【リグミの解説】
今日の新聞1面トップ記事は、読売新聞が「領土問題関連」で、残りは「原子力エネルギー関連」となっています。朝日新聞は、今夏の節電効果により、原発なしでもピーク電力需要に対応できるのではないか、と示唆しています。毎日新聞は、脱原発を求める世論に押され、政府が2030年代に原発ゼロにする方針案を検討していることを伝えています。日経新聞は、経産省が構想するマンション向けの節電プログラムの記事で、背景には原発再稼働の見通しが立っていない現実があると指摘しています。そして東京新聞は、30年前のドイツに渡ったプロ通訳士が見た、原発に頼らない地域分散型のエネルギー体制を、日本にも導入しようとする動きを報じています。
暑い夏を、私たちは原発なしで乗り切れるのでしょうか。焦点は、原発依存度が高く大飯原発を再稼働した関西電力の状況です。朝日新聞は、7月のピーク日となった27日には、「原発なしでは150万キロワットが不足した」とする関電社長の言葉を伝えています。ここで原発推進派と脱原発派の評価が大きく分かれることになるのだと思います。推進派は、「やっぱりそうか、再稼働してよかった」と納得するでしょう。脱原発派は、そう単純な話ではない、と見ています。朝日はその観点からの記事で、7月27日は西日本全体では900万キロワットの電力余裕があり、「融通」で関電もしのげたはずだ、という主張を支持しています。
ここで考えるべき視点は3つあると思います。第1が「命」です。電気が必須である需要家への対応です。病人や障碍者や幼児や高齢者などの弱者の生命の危険に関わる事態をどう回避するか。企業活動の根幹に影響することも、ほぼ同列で議論すべきかもしれません。電力需要を必須とするセグメントを明確に切り分け、短期・中期の対応策を練ることが必要かつ有効だと思います。
第2が「便利」です。戦後の日本はひたすら便利を追求してきた社会です。三種の神器と言われた冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビの普及に始まり、日本人はあらゆるところに「便利」を求めてきました。今や日本中の隅々まで自動扉があり、自動販売機があり、コンビニエンス・ストア(直訳すれば「便利商店」)があります。このような国は世界中どこにもないと思います。しかし、誰も乗っていないエスカレーターが動き続けたり、明らかに過剰に冷え過ぎの冷房環境があったりもします。無自覚に電力に依存した「便利」に対して、社会が新しい違った「便利」の在り方を模索すれば、きっと大きなビジネスチャンスも広がるでしょう。
第3が「イノベーション」です。必要あるところに技術革新と新発想の取組が生まれ、変革が創造されます。それを生み出すのは隠れたニーズであり、既存の資源の枯渇であり、そして規制です。1973年に起きた第一次石油危機(オイルショック)のあと、燃費に優れた日本の小型車が米国で一気に普及していきました。排ガス規制が強化されたときは、日本車の馬力が一気に削がれましたが、その後に徐々に高効率で馬力もあるエンジンが開発されました。今日、さらなる省エネとCO2排出削減が世界中で求められ、自動車メーカーは、エンジンのダウンサイジングをはじめとして、様々なイノベーションに取り組んでいます。「困難は発明の母」。そんな言葉を思いつきます。
「命」を絶対に切り捨てず、「便利」については新しい在り方をどんどん模索し、「イノベーション」を溌剌と発揮できる環境を創る。そして、原子力に過度に依存しなくても成り立つ社会・経済に、一歩ずつ着実に変えていく。それは原発を推進する立場の人も、原発をゼロにしたい立場の人も、等しく追求したいことではないでしょうか。原発は国論を二分するテーマと言われますが、原子力に過度に依存しなくても成り立つ社会・経済を実現すべきだ、という一点では、民意はほぼ一致しているのではないでしょうか。暑い夏に、原子力エネルギーの在り方を前向きに考えることは、日本人全員の宿題です。
讀賣新聞
【記事】 竹島共同付託きょう提案
- 政府は20日、韓国が不法占拠している島根県・竹島の領有権問題について、日韓両国で国際司法裁判所(ICJ)に共同付託する提案書を韓国外交通商省に届ける方針を固めた。
- 共同付託では、領土問題など国家間の法律的な争いについて、当事国双方が同意し、ICJに裁定を委ねる。裁定に持ち込む方法は、①日韓両国が同意の上で共同付託する方法と、②日本が単独提訴し韓国が裁判を行うことに同意する方法の2つがある。単独提訴は訴状づくりに時間がかかるため、まず共同付託を提案することで、国際社会に「竹島問題」の存在を一定程度アピールできる。
