2012.09.25 tue

新聞1面トップ 2012年9月25日

新聞1面トップ 2012年9月25日


【リグミの解説】
本日は久しぶりに、新聞各紙の1面トップ記事が違っています。

読売新聞
土砂崩れによる京急脱線の記事です。当時、沿線付近で1時間当たり100ミリという記録的な雨量を観測したそうです。関東におけ
る梅雨の時期の総降水量を調べると、だいたい200ミリから300ミリ程度ですので、1時間で梅雨全体の半分近い雨が降った計算になります。

気象庁では、雨の強さを「やや強い雨」、「強い雨」、「激しい雨」、「非常に激しい雨」、「猛烈な雨」の5段階に分類しています。「激しい雨」とは1時間に30mm以上50mm未満の雨で「バケツをひっくり返したように降る」イメージ、「猛烈な雨」とは、1時間に80mm以上の雨で「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる」イメージとなるそうです(引用:気象庁)。

1時間に100ミリはさしずめ、「激甚な雨」でしょうか。ゲリラ豪雨の怖さを感じさせます。


朝日新聞
民主党の党人事の話題です。野田首相は、党内融和を優先する輿石氏を幹事長に再任し、「選挙の顔」になる細野氏を政調会長に据えました。


野田さんは、「決められる政治」を目指し、民主党が割れることも辞さず、「政治生命を賭けて」消費増税法を実現しました。関西電力大飯原発の再稼働に際しても、反対の声が国民から寄せられ中、「私が責任を取る」と言い、再稼働を決定しました。

国民が今政治に求めていることは何でしょうか。「決められる政治」は、確かに大きなテーマです。日本維新の会が大きく注目されるのも、橋下大阪市長が「決められる政治」のイメージを上手に作り上げている面もあると思います。しかし国民は、「勝手に決めてしまう政治」は求めていません。「説明責任を果たす政治」と「約束を守る政治」を、「決められる政治」との3点セットで求めているのです。

この3点の関係が納得いくことが大事です。マニフェスト違反でも、消費増税が不可欠なことをちゃんと説明してもらい、納得できれば、増税決定も受け入れる国民は一定数います。原発再稼働も、安全性に納得いく説明があり、また夏のピーク時の状況について政府の納得いく検証報告があれば、この決定を支持する層はいます。しかし残念なことに、実際には、十分な説明責任は果たされず、政権に対する信任は落ちています。

とりわけ失望が大きいのは、「国民的議論」を経て「2030年代に原発ゼロ」を目指すとする「新エネルギー・環境戦略」の扱いです。野田首相は、テレビインタビューで閣議決定を約束しながら、そのわずか数時間後に、閣議決定を見送りました。これでは、「決められない政治」「説明責任を果たさない政治」「約束を守らない政治」の負の3点セットです。

輿石幹事長が再任され、影響力を増す野田改造内閣は、どこを向いて政治をしていくのでしょうか。党がさらに割れれば過半数を失い、選挙で負ければ降板です。しかしながら、こういう崖っぷちの時にこそ、日本の未来のために「説明責任を果たし、約束を守り、決意する」首相を、国民は必要としているのです。

日経新聞と東京新聞
日経と東京の2紙は、別の記事ですが、奇しくも同じテーマです。経産省と環境省が発電所の環境アセスメントをどう扱うか、という問題です。

カギを握るのは、原子力エネルギーの位置づけです。原子力を推進するためにアセスメントを曲げた過去。原発の再稼働と新増設が難しくなっために、石炭等の火力発電を柔軟化しようとする現在。どちらも、経済と環境の両方を総合判断する「全体最適」の視点が欠落しています。


行政の縦割りの権益争いと、政治の介入・利益誘導は、日本の悪しき伝統です。国家戦略を主導する仕組みやリーダーシップは、日本ではなかなか根付きません。日本型の「衆知主義」(たくさん知恵を寄せ合ってチームプレーで解決する方法論)を政治・行政でも模索すべき、と感じます。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 土砂崩れ、京急脱線

