2012.09.02 sun

新聞1面トップ 2012年9月2日

新聞1面トップ 2012年9月2日


【リグミの解説】

戦略は資源配分
新聞を読むと、「戦略」という言葉によく出会います。一国の外交活動は「戦略」であり、一企業のビジネス活動も「戦略」と
呼ばれます。「戦略」とはそもそも、何か。いろいろな定義がありますが、戦略は基本的に「資源配分」の仕方と理解すればいいと思います。「ヒト、モノ、カネ」という基本的な活動資源(元手)を、どう有効に配分し、求める効果を上げるかを決めるのが戦略です。

米国のアジア太平洋戦略
読売新聞は、米国が中国に対抗して、「アジア太平洋回帰」の戦略方針を掲げて、太平洋の島嶼(とうしょ)国に接近する様子
を報じています。米国が国家資源の「ヒト、モノ、カネ」をアジア太平洋に重点的に配分するのであれば、それは明確な戦略だと言えます。ではどのぐらいの資源を割り振るのかというと、クリントン国務長官が3200万ドル(約25億円)の援助を表明した、と記事にあります。これは、米国の国家予算を考えれば、極めて少額の資源配分に思えます。一方の中国は、2009年だけで2億ドル超(約157億円)を支援していると推定されています。米中のどちらの戦略(「カネの配分」)がより効果を上げるか、注目です。

戦略なき予算主義
朝日新聞は、原発から出る核のゴミの最終処分場を探すのに、「原子力発電環境整備機構(NUMO)」という組織が、2011年度だけで35億円(12年間で計487億円)使い、候補地は未だにゼロである、と報じています。巨大な年間予算を有する電力会社からすれば、数十億円の「カネ」はたいした痛みを伴わないものかもしれません。しかし、それは米国が「アジア太平洋回帰」を宣言する”具体的な手土産”になるぐらいの絶対額でもあります。それを12年間も使い続け、500億円近く投じて候補地ゼロでは、「戦略」の名に値しません。NUMOは、「戦略なき予算主義」だったのでしょう。「脱原発」の流れを受けて、国が直接に最終処分場探しに乗り出す方向を検討しているようですが、「戦略なき予算主義」を踏襲するようであれば、初めから結果は見えています。

理念と目的あっての戦略
日経新聞は、政府が尖閣諸島を地権者から、約20億円で直接購入する方向であることを伝えています。こちらも、日本政府の国家予算を考えれば、わずかな「カネ」です。しかし、日本と中国との外交関係を考慮すれば、大きなインパクトのある投資になりそうです。しかし、「効果が上がる資源配分(カネの投じ方)」だから、自動的に「良い戦略だ」、ということにはなりません。なぜなら、「戦略」が有効かどうかは、目指す「目的」や背景にある「理念」を実現できるかどうかにかかっているからです。戦略は手段であり、「目的」ではありません。そして戦略の価値は、「理念」の中身次第です。日本政府の戦略力が問われています。



讀賣新聞

【記事】 米、中国海洋戦略に対抗

  • クリントン米国務長官は8月31日、南太平洋のクック諸島・アバルアで開催された太平洋諸島フォーラム(PIF)に初参加し、「21世紀は米国にとって太平洋の世紀だ」と明言した。太平洋の島嶼(とうしょ)国に対する中国の影響力が急拡大する中、オバマ米政権は「アジア太平洋回帰」の戦略方針を掲げており、クリントン長官は太平洋の戦略的、経済的重要性を強調した。
  • 長官は、エネルギー開発や沿岸警備分野などで島嶼(とうしょ)国への総額3200万ドル(約25億1000万円)の経済援助や技術協力の拡大を示した。違法漁船の監視活動に対する米海軍の協力と、第2次世界大戦中の不発弾処理で350万ドルの新規拠出も発表した。
  • 一方、中国は公式データを明らかにしていないが、オーストラリアのロウィー研究所によると、中国が自ら承認する島嶼8ヵ国への支援額は2009年には2億ドル超に達しており、4年前の2005年の6倍以上になる。日米などは、中国の水面下での影響力の拡大を警戒しており、クリントン長官は「中国の行動が公平で透明であることを望む」と語った。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 原発ごみ処分場探し、487億円投じ候補地ゼロ

