【リグミの解説】
本日は久しぶりに、新聞各紙の1面トップ記事が違っています。
読売新聞
土砂崩れによる京急脱線の記事です。当時、沿線付近で1時間当たり100ミリという記録的な雨量を観測したそうです。関東における梅雨の時期の総降水量を調べると、だいたい200ミリから300ミリ程度ですので、1時間で梅雨全体の半分近い雨が降った計算になります。
気象庁では、雨の強さを「やや強い雨」、「強い雨」、「激しい雨」、「非常に激しい雨」、「猛烈な雨」の5段階に分類しています。「激しい雨」とは1時間に30mm以上50mm未満の雨で「バケツをひっくり返したように降る」イメージ、「猛烈な雨」とは、1時間に80mm以上の雨で「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる」イメージとなるそうです(引用:気象庁)。
1時間に100ミリはさしずめ、「激甚な雨」でしょうか。ゲリラ豪雨の怖さを感じさせます。
朝日新聞
民主党の党人事の話題です。野田首相は、党内融和を優先する輿石氏を幹事長に再任し、「選挙の顔」になる細野氏を政調会長に据えました。
野田さんは、「決められる政治」を目指し、民主党が割れることも辞さず、「政治生命を賭けて」消費増税法を実現しました。関西電力大飯原発の再稼働に際しても、反対の声が国民から寄せられ中、「私が責任を取る」と言い、再稼働を決定しました。
国民が今政治に求めていることは何でしょうか。「決められる政治」は、確かに大きなテーマです。日本維新の会が大きく注目されるのも、橋下大阪市長が「決められる政治」のイメージを上手に作り上げている面もあると思います。しかし国民は、「勝手に決めてしまう政治」は求めていません。「説明責任を果たす政治」と「約束を守る政治」を、「決められる政治」との3点セットで求めているのです。
この3点の関係が納得いくことが大事です。マニフェスト違反でも、消費増税が不可欠なことをちゃんと説明してもらい、納得できれば、増税決定も受け入れる国民は一定数います。原発再稼働も、安全性に納得いく説明があり、また夏のピーク時の状況について政府の納得いく検証報告があれば、この決定を支持する層はいます。しかし残念なことに、実際には、十分な説明責任は果たされず、政権に対する信任は落ちています。
とりわけ失望が大きいのは、「国民的議論」を経て「2030年代に原発ゼロ」を目指すとする「新エネルギー・環境戦略」の扱いです。野田首相は、テレビインタビューで閣議決定を約束しながら、そのわずか数時間後に、閣議決定を見送りました。これでは、「決められない政治」「説明責任を果たさない政治」「約束を守らない政治」の負の3点セットです。
輿石幹事長が再任され、影響力を増す野田改造内閣は、どこを向いて政治をしていくのでしょうか。党がさらに割れれば過半数を失い、選挙で負ければ降板です。しかしながら、こういう崖っぷちの時にこそ、日本の未来のために「説明責任を果たし、約束を守り、決意する」首相を、国民は必要としているのです。
日経新聞と東京新聞
日経と東京の2紙は、別の記事ですが、奇しくも同じテーマです。経産省と環境省が発電所の環境アセスメントをどう扱うか、という問題です。
カギを握るのは、原子力エネルギーの位置づけです。原子力を推進するためにアセスメントを曲げた過去。原発の再稼働と新増設が難しくなっために、石炭等の火力発電を柔軟化しようとする現在。どちらも、経済と環境の両方を総合判断する「全体最適」の視点が欠落しています。
行政の縦割りの権益争いと、政治の介入・利益誘導は、日本の悪しき伝統です。国家戦略を主導する仕組みやリーダーシップは、日本ではなかなか根付きません。日本型の「衆知主義」(たくさん知恵を寄せ合ってチームプレーで解決する方法論)を政治・行政でも模索すべき、と感じます。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事】 土砂崩れ、京急脱線
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 民主三役、融和を優先
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 ミャンマー債務、邦銀支援
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 石炭火力の新増設再開
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 発電所アセス、突然除外 ~レベル7 (3)