【リグミの解説】
首相官邸前デモの雰囲気
最近のデモ、参加したことありますか?
毎週金曜日に首相官邸前で反原発のデモが続いています。今回のデモは、1960年代に盛んだったデモや、その後も市民活動家や労働組合、学生運動家などが主催する抗議活動とも異なるものだと言われます。大きな違いは、参加者の雰囲気や動機です。確かに、普通の生活者がそれぞれの「思い」を秘めて参集しているところに、大きな特徴があることは、現地の映像からも伝わってきます。
今の時代のデモの特徴を一言で言うと、「まだら模様」となるのではないかと思います。参加の動機もさまざまで、原発に対する問題意識では一致していますが、具体的な考え方や主張には濃淡があり、結果として現地での活動もそれぞれのレベルで成されている、というもの。この活動が意味するものや、今後の展開はどうなっていくのか。リグミも大いに注目をしています。
2030年代に原発ゼロ
政府は民主党の方針を受け、新しいエネルギー政策を検討してきましたが、「2030年代に原発ゼロ」を目指すことを明記することになりました。朝日新聞と毎日新聞は、本日の1面トップでこのことを報じています。
朝日は、原子力エネルギー政策を推進し日本と技術協力をしている米国が、日本政府の新しい政策に関心を示し、その反応によっては政府方針の見直しもありえると示唆。一方、毎日は、政府方針は再処理施設を抱える青森県への配慮と、原発ゼロ方針に反発する経済界に配慮する内容になっている、と解説しています。
「原発ゼロ」ということを、ひとつの「結論」とし、具体的時期を「ゴール」として設定したとき、そこからさまざまな難しい課題が飛び出します。米国の反応、原発施設を抱える自治体の反応、経済界の反応は、その代表例です。政治は、こうしたステークホールダー(利害関係者)の利害を調整をし、高度な妥協点を探る作業をしなければなりません。しかし、原発のステークホールダーの中に、一般の国民が含まれることは、今まではありませんでした。
それが今回は、ステークホールダー同士の複雑な関係をほどく作業の最初のステップに、「国民的議論」が置かれました。これは画期的なことです。そして、この大きな変化を生み出したひとつの要素が、首相官邸前デモをはじめとする全国で自然発生的に起きた抗議運動のうねりです。ステークホールダーを利害関係者と解釈すると、パイの奪い合いというイメージになりがちです。しかし今起きていることは、原発というエネルギー政策とその課題の「当事者」として責任と義務を負い、権利を有する存在と解釈するのがより良いと思います。
まだら模様の「思い」
一躍原発ステークホールダーという「当事者」の筆頭格に躍り出た国民は、さてここからどう事態を判断し、行動すべきなのでしょうか。先週金曜日(7日)の首相官邸前デモは、その前までと打って変わって、参加者数と熱気がトーンダウンした、と現地取材におもむいたリグミスタッフは言います。なぜでしょうか。これは今の段階の推測でしかありませんが、さまざまな「思い」をもって自然発生的に参集した人々のうち、「長期的に確実に原発ゼロを達成してほしい」「いろいろな難しい問題を調整しながら、そこにソフトランディングしてほしい」と思っている人々が、民主党・政府の新方針を聞いて、参加を見合わせた可能性があります。
デモは、有効な意思表明の手段です。しかし、それが唯一の方法ではありません。原発ステークホールダーとなった国民は、これから原発についてますます責任をもって対処する必要があります。その最初の重要な行動の場が、次期衆院選となるでしょう。どの政党に、どの政治家に投票するか。投票は全権委任であり、エネルギー政策だけでは決められません。それでも、原発について明確な意思表明を政党がし、それを国民が冷静に判断し、一票を投じることは、日本を変えていく歴史的な一歩になるでしょう。
国民の「思い」は単純な二項対立ではありません。まだら模様です。その模様を、より鮮やかな織物に高め、国家の次の20年、50年、100年の方向性を具体化すること。それが政治の責任であり、国民が協働して推進する一大テーマになります。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事】 「日本維新の会」結党宣言
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 原発ゼロ「2030年代」明記
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 政府「核燃料サイクル維持」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 伊藤忠、米ドールの事業買収
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 ライフライン復旧にスピード
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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