【リグミの解説】
中国における「ルール」
今日の読売新聞1面トップは、中国が国連の大陸棚限界委員会に、東シナ海の大陸棚延伸を申請したことに対する日本政府の異議申し立てを報じる記事です。今回、日中両国は、国連という場で国際的な「ルール」に基づく戦いを展開しようとしています。「ルールに従う」という動きとみなすことができます。
中国でビジネスをする難しさのひとつに、官民取り混ぜた独自の「ルール」が挙げられます。「ルールに従う」ことで何とか現地に食い込み、独自のやり方にもようやく慣れた頃に、突然「ルールを変える」動きがあり、大いに苦労させられる、という話も聞きます。
そして中国における今回の反日デモ。暴徒化したデモ隊が日本大使館や総領事館にモノを投げつけたり、窓ガラスを破るなど、器物損壊となる行為をしました。さらに、日系企業の工場や商業施設を破壊したり、商品を略奪したりしました。在外公館の権利を掲げる国際法であるウィーン条約や、中国の国内法にも抵触する行為だったと思いますが、中国政府は今後どのような補償をしていくのでしょうか。
「ルール」を守る国、破る国、変える国
「ルールを破る中国」。今回の反日デモの騒乱もそうですが、地球温暖化対策(CO2削減)に取り組む国際会議などにおける中国の態度も、ルールから逸脱する「異質な国」というイメージを持たれているように思います。
そんな中国に対して、「ルールに従う日本」。国際関係で謙虚にふるまい、自己主張をあまりせず、資金拠出などはきっちりする日本。オリンピックなどの国際競技でも、フェアプレイに徹するイメージもあります。クリーンで調和的な良さがありですが、存在感を発揮しにくい課題もあります。
一方、「ルールを変える米国」。シリコンバレーやITの世界などで、新しいビジネスモデルを創造し、それまでのやり方を無力化するのが、米国流のビジネス戦略の典型です。こつこつと現場改善で価値を積み上げてきた日本は、これで根こそぎやられてしまいます。9.11以後のテロとの戦いでも、米国は西側諸国の結束の仕方や戦い方をリードし、強引に新しい「ルール」づくりを進めました。
日本は、難しい日中関係の打開を日米関係に求める空気もありますが、その米国は、実は日米関係よりも格段に濃密な米中関係を構築していると言われます。一時、G2(米中2大国の時代)と言われましたが、現在も政府実務者レベルでは、この動きが着実に進んでいるのかもしれません。
「ルール」に対する新しい態度
米中に挟まれた日本は、謙虚に「ルールに従う」だけでは、現状を打開できないのではないでしょうか。1972年突然に米中和解をしたニクション・ショックのようなことが、再び起きるかもしれません。
日本は当面、国際的な「ルール」から見た領土問題の現状を正確に情報発信し、国際世論を味方につける「政治マーケティング」をする必要があると思います。さらに、多国間の仲違いや紛争が起きやすくなっている時代にふさわしい形に「ルールを変える」努力も求められています。
それは、日本が一番苦手としていることかもしれません。でも発想を変えれば、現場でチームプレイで課題解決を積み上げていく日本のお家芸は、新しい「ルール」の運用法になるとも期待できます。「白黒」「善悪」を明確にする「ルール」に対して、第3の可能性、いわば「二項対立」の状況に対する「二項同体」を模索することは、紛争解決の実践的な知恵となるかもしれません。
本気で「ルールに従う」ことは、ただの従順さとは違います。ルールがもたらす価値を最大化する不断の努力を伴います。それはいつか、「ルールを変える」ほどのインパクトを持つものとなります。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事】 中国の大陸棚延伸に異議
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 消費増税内閣試算、年11.5万円負担増
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 石破氏「1回目」1位確実
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 中古住宅情報100万件
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 核燃料サイクル撤退の逸機、2004年にも