2012.09.24 mon

新聞1面トップ 2012年9月24日

新聞1面トップ 2012年9月24日


【リグミの解説】

「日中友好」の歴史
本日の1面トップ記事は、読売と毎日が「日中国交正常化40周年記念式典の中止」です。朝日、日経、東京も2番目の記事として大きく扱っています。尖閣諸島の国有化に端を発した反日の動きを受け、40周年という節目の年に、日中が仲違いし、友好の証である式典も中止するというのは、残念なことです。

1972年の日中国交回復のための交渉は、日本の田中角栄首相と中国の周恩来首相の間で成されました。日中戦争の負の遺産にどう向き合うかは、両国にとって大きなテーマであったと思います。周恩来氏、「日本人民と中国人民はともに日本の軍国主義の被害者である」という「未来志向」の考え方を提唱し、共同声明の成立に向け大きく前進したとされます(参照:Wikipedia)。

その後、田中首相は毛沢東主席と会談。冒頭で毛沢東は「周首相との喧嘩はすみましたか。喧嘩はしなきゃ駄目ですよ。互いに云うべきことを主張し喧嘩してこそ仲良くなれるものです」と発言。田中角栄は、「ええ、周恩来首相と円満に話し合っております。いいたいことは、一つ残さずに話したつもりです」。それに対して毛沢東は、「そう、それで結構、喧嘩をしてこそ仲良くなれます。本当の友情が生まれます」と答えた、と伝えられます(参照:「毛沢東―角栄首脳会談の秘話」)

デッドロック条項
ビジネスと政治は異なりますが、外国企業と合弁事業を設立するときなどは、外交交渉のようなやりとりも成されるもの。そこで大事なことは、3つあります。

  • 第1は、「本音で話し合う」。建前や綺麗事だけでは済まないビジネスの現実に真正面から向き合い、互いが本当にパートナーとなれるのかを探ります。
  • 第2に、「未来志向で臨む」。問題点やできない理由を羅列することは簡単です。一緒になることで「WIN-WIN」の未来を創造するという強い意志と希望を共有することが、突破口を作るカギとなります。
  • 第3に、「デッドロック条項を決める」。不幸にしてパートナー同士がどうしてもおりえないときは、どうやって解決するか、合弁事業解消を含めて、出口を決めておきます。


40年サイクル
40年前の日中国交回復交渉の席で、両国首脳は、本音で語り合い、未来志向で臨みました。しかし、国と国の関係は永続が前提であり、夫婦喧嘩の和解方法や離婚を想定した「デッドロック条項」を交わすのはなじまない考え方です。そこで、ケンカの火種となる歴史認識や領土問題を抱える両国は、「友好」の2文字に希望を託し、問題に蓋をして大火になるのを回避してきました。それは、両国が「未来志向で臨む」ための知恵でしたが、「本音で語り合う」という大事な前提を置き去りにする結果になりました。

40年は、時代が変わる象徴的な年数です。日本の近現代史を見ると、まさに40年サイクルで大きな動きをしています。1868年の明治維新から日露戦争勝利の1905年までの約40年で日本は、欧米列強に伍す「富国強兵・殖産興業」に成功しました。しかし次の40年は「軍国主義」に傾斜していき、1945年の敗戦ですべてを失いました。戦後一転して「平和主義」に転じた日本は、1985年までの40年間で、「Japan as Number One」と呼ばれるところまで到達しました。しかし、つぎの40年サイクルの前半は「失われた20年間」と言われ、国の方向性を見失っているように見えます。

建前から本音へ
日中関係も同じかもしれません。「友好」という「建前」は賞味期限を過ぎました。2006年から、「戦略的互恵関係」という表現も使われるようになりましたが、喧嘩を辞さず「本音」を探り合うレベルまでは行きませんでした。

今、日中両国が喧嘩状態なのは大変不幸なことです。しかし、起きたことを棚上げする戦術も、もう有効ではないと思います。厳しい現状を逆手にとって、「デッドロック条項」を交渉するのも一手です。離婚や関係終了の条項としてではなく、最悪の事態を回避し、「復旧」「復興」「再生」を果たしていくための工程表(ロードマップ)を話し合い合意するというものです。

