【リグミの解説】
社会には、さまざまな「安定装置」があります。不測の事態や危険に対処し、社会に「安全と安心」をもたらす活動や仕組みなどはすべて、「安定装置」の役割を果たします。世界でも稀といっていいほど安定した社会を維持してきた日本で、今さまざまな「安定装置」が機能しなくなっています。
領土・領海の争いがなく、国境が定まっていることは、国家の安定の基本中の基本になります。読売新聞と毎日新聞は、竹島・尖閣諸島の領有問題に関して、野田首相が異例の記者会見を開いた内容を詳細に伝えています。日本はかつて、鎖国という究極の「安定装置」を設け、250年以上戦争のない国家体制を維持しました。しかし、明治維新後は一転して、欧米列強に伍して帝国主義的な領土拡張を図り、最終的に得たもの以上を失いました。領土問題は、戦争と対のテーマです。この分野で、あらゆる知恵を働かせて「安定装置」を再構築することは、国家の最優先事項です。
朝日新聞は、使用済み核燃料を地中処分できるようにする法改正について、報道しています。安定した豊かなエネルギーの確保は国家の安定と繁栄の礎です。戦後の日本は、原子力エネルギーを未来の究極のエネルギー源と位置付け、一貫して追求してきました。その原発の在り方が大きく揺らいでいます。そもそも「安全神話」という虚構の「安定装置」を埋め込んだことが、問題を複雑にしました。これからの日本は、政治・行政や企業組織が、「情報開示」と「説明責任」を徹底し、事実を基に、一緒に知恵を出し合う「衆知主義」の社会を構築することが、未来志向の「安定装置」になるのではないでしょうか。
日経新聞は、厚生年金基金からの加入企業の離脱を認める長野地裁の判決の影響を伝えています。公的年金と私的年金の充実は、日本の社会の安定に大きく寄与してきました。しかし、経済成長が止まり、年金受給者となる高齢者と、年金制度を支える若年勤労者のバランスが崩れた今、生涯収入をどう設計し、社会全体で生活の保障をしていくか、考えなければならない段階に来ています。人口問題は、時限爆弾です。今は大丈夫でも、将来かならず問題が顕在化します。ここでも新しい「安定装置」を根本から設計し直す必要性が、「待ったなし」です。
東京新聞は、中学生がレスキュー部を作った話です。東日本大震災を体験した日本人は、我が国が地震と津波の影響から今後も逃げられないことを痛切に思い知らされました。今や中学生が社会の「安定装置」をどうやって自分たちで作れるか、真剣に考え行動する時代です。未来を担う子供たちが社会を思い、できることを率先してやろうとする姿は、厳しい大震災の体験を経た日本にとって、希望の光です。
讀賣新聞
【記事】 竹島「韓国が不法占拠」
- 野田首相は、首相官邸における24日の記者会見で、竹島について「歴史的にも、国際法上も日本の領土であることは何の疑いもない」「戦後韓国は不法な『李承晩ライン』を設定し、力をもって不法占拠した」と指摘し、韓国が竹島を不法占拠していると明言した。民主党政権の首相が、「不法占拠」の表現を使ったのは初めてとなる。
- 首相は、韓国の李大統領による竹島上陸や、香港の民間活動家らの尖閣諸島への不法上陸に関し、「遺憾の極みだ。看過することはできない。国の主権を守り、領土・領海を守ることに、毅然とした態度で冷静沈着に不退転の覚悟で臨む覚悟だ」と強調した。首相の親書が返送されたことについては、「外交上あり得ない行為で、大変遺憾だ」としながらも、「当事者同士が冷静さを失わないことも欠かせない。韓国側の思慮深く、慎重な対応を期待する」と訴えかけた。さらに、「法と正義に照らして、決着するのが王道だ」と述べ、韓国に国際司法裁判所(ICJ)への共同付託に応じるように改めて求めた。
- 首相による領土・領海に関する記者会見は異例で、国内外に日本の立場への理解を求める狙いがあるとみられる。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 核燃料、地中処分へ法改正
- 経済産業省は、原発の使用済み核燃料の「最終処分法」を改正する方針を固めた。直接地中に埋めて捨てる「直接処分」ができるようする。現在の最終処分法は、再利用を前提にしており、直接処分については定めがない。経産省は、直接処分も可能となる改正が必要と判断、来年度の通常国会にも改正案を提出する。
