2012.08.23 thu

新聞1面トップ 2012年8月23日

新聞1面トップ 2012年8月23日


【リグミの解説】 
今日の企業活動のカギを握るのは「ブランド」です。ブランドとは、その企業が提供する価値の総体であり、企業を取り巻く人々の肯定的な評価と信頼によって輝くものとなります。これは国家にも当てはまると思います。特に、軍事力や経済力を背景とした「ハードパワー」ではなく、 社会の在り方、国民の姿、文化や伝統、海外で取り組んでいる活動などによって培われる「ソフトパワー」は、一国のブランド価値そのものです。


今日の読売新聞は、韓国政府が野田首相が李大統領に送った親書を「送り返す方針」であることを伝えています。これは外交儀礼上異例のことで、今後の展開に注目せざるを得ません。外交は、長い年月をかけて実績を積み上げ、国家間の信頼関係を築くことで、安定的で未来志向のものとなっていきます。しかし、企業ブランド同様、一旦信頼のベースを壊してしまうと、再構築にものすごく長い時間と労力を要することになります。それゆえ、外交においては事の他、手続き(プロトコル)を大切にします。外交儀礼と呼ばれるものは、単なる儀礼ではなく、外交関係の安定と信頼を維持する「装置」であるといえます。

日本側から見ると、韓国が主張する親書返却理由は、少し子供じみて見えます。「竹島」か「独島」かは双方の主張であり、織り込み済みのこと。それ以外に、天皇謝罪要求への抗議も含まれており、いずれにしても、正式に「No」をきっちりと主張を伴って戻せば良いと思います。いろいろと駆け引きや思惑もあると思いますが、外交儀礼=プロトコルという手続きの装置をはずしてしまうと、「何でもあり」の状態になってしまい、負の連鎖が止まらなくなる恐れがあります。

日本も韓国も、今や世界に誇れる「ブランド国家」であるといえます。経済が発展し、たくさんの優秀な工業製品を世界に供給しているだけでなく、ソフトコンテンツでも世界的なビジネスを展開し、さらに食文化や歴史や伝統でも世界を魅了するようになっています。その両国が、外交儀礼の基本を捨てて、いがみ合うようでは、ブランド力も何もあったものではありません。

しかし考えてみれば、日韓両国の国民が相手国を本当に「ブランド」と認めるためには、相手国の歴史にも敬意と肯定的評価をできるようになることが、大前提です。歴史問題が「過去」でなく、「現在」のテーマになってしまっているため、隣国同士の真の信頼関係を構築できないまま、戦後70年近くもの年月が経っているのだと思います。外交は外交で、しっかり着地点を探り、最悪のシナリオに陥らないように、複数の安定装置を働かせてもらう必要があります。そしてより根本的にには、国民レベルで、両国の本当の信頼ベースづくりを「一から始める覚悟」が、今こそ必要なのだと思います。



讀賣新聞

【記事】 首相親書、韓国が返送へ

  • 野田首相は、李明博大統領の竹島上陸と天皇陛下への謝罪要求発言に遺憾の意を表明する親書を送ったが、韓国政府関係者は22日、韓国が親書を送り返す方針を固めたと明らかにした。早ければ23日にも返送するという。
  • 韓国政府は、李大統領が訪問したのは「独島」であり親書に書かれた「竹島」ではなく、「事実ではない」との認識を示した。韓国大統領府高官も、「事実でない指摘について答えること自体が矛盾」と語った。
  • 政府は、親書が送り返されることは「あり得ない非礼な対応だ」と受け止めており、返送されれば「外相や官房長官らが速やかに正式な抗議をし、韓国政府の対応を注視することになろう」と首相周辺は述べた。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 「原発0%」支持最多

  • 野田政権が新しいエネルギー政策を決めるための「国民的議論」としてきた討論型世論調査などの結果が22日、出そろった。2030年の原発割合について、3つの選択肢「0%」「15%」「20~25%」への国民の意見を聞き、エネルギー政策を決める方針を打ち出した。「原発0%支持」は、討論型世論調査(調査後)47%、意見聴取会68%、パブリックコメント90%とすべての調査で最も多く、政策決定に大きく影響しそうだ。
  • 討論型世論調査では、電話調査、討論会前、討論会後の3回調査をし、意識の変化を調べた。「2030年に原発0%支持」は、電話調査時33%、討論会前41%、討論会後47%と大きく伸びた。「15%支持」は、同17%、18%、15%と若干減少。「20~25%支持」は、13%、13%、13%と横ばいだった。曽根泰教実行委員長(慶応大学大学院教授)は、「原発0%支持」が増加した理由について、討論会で話し合ったり専門家委の話を聴いた結果、「原発の安全性に得心がいかない人が多かった」と説明。エネルギー選択で何を最も重視するか、という問いに「安全の確保」が81%を占めた。他の理由は、「安定供給」16%、「発電費用」2%、「地球温暖化防止」1%だった。
  • 意見聴取会の参加希望者と、とパブリックコメントで意見を寄せる人は、脱原発を求める人が多い傾向があるため、「原発0%支持」がより高い数字となった。特にパブリックコメントでは、「原発0%支持」90%のうち、81%が「すぐに0%」という意見だった。政権は、世論調査などに詳しい大学教授ら8人による「国民的議論に関する検証会合」を22日と27日に開き、調査結果をどうたらえるべきかまとめる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 首相、抗議団体と面会

