2012.09.20 thu

新聞1面トップ 2012年9月20日

新聞1面トップ 2012年9月20日


【リグミの解説】

争点の「見える化」
東京新聞は昨日から3回シリーズで、「どこへ行く日本~W党首選から」という特集を1面トップで展開しています。昨日は、民主党の4候補と自民党の5候補を「脱原発―原発維持」の軸上のどこに位置するか、図示しました。今日の記事では、「タカ派―ハト派」と「自助―公助」の2軸のマトリクスを示し、民主・自民の9候補をマッピングしています。

最近の新聞は、しばしばこうした図を考案し、争点をわかりやすく分類する手法を取るようになっています。ビジネスの世界では、昔から普通に活用されてきた方法論が、マスコミでも応用されるようになってきたのは、興味深いことです。

ひとつは、新聞の販売部数が長期低落しており、あの手この手で記事を面白くする工夫が求められている、という事情があると思います。しかしそれだけでなく、読者がより明瞭に対立軸を理解できる記事を求めるようになってきている、という面もあると思います。

2大政党制の意味
「55年体制」と呼ばれた自民党一党独裁体制が、長く日本の政治を支配してきましたが、盤石だった自民党の地盤も1990年代半ばには崩れました。そして、2009年の民主党政権誕生で、日本は文字通り新しい時代に入りました。いわゆる2大政党制とは、政治の大きな方向性を選択する政治体制です。わかりやすく言えば、国民は重要な政策課題で、「右」か「左」を判断し、その判断に自ら責を負う必要があります。

今日の東京新聞の記事にあるように、下野した自民党は、「タカ派・保守」という立場を鮮明にしています。次期衆院選で政権を奪回したとしても、かつてのように「右(タカ派・保守)」と「左(ハト派・リベラル)」のバランスを取る政権運営には、戻らない可能性が高いです。生き残りを賭けた民主党も、党を割る騒動の末に、自民党(そして第3極となる新興勢力)との「違い」を明瞭にする必要性を迫られています。

国論を二分するテーマ
この新しい政治環境に呼応するように、最近は「国論を二分するテーマ」が次々と浮上しています。記憶に新しいところでは、TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加の是非が挙げられます。賛成派と反対派では、農業への影響などカギとなる争点でも180度異なる見解を出しています。賛成派は、TPPは国を発展させると言い、反対派は衰退させると言います。


そして、TPP以上に国論を二分するテーマが原発です。「脱原発派」と「原発推進派」が、国のあらゆるレベルを巻き込んで、争っているように見えます。今までであれば、政府・経産省と電力会社と原発の専門家の間で実質的にすべて決められたことが、にわかに衆人環視の大舞台に載せられ、大論争になっています。この論争の主役級ににわかに抜擢されたのが、国民です。

海外から吹く風
そして、国論を二分するテーマは、国内だけでなく、海外からも押し寄せてきます。

政府が尖閣諸島の国有化を決定したあと、中国で過激な反日デモが吹き荒れ、大陸からは、「黄砂」ならぬ「硝煙」の風が吹いてくる可能性すら懸念される事態になっています。これに対して、日本政府はどう対応すべきなのか。


短期的には、中国に強い態度で迫る「強硬派」と、騒乱を収めようとする「柔軟派」の対立軸があります。領土問題を争点にするか、棚上げするか、という選択も出てくるでしょうし、その中間で、「尖閣諸島に領土問題がある」と公式に認めるか否も、選択を迫られるでしょう。

しかし、より長期的・根本的に重大なテーマは、「憲法」と「核」の判断です。「集団的自衛権」をどう考えるか、さらには憲法9条の「平和主義」の扱いをどうするか。そして、非核三原則(核を作らず、持たず、持ち込ませず)を見直すのか。原発論議で今もタブー視され、議論の俎上に上らないのが、核開発の問題です。「タカ派・保守」の本音としては、このカードを常に保有したいという思いがあると思います。今回の中国との騒動で、この争点のリアリティーをより感じた人も、多いかもしれません。

「主義」を問われる時代
中国や韓国から、日本はいつも「歴史認識」を厳しく問われます。しかし、隣国に言われたからでなく、戦後の「平和主義」と戦前の「軍国主義」を並列して客観視し、自国の立ち位置を明瞭にすることが必要です。「歴史認識」の対象は、戦前だけではありません。戦後も現代の歴史です。「包括的な歴史認識」があって、はじめて「国家100年の計」も揺るぎないものを創り出せるようになります。


私たちは、時代の大きな変革期に遭遇しています。国民ひとりひとりが、どういう立ち位置で国の方向性を選択するのかを問われています。その前提として、私たちは、自分の価値観や優先順位を自らに問い掛け、明らかにしていく必要があります。

