【リグミの解説】
デモと似たもの
本日の読売、朝日、毎日は、引き続き中国の反日デモの状況を1面トップで伝えています。明日の18日が満州事変勃発の契機となった事件の日であり、大規模なデモが再び呼びかけられていること、さらに中国漁船1000隻が尖閣諸島に向かっていることを、大きく報じています。
デモは、英語のデモンストレーション(Demonstration)の略で、日本語では示威行進などと訳されます。英語に「Protest March(抗議行進、反対行進)」という表現もあります。辞書を見ると、英語のデモンストレーションの意味は、「証明」「実演」「デモ(示威行進)」「感情などの表明」「軍の陽動作戦」の5つあります(広辞苑)。
中国の反日デモがここまで大騒動になると、通常の「デモ(示威行進)」という感覚を超えたものに感じられてきます。英語の意味を総動員して理解するのが良いのかもしれません。ひとつの解釈として、
- 今回の中国の反日デモは、中国人の歴史認識に基づく日本への「感情などの表明」であり、尖閣諸島はその引き金であり、象徴に過ぎない。尖閣問題が解決しても、根本が変わらない限り、同様の現象が繰り返し起きる。しかも、次第に過激になる
- 中国政府の方針発表、国連へのアピール、さらに民衆のデモや暴力行為のすべてが、尖閣諸島は自分たちのものだという「実演(アピール)」であり、そのことで尖閣諸島には領土問題があるということを世界に「証明」できる
- 中国漁船を大挙して尖閣諸島に送り込むのは、中国当局の「陽動作戦」であり、尖閣諸島の実効支配に向けた着実な一歩となる
と見ることもできます。
日本ができるデモ(証明、実演)
デモは、その隠された意図も含めて、上手に行えば相当の効果を発揮する可能性があります。しかし、デモはどれほど組織だって進めたとしても、自然発生的な運動を内に秘めているため、どこで統制が取れなくなり、方向が逸脱したり、暴徒化などの問題に発展するかわかりません。天安門事件という大きな負の遺産を抱える中国政府も、そのことは良く理解していると思います。
中国政府が冷静な対応に向けて動くかどうか、現段階ではわかりません。しかし、日本は対応策を明確にする必要があります。検討すべきポイントは、3つあります。
- 第1に、中国政府に冷静な対応を強く求めていくこと。同時にあらゆるレベルでの対話促進を図ること
- 第2に、国際的にみて、尖閣諸島に領土問題が存在することが「証明」された可能性があることを認め、従来路線からの戦略転換の可能性を早急に検討すること
- 第3に、この新戦略の内容に沿って、国際社会に対して、尖閣諸島に関する日本の立場を徹底してマーケティングしていくこと
リグミはここ数日、反日デモ関連の解説を続けています。16日の解説では、「対話」こそが、課題解決の突破口になることを示唆しました。17日の解説では、日本が戦後営々と積み上げてきた「平和主義」の資産こそが、最大の武器になると訴えました。今日は、日本が苦手とする「政治マーケティング」が、具体的な戦略ツールとなることを提案したいと思います。
「マーケティング」は、マーケットに対する「発信」と「受信」を繰り返す総合的な活動です。言い換えれば、マーケットとの「対話」です。日中が「マーケット」の互恵を求めて、「対話」を再開できる好機は、いつかかならずやってくるはずです。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事】 反日デモ、1週間連続
- 中国の反日デモは、日本政府による尖閣諸島の国有化以来、7日連続となった。満州事変が起きた18日も大規模なデモが呼びかけられている。
- 中国人民ラジオは、漁船1万隻以上が出漁し、尖閣諸島の海域に到達予定の船は1000隻に達すると報じた。海上保安庁は、多数の巡視船艇を周辺海域に配備し、警戒を強めている。
- 漁船団が日本の領海を犯した場合、情勢はさらに緊迫する可能性がある。中国在住の邦人社会や日系企業は、デモに警戒を強めている。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 中国漁船、尖閣向け出港
- 多数の中国漁船が、尖閣諸島周辺海域に向け出航した。北京市共産党委員会発行の大衆紙は、「1千隻の漁船が魚釣島(尖閣諸島の中国呼称)に向かう」と報じた。中国中央人民ラジオは、「17日午後にも魚釣島周辺海域に到達する」と伝えた。
- 海上保安庁は多数の巡視船を尖閣諸島海域に待機させ、警戒を強めている。海保は、日本の領海内で操業する漁船を見つけたら警告し、領海外に追い出し、従わない場合は逮捕するケースもあり、今回も従来通り対応する。
- 満州事変の発端となった柳条湖事件のあった18日にも、中国各地で反日デモの呼びかけがあり、日系企業などに休業の動きが広がっている。広州の公安当局は、15、16日にデモで暴徒化した参加者らを拘束したと発表。中国当局は、デモ暴徒化に制圧姿勢を強めはじめた。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 反日デモ、西安で禁止通達
- 日本政府による尖閣諸島の国有化に対する中国の反日デモは、17日も続いたが、平日だったため15、16日よりも小規模となった。日本大使館前でのデモは、1週間続いている。
- 15日、16日に中国全土で起きた反日デモは、デモ隊の一部が暴徒化し、社会秩序が脅かされる事態となった。中国メディアは、広州や青島の公安当局が、破壊活動をしたデモ参加者を拘束したと伝えた。
- 18日は満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日であり、30都市以上でデモが呼びかけられている。デモが極度に加熱する恐れがあり、中国当局は暴徒化阻止に向けて警戒を強めている。西安の公安当局は、市中心部などでのデモを禁止する通達を出した。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 セコム、東電事業を買収
- セコムは、東京電力からデータセンター事業を買収する方針を固めた。買収対象は、東電の子会社「アット東京」。500億円前後で株式の過半を取得するとみられる。東電は、売却後も約3割の株式を継続保有する方向で協議している。
- アット東京は国内最大級の施設を擁しており、セコムは同買収で規模を約10倍に広げる。センターの運営において、国内大手の富士通、KDDIなどと並ぶ可能性がある。データセンター事業は、東日本大震災以後、事業継続計画(BCP)の一環でデータのバックアップ目的の需要が急増している。
- 東電は、原子力賠償支援機構と共同で策定した総合特別事業計画に、2011年度から3年間で総額7074億円の資産売却を盛り込んでいる。今回の大型資産の売却は、合理化目標達成のための一環。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 荒川堤防75%整備不足
- 埼玉県と東京都を流れる荒川下流域の左右両岸の計45.2キロのうち、75%の33.7キロで、強度や高さが不足していることが判明した。7月の九州北部の豪雨で河川の堤防決壊や氾濫が相次いだことから、国土交通省が緊急点検をした。
- 増水が続くと堤防内の土に水が浸透して決壊する「浸透決壊」が懸念される流域が6.5キロあり、対策工事の計画されている2.7キロを含めて計9.2キロとなる。「浸透決壊」は、現象が目に見えない上、増水で堤防の高さを超える「越水決壊」より発生確率が高いとされる。国交省荒川下流河川事務所は、計9.2キロの強化工事を優先して進める。
- 国交省によると、荒川の流域内人口は約930万人で、堤防決壊によって想定される最大氾濫区域の一般資産額は、142兆円に達する。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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