  • 野田首相は22日、毎週金曜日に首相官邸前で抗議活動を行っている反原発市民団体「首都圏反原発連合」の代表者11名と面会した。首相が官邸で抗議行動の参加者と会うのは、きわめて異例のことだ。首相は、政府の原子力政策について、「基本的な方針は脱原発依存だ。中長期的に原発に依存をする体制を変えていくことを目標にしている」と述べた。
  • 同団体は、①大飯原発の運転再開中止、②現在検査のために停止している全原発を再稼働させない、③国の原子力政策を全原発廃炉へ転換、④原子力規制委員会の人事案の撤回―を要求した。原発再稼働について、「命基準で政策を作ってほしい」と主張。エネルギー政策については、「当面は火力発電などで補い、長期的には自然エネルギーで可能だと考える」と訴えた。
  • 首相は、再稼働について「安全性の確認をした上で、国民生活への影響等の必要性から、総合的に判断した」と説明し、「特定の経済団体に影響されての判断ではない」と強調した。エネルギー政策については「国民が安心できるエネルギー構成のあり方を、政府として責任を持って方向性を定めたい」と語った。大飯原発の運転再開中止や全原発廃炉の要求については、「今日の意見なども参考に判断していきたい」と述べるにととめ、議論は平行線に終わった。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 新興国の通貨安、収益圧迫

  • 新興国の通貨下落が企業収益を圧迫している。企業は収益源の多様化をもくろんで新興国事業を強化した結果、景気変調による現地通貨安の影響をより受けることとなり、対策を迫られている。
  • 各新興国通貨安による利益押し下げは以下の通り。①日産自動車=ルーブル安で▲94億円、②ホンダ=ブラジルレアル安などで▲60億円、③第一三共=インドルピー安で▲60億円、④スズキ=ルピー安で▲59億円、⑤日野自動車=インドネシアルピア安で15億円、⑥コマツ=豪ドルとルーブル安などで11億円、⑦ヤクルト本社=メキシコペソとレアル安で2億円。
  • これまで企業の円高対策は、主要通貨の対ドルや対ユーロに軸足が置かれていた。新興国通貨は事業好調の上、対円でも上昇基調だったため、対応が遅れ気味だった。しかしここにきて、新興国景気にも減速懸念が台頭し、新興国での収益比率が高まっていることもあり、ドルやユーロ同様の抜本的対策を要する局面に入ってきた。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 原発ゼロ、民意鮮明

  • 2030年時点の原発依存度をめぐる国民的議論の結果を検証する、政府の専門家会合の第1回が、22日に開催された。パブリックコメント(意見公募)の集計経過や意見聴取会のアンケート結果が報告された。いずれでも「原発0%支持」が、「原発15%支持」と「原発20~25%支持」を圧倒しており、「原発ゼロ」を支持する国民の声を無視できない状況に政府を追い込んでいる。
  • パブリックコメントでは、約8万9千件のうち約7千件の分析が完了。81%が即時の原発ゼロを求めた他、8.6%も段階的な原発ゼロを訴え、両者合計で89.6%となった。意見聴取会で来場者約1200を対象に行ったアンケートでは、「その他」意見を除くと「原発0%支持」が81%で、会場での発言を希望した人への調査でも68%が「原発0%支持」だった。討論型世論調査(DP)でも、電話調査時には「原発0%支持」が32.6%だったが、議論や専門家の考えを聞くなどして、最終的には46.7%に伸びた。「原発15%支持」は15.4%、「原発20~25%支持」は13%だった。
  • この日の会合では、意見公募は強い意見を持つ人が出すので比率が偏る可能性が高く、世論調査が本当の国民の縮図ではないかという指摘(田中愛冶・早稲田大教授)がある一方で、意見公募は世論調査と違って誰でも意見を出せ、国民参加が保証されている(小幡純子・上智大法科大学院教授)との反論があった。27日の第2回会合を経て、9月頃に開くエネルギー・環境会議で政策を決定する見通しだ。鮮明になった民意をどう政府はエネルギー政策に反映させるのか。国民は厳しい目で見つめている。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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