ビジネスの現場で、「本音」をぶつけ合う厳しい交渉を本気でやれば、「友好」という社交レベルでない、「友情」とも呼ぶべき信頼関係が目覚めるもの。国と国の関係においても、実務者同士、そして要人同士の「友情」を作りあがることが、どれほど大切なことか。グローバル時代の最大のテーマと言っても、過言ではありません。


(文責:梅本龍夫)


讀賣新聞

【記事】 日中国交40年式典中止

  • 中国側は23日、日中国交正常化40周年の記念式典を「延期したい」と在北京日本大使館に通知してきた。日程の再調整は困難と見られ、事実上の中止となる。
  • 中国側の責任者は、日本側に延期理由を「諸般の事情」と説明した。同責任者は新華社通信に、尖閣諸島の国有化で日本は「40周年の雰囲気を台無しにした」と語った。
  • 中国側は、日中の民間団体が一堂に会する最も重要な記念式典を延期することで、尖閣諸島をめぐる日本の対応に強い不満を示し、圧力をかける意図があるとみられる。同時に、共産党政権の対日強硬姿勢を国内にアピールする狙いもあるとみられる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 石破氏、地方票集め先行

  • 自民党総裁選で、石破前政調会長が地方票で大きくリードしている。国会議員票と合わせて、1回目の投票でトップとなる情勢だ。朝日新聞の電話調査で判明した。
  • 全国の自民党員・党友1855人から有効回答を得た。投票先は、①石破氏39%、②安倍氏22%、③石原氏12%、④町村氏3%、④林氏3%、態度未定が2割。
  • 国会議員の動向も調査。①安倍氏40人台半ば、②石原氏40人台前半、③石破氏30人台半ば、④町村氏25人前後、⑤林氏20人台前半。地方票と議員票を合わせると、石破氏が優位に立つ。安倍氏と石原氏は、激しく2位を争っている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 国交40年式典を中止

  • 中国の「中日友好協会」などは23日、日中国交正常化40周年の記念式典を中止する方針を日本側に伝えた。尖閣諸島の国有化に関して、日本側の対応に変化が見られないことから、中国側に強い不満が背景にあると考えられる。
  • 中国では、大規模なデモが各地で発生したが、当局が抑え込みを図っている。一方で、日本への弱腰外交を批判されることを回避するため、強硬姿勢も維持する必要があるとみられる。
  • 40年という重要な節目で記念式典が行われないことになり、日中の関係悪化の長期化は避けられない事態となった。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 五感を超える力 ~ネット・人類・未来

  • インターネットが普及し始めてから約20年経ち、ネット利用者は爆発的に増大している。人類は、ネットの巨大な力を使いこなせるか、至上まれにみる挑戦が始まっている。
  • ITを使い、人間の記憶力と視覚をサイボーグ並みに強化する研究が進んでいる。眼鏡型デバイスで眼球の動きをとらえ、注目していることに役立つ情報をデータベースから検索し知らせる仕組みや、小型ヘリコプターを飛ばし、視覚を拡張する方法が試みられている。
  • ネット活用で眠っている人材を活かす場をつくる仕事紹介サイトのランサーズ。SNSを活用して役員や海外社員を結び、最善の知恵と経験を共有しようとするトヨタ。米欧では、SNSの個人情報を使った様々なサービスが編み出され、増え続けている。便利であると共に、いつのまにか個人がネット上で丸裸にされている側面もある。光も影もあるのがネットの現実だ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 消えた原発凍結宣言 ~レベル7 (2)

  • 2001年に東京電力は、原発を含めた発電所の新設を3~5年先送りするつもりだった。電力需要を読み誤り、供給力過多の傾向になっていたところに、2000年からの電力の一部自由化で初めて価格競争にさらされ、コスト削減も迫られていたためだ。
  • 出力100万キロワットの原発の建設費は3~4千億円と火力発電の2倍となる。原油価格の安かった当時は、原発を見送る方がコスト削減効果は高かった。
  • 2001年2月8日に、東電は「(原発を含めた)新たな発電所の建設計画を凍結する」と発表した。原発は「国策民営」と呼ばれ、経産省と電力会社が二人三脚で進めてきた。原発を凍結したいという東電の意向に通産省は驚き反発。翌日の東電による記者会見で「原発は予定通り進めていく」と明言し、「凍結」は撤回された。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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