2012.08.27 mon

新聞1面トップ 2012年8月27日

新聞1面トップ 2012年8月27日


【リグミの解説】
政治家は、「何ができたか」によって記憶されるのか、それとも、「何ができなかったか」によって記憶されるのか。


民主党政権の初代首相となった鳩山由紀夫さんは、友愛精神に基づく「東アジア共同体」を提唱し、米国の影響を徐々に減らしていくべきと主張しました。沖縄普天間基地の移設問題では、「最低でも県外」と発言しました。実際には「東アジア共同体」を実現する根拠や戦略はなく、その後の尖閣諸島や竹島の領土問題に見るまでもなく、鳩山さんの構想は、空想の域を出ませんでした。普天間基地の移設も、「具体案はある」としながら、実際には代替地を特定できず、沖縄と米国に深刻な不信感だけ残しました。鳩山元首相は、「何ができなかったか」によって記憶される政治家の筆頭格かもしれません。

民主党の2人目の首相となった菅直人さんは、就任後に東日本大震災がという未曽有の大災害が発生。地震と津波の被害、さらに東京電力福島第1原発事故の対応で、文字通り政権全体が右往左往しました。復旧・復興の遅れと、原発事故対応での官邸の過剰な現場介入を批判されました。与野党双方から「菅おろし」の大合唱が起こり、在任期間1年弱の鳩山首相につづいて、在任1年余で辞任しました。菅前首相も、「何ができなかったか」よって人々の記憶に残る政治家になるのでしょうか。

「私の顔を本当に見たくないなら、早くこの法案を通した方がいい」――菅直人首相が掲げた退陣の条件の1つが、「再生可能エネルギー特別措置法案」の成立でした(J-CAST)。1年前の8月26日の同法案成立を置き土産に、菅さんは辞職しました。政治家の仕事の基本は、法律を作ることにあります。とすれば、菅さんは「一仕事」終えて辞めたことになります。

本日の毎日新聞は、遊休状態の工業団地にメガソーラーを設置する計画が目白押しになっていることを報じています。「再生可能エネルギー特別措置法」により、今年の7月から電力会社による再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まったことが大きく後押しをしています。固定価格買い取り制度は、ドイツなどでの先行事例がありますが、消費者に電気料金の上昇のしわ寄せがいくなど、問題点が指摘されています(BLOGOS)。

日本の「再生可能ネルギー特別措置法」が、デメリットよりもメリットの大きい施策となるかどうかは、企業へのインセンティブ(電気の固定買取)がどれだけ投資と技術革新を促し、そこから低コストで高付加価値の電力サービスをどれだけ実現できるか、にかかっています。
再生可能エネルギーの大規模普及による電力の安定供給とコスト低減を実現できたとき、菅前首相は、本当に「何ができたか」によって記憶される政治家になるでしょう。

政治の責任は、国の道筋をつけることです。法律作りは、そのための方便です。一国の為政者は、国が目指すべき方向に正しく進んでいるか見極める「理想主義」と、問題を見据え絶えず軌道修正をする「現実主義」の両方を、バランスさせる必要があります。「理想主義」が空想に堕した鳩山さん。「現実主義」が過剰な現場介入を招いた菅さん。民主党政権の3代目首相の野田さんは、両者のバランスを果たせるでしょうか。



讀賣新聞

【記事】 教職大学院、半数定員割れ

  • 教職大学院の2012年度の入学状況は、全国25校のうち13校で定員割れとなっていることが、読売新聞の調べで判明した。13校で、入学者数が定員に対して60~95%で、25校全体の総定員815人に対して782人(96%)だった。
  • 教職大学院は、高度な職業人の養成を目的とした専門大学院で、2008年に新設され2012年までに計3800人が入学している。学力向上からいじめまで、教育現場が抱える様々な問題に対処できる専門性を持つ教員養成を目指している。しかし、大学院を卒業してもメリットが少ないのが課題となっている。教職採用試験での優遇措置がほとんどなく、現役教員が修了しても待遇などは変わらない。
  • 民主党は2009年のマニフェストで、教員養成期間を現在の4年から6年とすることを掲げている。中教審も、教職大学院を地域に普及させて、教員養成体制の充実を図ることを提言している。文科省は、「教職大学院の修了者の『満足度が高い』という声が多い。まずは学生や教育委員会に教職大学院の利点を知ってもらうことが必要だ」としている。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 全都道府県、防災見直し

