2012.09.05 wed

新聞1面トップ 2012年9月5日

新聞1面トップ 2012年9月5日


【リグミの解説①】 東京新聞のトップ記事
本日の東京新聞のトップ記事は、電力会社側の「本音」が原発を稼働し続けるために再処理事業をするものであったことを報じています。使用済み核燃料の再処理事業は、燃料の安価な確保と安全保障のためとしてきた「建前」が崩れた、と主張しています。

原子力エネルギーの推進派と反対派は、双方に「無責任」という言葉を投げかけています。

推進派は、原発がなくなれば、第1に、燃料代が上昇が電気料金に跳ね返り、国内経済の空洞化と雇用の悪化が起きる、第2に、石油等に依存するとエネルギー安全保障の問題が発生する、第3に、再生可能エネルギーは高価で安定せず適地も限定されるが、こうした現実を考えずの原発ゼロを主張するのは、「無責任」であると主張します。

一方の反対派は、原発は第1に、福島第1原発事故で証明されたように安全に根本的な問題があり、いったん事故になれば被害が甚大であること、第2に節電とピーク時の電力の融通と再生可能エネルギーの普及を図れば原発に依存せずに済むこと、第3に、原発は使用済み核燃料の最終処理問題が決まっておらず、「トイレのないマンション」のようなもので、こうした構造的欠陥をもった設備を使い続けるのは「無責任」であると主張します。

推進派と反対派の「ビュー(視点)」には、それぞれ「理」があります。だから、双方の「理」を認め合い、問題解決の糸口を協働して探求しないと、本当の原子力エネルギー政策は具体化しないと思います。第3の「ビュー」を土俵として用意し、そこに双方が乗り、課題解決の方策を協働して探求することはできないでしょうか。


この土俵は、今から100年後の日本の姿を現しています。2112年に、日本はどうなっているか。世界はどうなっているか。双方とも、自分の世代で終わらない遠い将来を一緒に構想し、優先すべき課題を明らかにする。そこで、2012に存在する日本の原発の現実に立ち戻り、もう一度、互いの「理」をすり合わせる、というものです。

大きな時間軸と責任領域を共有すれば、日本人はきっと生来のチームスピリットを発揮し、真の「最適解」を創造できるはずです。

【リグミの解説②】 読売新聞と朝日新聞ののトップ記事
読売と朝日は、共に政府が尖閣諸島の国有化を決めたとする記事です。違いは、報道のポイントです。読売は、中国の反応については触れていませんが、朝日は中国の反発に配慮する必要性をより直接的に示唆する書き方です。


外交を揺るがす領土問題は、長らく外交の実務者レベルで平穏に経過するよう水面下で処理されてきましたが、日中双方の国内事情でそうもいかなくなってきました。中国側には、ネット世論を含む反日的な言動があります。日本側には、地方(東京都や大阪市など)が中央政府に反旗を翻す政治の下剋上があります。

この事態に対して、外国(米国など)は利害を共有しています。ここでも、日中の「ビュー(立場)」に対して、第3の「ビュー」が用意され、調停を進めることが結局は、長い目で見てすべての国々にとって、良い結果をもたらすのではないかと思います。反目し合う事態になっても、とにかく「対話」を断絶しないこと。これがすべての大前提ではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 尖閣売買、国と合意

  • 政府は、尖閣諸島の地権者との間で、魚釣島、北小島、南小島の3島の売買契約を交わすことで合意した。購入額は約20億5千万円となる。
  • 尖閣諸島は東京都が購入を目指していたが、国有化されることになった。東京都が求めていた船だまりや灯台などの構造物は作らず、現状のまま維持する。
  • 尖閣諸島の実効支配を強めることが、国有化の目的だ。平穏で安定した維持管理のため、国有化後は海上保安庁が島を所管する方向となる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 尖閣、国購入で合意

  • 野田政権は、尖閣諸島を20億5千万円で購入することを地権者と合意した。購入資金は、今年度予算の予備費から拠出する方針。
  • 先行取得を目指していた東京都の石原知事に政府高官が会い、尖閣諸島の国有化方針を伝えたと見られる。中国や台湾を刺激するのを回避するため、石原知事が求めている尖閣諸島の港湾施設整備に応じないことも伝えたと見られる。
  • 尖閣諸島の領有権を主張する中国は国有化に反発しており、購入を閣議決定すれば批判を強めるのは避けられない。野田首相周辺は、9月下旬の日中首脳会談を想定し、そこで日本政府の国有化方針を伝えたい、とする。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 大使車襲撃、男2人逮捕・起訴せず

  • 在中国日本大使館によると、丹羽中国大使の公用車が襲撃され日本国旗が奪われた事件で、北京市公安当局が2人の男を「治安管理処罰法」に基づき、5日間の行政拘留処分にした。
  • 外交官の地位をを規定したウィーン条約では、国旗を掲げる権利や国内の移動の自由を確保する義務を定めている。大使公用車襲撃事件は同条約に抵触する可能性があったが、公安当局は計画性のない衝動的な事件で、負傷者もおらず犯罪程度は軽いと判断し、逮捕・起訴は見送った。
  • 日本大使館は、改めて遺憾の意を表明し、北京公安当局に事件の再発防止と、在留日本人の安全確保を強く要請した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 電気自動車充電4000ヵ所

  • 日産、住商、昭和シェル石油、NECが出資する「ジャパンチャージネットワーク(JCN)」が中心となって、電気自動車(EV)の急速充電設備を2020年までに4000ヵ所に増やす。
  • JCNは、JX日鉱日石エネルギーや出光興産など石油元売り4社とも提携し、ガソリンスタンドの決済カードの共用し、充電設備の共同整備も進める。充電サービスは、トヨタ自動車や中部電力も独自に展開しており、日立製作所やNTTデータなども充電インフラ整備の実証実験に取り組んでいる。
  • 国内のガソリンスタンドは4万ヵ所弱あるが、その1割相当まで急速充電設備が増えると、EVの普及に追い風となる。急速充電設備の方式は、日本の「CHAdeMO」方式と欧米の「コンボ」方式の規格争いがあり、日本が普及度で各国を一段と引き離すことで、規格争いを優位に進める効果も期待できる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 再処理「原発維持のため」

  • 原子力委員会が原発推進側を集めた昨年11月の秘密勉強会で、電気事業連合会(電事連)の幹部が、使用済み核燃料の再処理事業を続ける理由は、原発が稼働できなくなるのを防ぐため、と明言していた。
  • 日本の原子力政策の前提は、再処理で出たプルトニウムを使い、混合酸化物燃料(MOX燃料)にしてプルサーマル発電で再利用するというもの。再処理は、資源小国である日本でウラン資源を節約し、安全保障を高めるためとされてきた。
  • これまでの再処理の前提がうそで、原発を運転し続けるための方便だったことがはっきりしたことで、再処理事業の存在意義がますます揺らぎそうだ。東京新聞の調査によると、国内の約6割の原発では、稼働を続ければ数年内に使用済み核燃料プールが満杯になり、それ以上稼働できない状況に陥る。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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