  • 原発の使用済み核燃料から出るごみを地中に埋めて捨てる「最終処分場」を探すために、昨年度までの12年間で計487億円を投入していた。朝日新聞の調査で判明した。電力会社が集めた電気料金でまかなわれ、大半は人件費と広報費として費やされた。
  • 処分場探しを担う「原子力発電環境整備機構(NUMO)」の財務資料によると、2011年度の費用計35億円のうち、人件費に12億円、広報費に8億円を費やした。福島第1原発事故で広報費は3分の1に減らした。処分費は、電気料金でまかなう「原価」に含まれており、月間300キロワット時使用の家庭で、月額22円の負担となる。
  • NUMOは多額の人件費と広告費を投入してきたが、処分場はいまだに決まらず、処分計画は宙に浮いたままだ。「脱原発」を進める場合には、処分場の必要性がより高まる。このため、経済産業省は今後、資金の使い道や処分場探しの方法を見直す方針であり、国が主体的に処分場探しにかかわることも検討する。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 除染困難な建物続出

  • 東京電力福島第1原発事故に伴い、国が直轄で除染作業を行う「除染特別地域」で、作業対象外となりそうな建物が続出している。農家の古い土壁や震災の被害が障害となり、高圧放水などの除染作業によって破壊される恐れが事前調査で判定されたためだ。
  • 除染特別地域は、警戒区域と計画的避難区域に指定された県内11市町村が対象となる。環境省は3月までに実施計画を作る予定だったが、実際に計画ができたのは6市町村にとどまる。古い土壁の農家が多い飯館村や川内村、津波や地震で傷んだ家屋もある楢葉町で、「除染作業困難」の判定が続く。
  • 環境省は、崩壊の恐れがある建物も極力「対象外」とはせず、タオルで拭き取るなど簡易な方法を取ると説明している。飯館村は、「対象外」とされた建物について、解体して東電に賠償請求できる制度を環境省に求めているが、環境省側の回答はまだない。放射線量低下に期待していた住民に、困惑が広がっている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 尖閣、国が直接購入へ

  • 政府は、尖閣諸島の3島を9月中旬に地権者から直接購入する方向で最終調整に入った。現在は個人が所有し、総務省が賃貸している魚釣島、北小島、南小島を20億5千万円で一括購入する方針だ。
  • 尖閣諸島は5つの島と3つの岩礁から成る。5島のうち大正島は国有で、久場島は防衛省が借り上げている。残りの3島が今回の買い取り対象となる。国有化後は、海上保安庁を管轄する国土交通省が保有する。
  • 先に購入に動いていた東京都は、漁船の退避設備を整備することを国有化容認の条件に挙げていた。しかし政府は、悪天候時に外国船の施設利用依頼を拒めず、かえって外国人の上陸を増やしかねないとして、同設備の整備は見送る方針だ。このため、石原新太郎都知事らが反発する可能性もある。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 夜の被災地、よみがえるチャップリン

  • 東日本大震災の被災地で、活動弁士の語りを交えた無声映画の鑑賞会が開催されている。一般社団法人・コミュニティシネマセンターが、地元団体と協力するなどして昨年秋から続けている。
  • 宮城県岩沼市で、チャップリンの無声映画の上映会に協力したシネマセンターは、昨年6月から被災地支援の映画上映会を200回以上開催している。無声映画の上映会もその一環で、宮城県塩釜市、同県多賀城市、岩手県宮古市、宮城県石巻市に続く5ヵ所目となる。
  • 被災地では、過疎化や地元経済の低迷に震災が重なり、次々に映画館が姿を消す地域もある。シネマセンターの岩崎ゆう子事務局長は「(無声映画などの上映が)映画が再び根づくきっかけにもなってほしい」と語る。今後も支援の上映会を続ける考えだ。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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