2012.09.08 sat

新聞1面トップ 2012年9月8日

新聞1面トップ 2012年9月8日


【リグミの解説】

評判と評価
人と人が出会い、一緒に活動をする社会では、人物として「評判」が良く、仕事内容が高く「評価」されることが大切。でも、「評判」の良い人と、高く「評価」される人は、かならずしも一致しません。

今朝の読売、朝日、毎日、日経はそろって、民主党と自民党の党首選に誰が立候補するのか、本命は誰かという記事です。ほとんどの新聞が「立候補」ではなく「出馬」という単語を使うこともあって、何やら競馬の予想記事のようで、深みに欠けます。党内の「評判」だけ追いかけて、次の国家元首にふさわしい候補者か、という「評価」がなされないからだと思います。

どうやらこの問題は、「評価」のプロであるべき、人材派遣会社においても同じようです。東京新聞は、東京都板橋区の病院で、区民の健康診断を行った男が、医師ではなかったという問題をトップ記事で伝えています。医師専門の人材紹介会社から派遣された男は、他人の医師免許をコピーし、医者になりすましていました。この男がどんな人物だったか、記事は伝えていませんが、多少の医学的知識と、相手の心理を読む力、そして演技力があれば、結構評判のいい医者として通用していたのかもしれません。

信用と信頼
同様に、多少の政治的知識と、支持者の心理を読む力、そして演技力があれば、結構評判のいい政治家として通用するかもしれません。そもそも「評判」はいい加減なものです。イメージやムードで決めたり、好き嫌いの感情で判断したりする部分が多いからです。「評価」はもっと厳密なものです。その人物の仕事や活動を棚卸し、何を意図し、どういう取組をし、そして結果はどうだったかを、できるだけ客観的に分析し、総合的に判断しようとします。

私たちは、日常生活では「評判」の良い人とつきあいたいと思うものです。しかし何かを真剣に成し遂げたいと思ったら、「評価」の高い人と組んで仕事をしたいと思うはず。「評判」の良い人は、何かしてくれそうだ、という漠然とした期待感を抱かせ、「信用」していい、と感じます。しかしそこには、「評価」の高い人にだけ与えられる、根拠ある「信頼」はありません。


安心と安全
「評判」と「評価」は、「安心」と「安全」の関係に似ています。本来は、安全という前提があって安心するはずです。しかし私たちは、福島第1原発事故の前までは、根拠のない「安全神話」によって安心しきっていました。今は、「原発は安全」という評価を下す政府や専門家、電力会社の言葉を信じられないために、「安心の前提」を持てない社会になっています。

政治が取り戻さないといけない信頼と信用は、政治家を正しく「評価」するところから始まります。マスコミに求められる報道姿勢は、国民にわかりやすいイメージやメッセージだけ伝えて、政治家の「評判」を煽ることではありません。ひとりの政治家やひとつの政党が、何を成してきたのかという実績と、何を成そうとしているのかという政策を、客観的に「評価」し、心ある国民に正しい情報として提供することです。

安心して国家の未来を託せるリーダーを選べることは、成熟した民主主義の証です。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 野田首相、代表戦確実

  • 野田首相が民主党代表選への立候補を正式に表明した。中堅議員らからの出馬要請を受けていた細野環境・原発相が出馬を見送ったことで、首相の再選は確実な情勢だ。
  • 細野氏は、いったんは出馬に傾いたが、福島県など被災地復興を優先するとし、首相の再選を支持する考えを表明した。一方、首相に批判的な議員らは、対立候補の準備を進めている。対立候補一本化を目指す原口元総務相のほか、馬淵元国土交通相も出馬する意向だ。
  • 自民党総裁選は、谷垣総裁と石原幹事長の一本化を向けて協議したが、結論は出なかった。町村元官房長官も立候補を表明し、さらに複数の候補が出馬する構えで、候補乱立の流れとなっている。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 野田首相の再選濃厚

  • 野田首相は7日、民主党代表選への立候補を正式に表明した。支持が拡大していた細野環境相が立候補を見送ったことで、野田首相の再選の可能性が高まっている。
  • 首相は「国政の重要な諸課題を中途半端な形で放置することはできない」と表明。特例公債法案、「一票の格差」を是正する衆院選挙制度改革法案、社会保障制度改革を議論する国民会議の設置、震災復興、原発事故対応などに、引き続き取り組む意欲を示した。
  • 細野氏の立候補見送りで、民主党内では首相の対立候補を擁立する動きが加速している。しかし、党内では野田首相再選の流れが強まったとの見方が急速に広がっている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 谷垣、石原氏出馬へ

  • 自民党の谷垣総裁は7日、総裁選に立候補する意向を表明した。一方、党執行部から石原幹事長も立候補の意向を固め、11日にも表明する。
  • 共倒れを懸念する大島副総裁が、候補一本化の調整のために谷垣、石原両氏と会談をしたが、どちらも譲らなかった。両氏の決裂、出馬は避けられない見通しだ。
  • 町村元官房長官も7日、出馬を表明した。町村派から安倍元首相も出馬意向を固めていることについては「最後まで(一本化を)お願いしていくが、最終的には本人の判断を尊重しなければならない」と述べた。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 自民・石原氏出馬へ

  • 自民党総裁選で、石原幹事長が出馬の意向を固めた。谷垣氏と石原氏は、大島副総裁を交えて候補一本化を協議。谷垣氏は石原氏に協力を求め、大島氏も立候補を思いとどまるように説得したが、石原氏は譲らなかった。
  • 石原氏は、森元首相、青木元参院議員会長ら各派閥の有力者の支持を得ており、同氏を軸に総裁選が展開する見通しとなっている。町村元外相も7日に正式に出馬表明をした。石破前政調会長、安倍元首相も出馬の意向を示している。
  • 一方、民主党の代表選では、野田首相が7日に出馬の意向を表明した。有力な対抗馬の細野環境相が出馬を断念したことで、首相支持の声が広がっている。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 なりすまし医師、健診か

  • 東京都板橋区の病院で2010年と2011年におこなった区民の健康診断で、医師免許を持っていない疑いのある男性が診断に関わっていたことが分かった。男性は、実在する医師になりすましていた。
  • この男性の健診を受けた可能性のある受診者は、約2300人に上る。現在、病院は健診結果の見直しを進めている。これまでに生命にかかわるような重大な見落としや間違いはないとしている。しかし、結果の訂正が必要な受診者が約100名おり、再受診の手続きを取っている。
  • 男性は医師専門の人材紹介会社を通して雇用した。病院は、男性を医師法違反の疑いなどで刑事告発する方針だ。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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