- 政府は新しいエネルギー政策を定めるため、2030年の電力に占める原発比率を「0%」「15%」「20~25%」の3つの選択肢を示している。「0%」シナリオでは、全量を「直接処分」とし、「15%」「20~25%」では、「再処理」も「直接処分」もあり得る、としている。このため、政府はどの選択肢を選んでも、これまでの全量を「再処理」する政策を見直す考えだ。
- 福島第1原発事故前まで、全国の原発から年間約1千トンの使用済み核燃料が出ていた。政府と電力会社は、青森県六ケ所村の再処理工場に使用済み核燃料を持ち込み、再利用できる核物質を取りだし、残りを「高レベル放射性廃棄物」として地下に埋めることにしてきた。しかし、再利用は原発を増やし、原発比率を上げていくことが前提にあり、今回の3つの原発比率シナリオのどれを選択しても、再処理の必要性がなくなるか、ないしは薄れる。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 首相、解決へ「不退転」
- 野田首相は、24日に首相官邸で記者会見し、韓国の李明博大統領の竹島上陸と、香港の活動家らの尖閣諸島への不法上陸について「誠に遺憾の極みで看過できない」と批判。「毅然とした態度で、冷静沈着に不退転の覚悟で問題解決にあたる」とする考えを明らかにした。首相が領土問題について記者会見をするのは異例。
- 首相は、日本が17世紀半ばには竹島の領有権を確立していたなどと指摘し、「戦後、韓国は力をもって不法占拠を開始した」と明言した。今後は「国際司法裁判所で決着をつけるのが王道だ」と述べ、韓国側に共同提訴に応じるように改めて求めた。李大統領宛の親書が送り返されたことについて、「外交慣例上ありえない。反論があるなら(大統領の)親書を送り返すべきだ。誠に遺憾で抗議する」、と強い不快感を示した。
- 首相は中韓両国に対して、「いたずらに国内の強硬論をあおって事態をエスカレートさせることは、いずれの国の利益にもならない」と呼びかけるとともに、「冷静な対応に努め、外交上の礼節を重んじ、地域の将来のために隣国とともに努力する」と述べ、過度の対立を避ける考えも示した。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 厚年基金、深まる苦境
- 長野地裁は24日、財政が悪化した厚生年金基金からの脱会をめぐる訴訟で、長野県の建設会社の脱退を認める判決を出した。「脱退の自由」が認められたことで、財政難の厚年基金から企業が離脱する動きが加速しそうだ。
- 厚生年金保険法や規約には、任意脱退を直接的に定めた規定がない。このため「脱退の自由」が認められるかどうかが最大の争点だった。長野地裁は、長野県建設業厚生年金基金で23億円超の使途不明金が発覚し、元事務長が指名手配されたことを重視。「やむを得ない事由がある場合」は、代議員会が認めなくても脱退できるとの判断を示した。
- 条件付きながら脱退が認められたことで、基金からの離脱を模索する企業の背中を押すことになりそうだ。ただ、脱退は自社分の積み立て不足を一括納付することが条件で、負担金は数十億円に達するケースもある。負担金を用意できる企業だけが脱退し、基金には経営の厳しい企業ばかりが残されかねない。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 こちら中学レスキュー部
- 中学校の部活動としては全国でも珍しい「レスキュー部」が、東京都荒川区立南千住第二中学校に発足した。東日本大震災を受け、斉藤進校長の発案で今年7月に発足。文部科学省にも「管轄部署がない」という新ジャンルとなる。
- 24日から初の合宿による訓練が始まった。訓練は、震度6強の首都直下地震が発生、校舎への大きな被害はなく、避難所として周辺住民を受け入れることが決まった、と想定。食事の確保や、避難誘導を訓練。夜は東京消防庁職員による救助機材の実演を見学し、教室に設営した簡易ベッドで眠りについた。
- 3年生の山田桃子さんは「東日本大震災のときに何もできない自分を情けなく感じ入部した。合宿を通じて得たことを、もしもの時につなげたい」と意欲を見せる。レスキュー部は今後、震災時の危険区域を記した地域防災マップなども作成する。斉藤校長は「大震災では地元の中学生が活躍したと聞いた。今後も防災意識を高める活動を続けたい」と話す。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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