2012.08.30 thu

新聞1面トップ 2012年8月30日

新聞1面トップ 2012年8月30日


【リグミの解説】
「想定外」が時代の言葉になって随分経ちます。この便利な言葉が一人歩きして、日本は何か大きな事故や不祥事が起きたときに、「原因に対する責任」を負わずに済む国になってしまいました。

東日本大震災が起きたとき、1000年に一度の大災害であり大津波は想定外だった、と表現されました。しかし実際には、100年ほど前にも東北沖の地震で数10メートルの津波が、襲っていました。東京電力にも津波のリスクを警告する資料が提示されており、福島第1原発の津波対策をするチャンスは何度もあったはずです。しかし東電は、「大津波は想定外だった」と言い続けています。


今朝の朝日新聞、毎日新聞、日経新聞、東京新聞の4紙が、内閣府発表の「南海トラフ巨大地震」の被害想定の記事です。内閣府は、「想定外のない想定を」という方針の下、考えられる最悪の仮定を積み重ねて導き出した、といいます。最悪のケースで32万人以上の死者という内容は、今までの災害規模をはるかに上回るメガ級のものとなる可能性を教えています。32万人といえば、人口の0.3%近く、約350人に1人が犠牲になるレベルです。

こうした巨大で想像を超えた数字が出てくることは、無用に不安を増幅するものだという批判もあるかもしれません。しかし、冷静にシミュレーションを分析して、対策を練るベースを作ってくれるものになると思います。7割にあたる23万人が津波の被害想定であり、今まで後回しになっていた津波対策の重要度がわかります。そして、いろいろと対策を講じれば、被害が5分の1まで軽減されるというのは希望が持てますが、それでも6万人規模の死者想定です。未来のリスクに対応する、組織だった減災プログラムが必要です。

アメリカと日本の考え方の違いを端的に示すものに、「想定の大きさ」があります。アメリカは最悪を想定して、そこから対策を練り、現実がその想定の内側に入ればより被害が少なくて済むことを目指します。日本は、安全を大切にするあまり、安全を確保できる「想定」を小さく見積もり、その内側ではリスクゼロになることを目指してきました。これが「安全神話」を生む一因になっています。アメリカは、「想定」を最大化することで「原因責任」を追求できる体制を整える。日本は「想定」を小さくすることで、真の原因を曖昧にしたまま、起きてしまったことへの「結果責任」を追求する体制でした。

「想定外のない想定を」は、日本人に今求められる知的鍛錬でもあると思います。



讀賣新聞

【記事】 首相問責決議を可決

  • 野田首相に対する問責決議案は29日、参院本会議で野党の賛成多数により可決された。首相問責決議が可決されたのは、民主党では初めてとなる。過去には、自民党の福田首相(2008年6月)と麻生首相(2009年7月)の例がある。
  • 7会派が自らの決議案採決を主張したため、消費増税反対が明記されているにもかかわらず、自民党は可決を優先するために7会派の問責決議に賛成した。谷垣総裁は「野田政権が国政を前に進める力がない、という認識では(7会派と)一致している」と説明。公明党の山口代表は「決議は社会保障・税一体改革を否定する内容で、賛同できない」と語った。民主党は自民党を「自己矛盾だ」(城島国会対策委員長)と批判した。
  • 野党は今後国会審議に原則として応じない方針であり、会期末の9月8日まで事実上の休会状態となる。政局の焦点は、9月の民主党代表選、自民党総裁選に移る。与野党対立が激しさを増す中、秋の衆院解散・総選挙の可能性が高いとの見方が高まっている。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 最悪32万人死亡

  • 南海トラフ沿いで起きるとされる巨大地震について、国の2つの有識者会議が29日、被害想定を発表した。東海地方が大きく被災する最悪クラスでは、32万3千人が死亡する。これは2003年出した想定の13倍に及ぶ。
  • 地震のマグニチュードは9.1で、震度7が静岡県から宮崎県までの10県151市区町村に及び、6強が21府県239市区町村。津波の高さは、20メートル以上の地域が8都県に及ぶ。東日本大震災の1.8倍の1015平方キロが津波で浸水する。中部電力浜岡原発も、建設中の防波壁を想定に入れない場合、最大9メートルまで水につかる。
  • 有識者会議は「最悪クラスの地震が起こる可能性は低い」とも指摘し、適切な対応を取れば死亡者数を最大5分の1まで減らせるとしている。国や自治体は、抜本的な震災対策の見直しを迫られる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 南海トラフ、死者32万人

  • 中央防災会議の作業部会と内閣府の検討会が29日、東海から九州沖を震源域とする「南海トラフ巨大地震」の被害想定を発表した。最悪のケースでは、関東から九州の太平洋側で震度7の激しい揺れと最大34メートルの津波が襲い、死者32万3千人、1015平方キロが浸水し、倒壊・焼失建物が238万6千棟となる。
  • 最悪ケースでは、23万人が津波、8万2千人が建物倒壊、1万人が火災で死亡する。死者数が1万人を超える県は、静岡10万9千人、三重4万3千人、和歌山3万5千人、宮崎3万4千人、高知2万5千人、愛知2万3千人、徳島1万2千人、愛媛1万1千人。
  • 内閣府は「発生確率は極めて低く、対策を取れば被害を減らせる」として冷静に受け止めるよう強調している。国や自治体は、想定に基づいた防災を迫られる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 死者最悪32万人

  • 内閣府の有識者検討会は29日、駿河湾から日向灘の「南海トラフ」を震源域とするマグニチュード9.1の地震が起きた場合、最大32万3千人が死亡し、238万6千棟が全壊・焼失する想定を公表した。政府は、東海、東南海、南海の3連動地震より大規模のM9級を「南海トラフ巨大地震」と呼んで区別し、新たな被害想定の策定を進めている。
  • 死者は、関東から九州・沖縄の30都府県で想定される。津波からの迅速な避難や建物の耐震化で、最悪ケースの死者は6万1千人に減らせる、と内閣府は説明しており、「減災」対策を進めるよう呼びかけている。
  • 政府は、最悪の事態への備えを強化するための特別法を策定する考えだ。秋にまとまる経済被害想定を踏まえて、今冬に南海トラフ地震対策の全体像をまとめる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 M9、死者最大32万人

  • 内閣府中央防災会議の有識者会議は29日、南海トラフでマグネチュード9クラスの超巨大地震が発生した場合、30都府県で最大32万3千人の死者が出る被害想定を発表した。
  • 内閣府は、発生確率は極めて低いとしているが、東日本大震災の教訓から考えうる最大級の地震を想定した。「想定外のない想定を」という方針の下、考えられる最悪の仮定を積み重ねて導き出したものであり、発生確率は「極めて低い」ものであり、「正しく恐れて」と呼びかけている。津波の避難意識の向上により、犠牲者は11万人以上減る。さらに津波避難ビルの活用、建物の耐震化、家具固定、家庭用消火器の配備などの取り組みを実現すれば、死者は5分の1まで抑えられるという。
  • 内閣府は、今秋にも経済被害を見積もり、年度内には国としての総合的な対策をまとめる。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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