【リグミの解説】
「笑顔が広がる国」
「それはきれいごとだ」。解決が簡単にできない難しい問題を話し合っていると、ある種の解決案に対してかならず出てくるのが「綺麗事」という批判です。「物事の実態はそのままで、表面だけをとりつくろうこと」(広辞苑)という意味で使われます。
民主党の代表選で野田首相が再選されました。1回目の投票で3分の2近いポイントを獲得する圧勝でした。本日の読売、朝日、毎日がそろって1面トップで報道しています。
「目指しているのは子どもの笑顔が広がる国、お父さんお母さんの笑顔が広がる国、おじいちゃんおばあちゃんの笑顔が広がる国、そういう国を皆さんといっしょにつくりたいと思う」。野田首相は、再選を果たしたあとの演説をこう締めくくりました。この言葉に共感した人、また「綺麗事」を言っていると批判的にとらえた人。それぞれであったと思います。
「綺麗事」を言う政治家
「綺麗事がいえなければ政治家にはなれない」。長年保守系の衆議院議員を務めた方の言葉です。これ広辞苑の意味でとらえれば、当然否定的な意味になります。しかし、政治家が綺麗事を言わなくなったら、どうなるでしょうか。
経済のパイが拡大していた時代には、政治は利益配分の調整をしていれば、そこそこ支持を得られました。しかし、パイが増えず、むしろ減る時代は、「綺麗事」が空疎に響きます。とはいえ、「厳しい現実を直視せよ」「国民には今以上に負担をお願いする」「公助はこれから減る」とだけ言うのであれば、リストラしか策のない経営者と変わりません。
政治家が語るべき3つのこと
今、政治家が語るべきことは、3つあります。第1は、「厳しい現実を直視せよ」です。国家のリアリティを正しく認識し国民と共有する姿勢です。第2が、「これが私のビジョンであり、目指す国の姿だ」という夢、理念、価値観の表明です。そして第3に、ビジョンを具体化する「行程表(ロードマップ)」を明らかにする必要があります。
「綺麗事」が批判されるのは、現実が「汚れ事」になっているからであって、「綺麗事」として語られる理想や夢の価値そのものを否定する人はいません。世の中が汚れていればいるほど、理想となる綺麗な状態がまぶしく輝き、思わず目を伏せてしまっているのです。
ある種の宗教家が大衆の心を惹きつける理由は、苦しみの現実に寄り添い(1. 現実直視)、天国や涅槃や悟りという理想郷を語り(2. ビジョンの提示)、そこへ至る具体的な救済の道を示すからです(3. ロードマップの具体化)。
日本の100年後の姿
では政治家が、辞書に書かれた「綺麗事」の意味に留まらず、国民が真に必要とする「ビジョンとして綺麗事」を打ち出すには、どうしたらよいでしょうか。宗教家のように信仰の対象を打ち出し、熱狂的な信者を作ることではないことは、当然です。
答は、遠回りでも「国家100年の計」を具体化することにあると思います。冷静に客観的に現実を分析し、高邁な理想に向けて大きなプランをつくり、冷静な頭と熱い心の両方で検証し、創意工夫していけるプランを国民と共有し、合意すること。「国家100年の計」は、私たちの子供たちや孫たちにバトンタッチする「笑顔が広がる国」の具体像です。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事】 野田首相が代表再選
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 野田首相、大差で再選
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 野田首相、大差で再選
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 ルネサス、官民で買収
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 原発ゼロの閣議決定回避、米が要求