  • 24日午後11時58分頃、横須賀市の京急線・追浜駅と京急田浦駅の間のトンネル付近で土砂崩れが起き、崩れた土砂に下り特急列車が突っ込み、前の3両が脱線した。
  • この事故で、男性4人と女性1人がけがをした。いずれも軽傷。乗客は田浦署員らの誘導で線路を歩き、京急田浦駅に向かった。
  • 横浜地方気象台によると、横須賀付近では、24日午後10時頃から1時間当たり100ミリという記録的な雨量を観測していた。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 民主三役、融和を優先

  • 野田首相は24日、以下の党人事を決めた。幹事長=輿石氏再任、政調会長=細野環境相、国会対策委員長=山井国対副委員長、幹事長代行=安住財務相。
  • 首相は輿石幹事長について、「献身的に支えていただいた。一蓮托生だと思っている」と述べた。今回の人事で、早期の解散に慎重姿勢をとる輿石が政権運営への影響力を強めるのは確実。
  • 輿石氏とそりの合わない前原政調会長をはずし、輿石氏が目をかける細野氏を政調会長とした件は、輿石氏への配慮と共に、「選挙の顔」となる細野氏を立てることで、離党予備軍の動きを鈍らせる狙いもある。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 ミャンマー債務、邦銀支援

  • 日本政府と大手邦銀は、世界銀行とアジア開発銀行などがミャンマーに貸し付けたままになっている借金の返済を支援する。
  • 日本政府が仲介して大手邦銀がミャンマーに数百億円のつなぎ融資をし、ミャンマーは世銀とアジア開銀への延滞債務を返済。その上で、新たな低利融資を世銀とアジア開銀から受け、邦銀に返済する。日本政府は、ドイツなどの他の債権国にも債権の一部放棄などを働きかえる。延滞債務問題が解決したミャンマーは、民間からの投資、融資を受けやすくなる。
  • 日本政府は、民主化で新たな投資先としての期待が高まるミャンマーへの海外からの投資を促し、国際社会への復帰を後押しすると共に、同国との経済関係を強化したい考えだ。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 石炭火力の新増設再開

  • 政府は年内にも、発電所の環境影響評価(アセスメント)を見直し、石炭火力発電所の新増設を認める検討に入る。経産省と環境省がアセスメントの見直し協議の場を作る。ただ、環境省は石炭火力の容認に慎重姿勢であり、議論は曲折も予想される。
  • アセスメントの見直し項目は以下の通り。▽火力発電所の更新審査を短縮、▽火力発電所の新増設審査を迅速化、▽風力・地熱発電所の審査を迅速化、▽火力発電所の更新時の影響調査を事実上省略。
  • アセスメントの審査期間を短縮することで、民間事業者の投資を促す。東京電力は当面、原発に代わる電源として、石炭火力発電所を新設する方針だ。石炭火力の燃料費は、石油の4分の1、LNGの半分以下と安い。このため、夜間も運転する「基礎電源」として活用しやすい。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 発電所アセス、突然除外 ~レベル7 (3)

  • 2007年3月15日、自民党経済産業部会で、発電所も「戦略的環境アセスメント(SEA)」の対象になることが問題視された。原発への影響を気にした部会は、SEAの対象13事業のうち、発電所だけ例外になることを決めた。
  • 自民党を動かしたのは、電力各社でつくる電気事業連合会や経産省だった。原発には反対運動が起きやすく、火力発電所には温暖化ガスという問題があり、経産省内にはアセスに対するアレルギーがあった。例外なきSEA導入を図った環境省の案を自民党がひっくり返した。
  • 環境省は経産省との競り合いに勝ったが、福島第1原発事故で事情が一変。2011年4月の改正環境影響評価法で、発電所もSEAの対象となった。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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