盆に返らず」の状況になりました。

尖閣諸島問題の「棚上げ」は、領土という困難な問題を国家レベルの危機的関係に高めない知恵でした。しかし、「日中友好」という「建前」同様に、「棚上げ」は賞味期限を過ぎたと思います(参照「リグミの解説9月24日」)。昨日の「リグミの解説」で、民主党党首に再選された野田首相に対して、「説明責任を果たせる政治」「決められる政治」「約束を守る政治」の3点セットの重要性を指摘しました。これは、日中韓の領土問題にも、当てはまります。

韓国に対しては、「竹島の領土問題」を主張し、中国に対しては「尖閣諸島の領土問題は存在しない」と主張することは、明らかに矛盾であり、これほど対立が先鋭化した以上、「説明責任を果たしていない政治」の典型と言わざるを得ません。

東アジアにおける「次の一手」
新しい時代の外交がどういうものであるべきか、今はまだ見えて来ていません。新しい形の帝国主義が世界中で台頭してきている、という指摘も論壇などで成されています。そうした中で、紛争を回避するにはどうしたらいいのでしょうか。「棚上げ」をしても、日中韓の構造問題を解決しない限り、時限爆弾を抱え込ままに等しく、真の安定からはほど遠いものです。

人類は、喧嘩を回避するために社交を、戦争の代わりになるものとしてスポーツを発明しました。社交もスポーツも、明確なルールがあり、評価し判定する第3者がおり、大勢の人が舞台や土俵に上り、一緒に祭りのように楽しみます。次は、外交がそうした舞台や土俵を作り、2国間のつばぜり合いを、衆人環視のゲームやスポーツに変容させ、ルールに基づいた着地点を合意する時代になれないでしょうか。

新しい時代のグローバルな「衆知主義」(多国間で知恵を出し合い、チームプレイで問題解決する仕組み)を、模索すべき時期に来ています。綺麗事の理想論や夢想ではなく、戦争は「Lose-Lose」に終わるというリアリズムに基づいて、人類の進歩を愚直に追求する。今、欧州危機に揺れるEUですが、欧州における戦争を回避しようと言う理想のために、何十年にも渡って取り組んできたEUの歴史は、尊い先例です。東アジアが人類に提示できる「次の一手」が、きっとあるはずです。


(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 日中、打開へ協議継続

  • 日中の外務次官が尖閣問題について会談をした。日本側は外務省の河相周夫次官、中国側は張志軍筆頭次官。会談場所は、北京の中国外務省。会談は、昼食も含め4時間に及ぶ応酬があった。
  • 日本側は、尖閣諸島の国有化は「安定的な維持管理」が目的であると説明し、理解を求めた。中国側は、国有化撤回を主張し、1978年に鄧小平副首相(当時)が言及した尖閣諸島の「棚上げ」に戻ることを求めた。
  • 河相次官は会談後、「事態を打開していくために引き続き意思疎通していかなければならないという点では一致した」と述べた。外相会談は、合意されなかった。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 5月18日、尖閣購入に踏み出した

  • 石原東京都知事が、東京都による尖閣諸島の購入を表明した当初、野田首相は尖閣諸島の国有化に慎重だった。しかし、東京都が尖閣購入のために募集した寄付金が膨らみ、切迫感が出てきた。
  • 中国政府は、対中強硬論の石原知事を警戒し、「石原知事が島を買えば取り返しのつかないことになる」というメッセージを日本政府に送ってきていた。日本側は、国が保有した方が中国の反発は少ないと踏んだが、中国側は、都による購入を阻止することを求めていた。両政府の認識の違いは次第に広がっていった。
  • 石原知事に尖閣諸島を先行取得されれば、野田政権への弱腰批判が起きかねない。尖閣の現状維持を唱える中国政府との板挟みの中で、野田首相は5月18日、政府高官らを集め、国有化に着手するよう指示した。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 安倍、石原氏「2位」激戦

  • 自民党総裁選は26日に行われ、新総裁が誕生する。地方票で優位の石破氏が1回目の投票で1位になるのは確実。ただし、国会議員票と合わせて過半数には届かない情勢だ。
  • 1回目は、地方票300票と国会議員票198票の合計で争われる。地方票の予想は以下の通り。①石破氏140票台、②安倍氏80票前後、③石原氏60票前後。国会議員票は、安倍氏が40票台後半、石原氏も40票台後半を確保。安倍、石原両氏が2位争いを演じている。
  • 決選投票は国会議員だけで行われるため、安倍氏、石原氏のいずれかの2位候補が優位に立つとみられる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 中国リスク、市場揺らす

  • 中国人民銀行は、景気判断を下方修正した。中国景気の一段の減速に加え、大規模な反日デモや暴動と、尖閣諸島を巡る日中関係の冷え込みも、市場の中国リスクを高めている。
  • 中国は1兆元(約12兆円)の景気下支え策を決めたが、上海総合株価指数は3年7ヵ月ぶりの安値圏となった。日米欧の株式市場でも、中国市場の位置づけが大きい建設機械や自動車関連株の下落率が大きい。
  • 日中関係の冷え込みは、中国景気の原動力となってきた対中直接投資にも響くと予想される。欧州債務危機で、欧州企業の投資が4.1%減る中、日本企業の投資は16%増え、中国景気を支えてきた。しかし中国リスクの高まりで、投資手控えが広がる恐れがある。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 再生エネ、企業参入阻む ~レベル7(4)

  • 2009年2月24日に二階経産相(当時)が記者会見で語った、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は、対象を家庭で余った太陽光発電の電気に限定したものだった。企業の参入機会を閉ざすもので、再生エネの普及に弾みをつけるものではなかった。
  • 買い取り制度は、2008年当時の福田首相の肝いりだった。洞爺湖サミットに向け、原発推進によるCO2削減への批判をかわす意図もあった。トップの意向にも関わらず、経産省は再生エネを批判する資料をつくり、自民党議員の間を走り回った。
  • 企業参入の促進が抜き取られた再生エネ買い取り制度は、福島第1原発事故で原発によるCO2削減が困難となったため、ひっくり返った。今年7月の見直しで、すべての再生エネ発電の電力の全量が買い取り対象となった。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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