  • 東日本大震災を受け、47都道府県と20政令指定都市のすべてが、地域防災計画を見直したか、見直す予定である。朝日新聞の調査で判明した。防災計画を見直したのは46自治体(全体の69%)で、残りの21自治体が近く見直すとした。
  • 地域防災計画は、災害に備え都道府県や市町村が、対策本部設置や避難の在り方などを独自に定めた計画で、災害対策基本法で作成が義務付けられている。国の防災基本計画の内容を反映しつつ、必要に応じて策定・修正する。
  • 調査対象のうち56自治体(84%)が「津波対策」を改訂の重点課題として挙げた。山形県は「500~1千年程度の間隔で発生する地震による津波を想定した対策を講じる」と回答。多くに自治体で、発生頻度が低くても、被害は大きいものへと想定規模を拡大する傾向が見られる。埼玉県、千葉県、徳島県など、原子力災害対策が義務付けられる原発30キロ圏にはない自治体も、原発事故対策を新たに盛り込んでいる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 工業団地にメガソーラー

  • 景気低迷の影響などで”塩漬け”になってきた全国の工業団地を、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設用地として活用する動きが広がっている。メガソーラーは、再生可能エネルギーの柱と期待されている。メガソーラー建設ラッシュの背景には、電力会社による再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度がある。7月から1キロワット時当り42円の買い取りが始まった。
  • 工業・産業団地での建設予定の主なメガソーラー(場所、進出企業、出力)は、「北海道苫小牧市にソフトバンクが11万1000キロワット」「鳥取県米子市にソフトバンクが3万9500キロワット」「長野県富士見市にシャープが9200キロワット」「広島県呉市に寺田倉庫が6000キロワット」「栃木県矢板市にソフトバンク、シャープが4000キロワット」「宮崎県川南町に宮崎ガスが2000キロワット」。
  • 全国には約900ヵ所の工業団地があり、2012年3月末現在で約1億5000万平方メートルが未利用のままだ。財団法人日本立地センターの高野産業立地部長は「長年使われず不良債権となった土地にとっては、メガソーラーが有効な活用法になる」と指摘する。メガソーラー事業には広大な土地と送電設備が不可欠だが、工業団地はその両方を備えている。不良資産化した工業団地を、メガソーラーによって地域経済再生の活路にしたい、と期待する声が上がっている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 在宅医療に地域責任者

  • 厚生労働省は、住み慣れた場所で医療や介護にサービスが受けられる体制を支える中核人材を組織化する。今年度中に全国で7000人以上の責任者を配置する計画だ。
  • まず10月に各都道府県に行政実務に通じた統括責任者を5人程度、全国で約250人置く。さらに各都道府県で150人程度の地域責任者を配置する。医師、看護師、薬剤師、自治体担当者、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどが責任者となり、地域の実情に応じた24時間体制の在宅医療や介護サービスを実施する。今年度中に全国で7千人以上の責任者を配置する計画だ。
  • 厚労省は、医療費を適正水準に戻すため、長期入院の見直しを重視している。入院可能な患者数が限られる現状も踏まえて、病院に頼りすぎる体質を改め、サービスの効率化も狙う。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 父子家庭置き去り

  • 「今より生活が悪くなるのは目に見えている」。東日本大震災で、家事を切り盛りしていた妻をなくした宮城県亘町の会社員鈴木達也さんは、将来の消費増税を思うと、ため息が漏れる。小学2年生の長女と幼稚園児の長男を育てながら、仙台市内の印刷会社に勤務するが、ほとんど残業はできない。
  • 一体改革では、2014年4月から「遺族基礎年金」の支給が従来の母子家庭だけでなく、父子家庭も対象となる。しかし、鈴木さんのように専業主婦の妻をなくした父子家庭は、対象外となる方向だ。「一家の大黒柱がいなくなることで生活の収入がなくなるリスクに対する給付」と厚労省は説明する。
  • 鈴木さん一家の苦悩は、今年3月に東京新聞で紹介され、読者から大きな反響があった。だが、行政側が救済しようという機運は、盛り上がらない。母子家庭の平均年収が213万円であるのに対して、父子家庭は421万円(厚労省の2006年度調査)であることが一因だが、父子家庭も4割近くが300万円未満だ。無利子の貸付金制度や就労支援など、父子家庭へのサポートも進んでない。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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