次期衆院選に向けた想定質問をひとつ。「あなたの『主義』は何ですか?」



讀賣新聞

【記事】 基準地価、被災地の高台上昇

  • 国土交通省が19日に公表した2012年の基準地価によると、全国平均で住宅地が21年連続、商業地が5年連続の値下がりとなったが、下落率はリーマンショック前の調査以来の小幅となった。
  • 震災の被災地では、地価が二極化している。高台や復興が進む地域を中心に地価が上昇。岩手県陸前高田市の高台では、全国トップの上昇率となる前年比14.6%を記録した。一方、原発事故の風評被害が残る福島県は、住宅地と商業地の下落が計396地点、上昇は1地点のみだった。南海トラフ巨大地震による津波被害懸念される高知県は、住宅地(前年比▲6.6%)、商業地(前年比▲8.4%)ともに、下落率が都道府県別で最大となった。
  • 住宅地の2012年基準地価の対前年比の全国平均は▲2.5%で、2011年の▲3.2%を下回る下落率となった。商業地の2012年の全国平均は▲3.1%、2011年は▲4.0%で、同様に下落率が縮まった。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 原子力規制委が発足

  • 原発の安全規制を担う組織として、従来の経済産業省「原子力安全・保安院」、内閣府「原子力安全委員会」、文部科学省「放射線モニタリング部門」を廃止し、新たな体制として環境省の外局となる「原子力規制委員会」と、同委員会の事務局となる「原子力規制庁」が発足した。国家行政組織法3条に基づく委員会となり、独立性を担保する。委員は5人。
  • 野田政権は、「2030年代の原発ゼロ」を目指す一方で、原発は「重要電源」として再稼働していく方針。革新的エネルギー・環境戦略で、「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働する」と明記された。現在は全国50基の原発のうち、関西電力大飯原発3、4号機のみが稼働中。
  • 同委員会の委員長に就任した田中俊一・前内閣府原子力委員長代理は、「(安全基準を)できるだけ早く見直しを図りたいが(年内は)難しいかもしれない」と指摘。新しい安全基準ができるのは、来年以降になる見通しを明らかにした。新基準に基づいて規制委が安全性を確認したあと、再稼働の是非を誰が、どのように判断するかは決まっていない。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 基準地価、津波想定域で下落

  • 国土交通省が19日に公表した2012年の基準地価によると、全国平均が前年比で▲2.7%となり、下落率は2011年の▲3.4%から0.7ポイント縮小した。全国の基準地価は、21年連続の下落となった。ただ、3年連続で下落幅は縮まっており、地価の底打ち傾向がみられる。
  • 国交省は、地価底打ち傾向の要因として、低金利や住宅ローン減税などの政策効果による住宅需要の回復と、東日本大震災の復興需要で被災地の地価にも下げ止まり傾向が広がっていることを挙げている。
  • ただ、近い将来の発生が懸念される南海トラフを震源とする巨大地震で、政府が新たに津波被害の予測を発表したことで、高知、和歌山、三重、静岡をはじめとする四国から東海に至る沿岸部で、地価の下落が目立った。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 日米欧、金融緩和に動く

  • 日銀は19日、国債などを買い入れる資産買入れ基金の枠を80兆円にする緩和強化策を決定した。10兆円(+12.5%)の増額となる。
  • 日銀が動いた一因に、欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備委員会(FRB)が、大規模な資金供給に踏み切ったことがある。日本が、市場の緩和姿勢で見劣りすると受け取られると、円高が進み、景気下振れリスクを増大させる懸念があった。日米欧の中央銀行が立て続けに動くのは、異例の展開だ。
  • ただ、実質ゼロ金利にもかかわらず、景気回復の足取りは緩慢だ。当局の対策に手詰まり感も出始めている。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 首相・自民5氏「タカ」

  • 民主党代表選と自民党総裁選は、対外強硬的な「タカ派」が多い。自民党の5候補(石破氏、石原氏、安倍氏、町村氏)は全員、集団的自衛権の行使を容認すべきと主張。尖閣問題でも、政府が毅然と中国と向き合う必要性を訴える。
  • 自民党は長年「タカ派・保守」と「ハト派・リベラル」が共存することで、長期政権のバランスを取ってきた。しかし、2009年に下野してからは、「自主憲法制定」という結党以来の党是を打ち出し、「タカ派・保守」への右傾化が顕著になっている。
  • 一方で、対立軸を示すべき民主党も、野田首相は「保守」を自認し、集団的自衛権を自著で主張している。代表候補で「リベラル」を自認するのは、民主党の赤松氏と原口氏のみ。政界全体でも、「ハト派・リベラル」が脇に追いやられつつある。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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