- 政府は21日の閣僚会議で、共同付託方針を確認した上で、追加的な対抗措置についても検討するとみられる。韓国は共同付託について「一顧の価値もない」(外交通商相)としており、拒否する構えだ。その場合、政府は単独提訴の準備に入る。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 節電効果、ピークも余裕
- 電機事業連絡会が7月の販売電力量をまとめたところ、東京電力を除く9電力で昨年より減った。10電力平均で前年同月比6.3%減。関西電力では10.6%減となり、準備していた「計画停電」は一度もしていない。家庭向け中心の「電灯」は、10電力平均で昨年7月より12.4%減り、関西電力では16.9%減となった。企業向けの「大口」も8電力で昨年7月より少なかった。電力需要が多い昼過ぎに工場などでの使用を減らしたり、自家発電設備を増やすなどして、節電体制を整えつつある。
- 関西電力では、7月27日には原発が稼働しなかった場合には150万キロワットを超える電力不足になり、八木社長は「大飯再稼働がなければ、厳しい状況だった」と振り返る。しかし、大飯再稼働に反対している大阪府市エネルギー戦略会議は違う見方をしている。7月27日も今夏のピーク需要となった8月3日でも、西日本全体では900万キロワット以上の電力余裕があり、「融通」をすればしのげたという。
- 同会議の座長を務める植田和弘・京大教授は「原発稼働後でさえ節電できたということは、原発なしでも乗り切れる可能性が高い。どれほど節電が定着しているかを分析し、原発の必要性の議論に生かすべきだ」と話す。全国の電力には余裕があり、このまま節電を続ければ、原発を動かさなくても夏を乗り切れる可能性がある。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 「2030年代前半、原発ゼロ」
- 政府の「エネルギー・環境会議」は、総発電量に占める原子力発電の割合目標を「2030年代前半の原発ゼロ」とする方向で検討に入った。来月にまとめる予定の新たな「エネルギー・環境戦略」に盛り込む。
- 背景には原発ゼロを求める声の高まりがある。全国11ヵ所で開催された国民向けの意見聴取会では、出席希望者の7割が2030年の原発ゼロを支持した。首相官邸前で再稼働反対を訴える抗議行動も収まる気配がない。与党内からも「脱原発」を求める声が強まっている。こうした背景から、野田首相は6日には関係4閣僚を呼び、「原発ゼロの場合の課題を整理し、どうしたら克服できるか検討するように」と指示していた。
- 9月の民主党代表選や次期衆院選を前に、原発ゼロを求める世論や与党内の声に応える面と、洋上風力発電などの再生可能エネルギーの実用化に向けた技術革新を促す狙いもある。ただ、原発ゼロを実現するためには、克服すべき課題も多い。短期的には節電や電気料金の高騰、企業の海外移転の懸念があり、長期的には大幅な省エネや代替エネルギーの実用化・低コスト化が必須。このため、経済界などからの反発も見込まれる。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 節電マンションに補助
- 経済産業省は来年度から、マンションに住む一般家庭の節電を支援する方針だ。「節電仕様マンション」の展開を促し、家庭の電力消費を抑える取り組みを広げる。支援の対象は1棟当り100戸前後と比較的大きなマンションとし、3年で最大2千棟の支援を見込む。来年度の予算要求額は300億円程度を軸に調整する。
- 具体策としては、マンションの管理組合が節電関連のシステムを取り付けた費用を最大半額補助する。またマンションの電力使用状況に合わせて、経産省が選ぶコンサルティング、電気機器、通信関連の企業が点検と節電策の具体的なアドバイスをする。さらに、電力会社が電力需要予測の基づいてあらかじめ節電要請を、専門企業を通してマンションの管理組合にし、着実に節電できれば、電力会社が入居者に報奨金を支払う仕組みも想定している。
- 工場やオフィスビルは、コンピューターによる使用電力把握や太陽光発電、蓄電池、温水ポンプなどを組み合わせた節電システムを採用している。ただこうしたシステムは高価で、家庭では利用しづらい。電力会社によるスマートメーター(次世代電力計)の普及もこれからだ。次の原発の再稼働が見通しにくい中で、家庭向けの節電策として、企業と連携しながらマンションを中心に電力消費の抑制を狙う。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 先進ドイツから脱原発の知恵
- 在独30年のプロ通訳士として、政府や経済界の要人の言葉を伝えてきた高田知行さんは今、脱原発の活動家として日独を往来する。東京電力福島第1原発事故に、故郷の危機を感じた。「今、原発を止めなければ、日本のすべてが失われてしまう」。ドイツで「アトムフリー・ヤーパン」を立ち上げ、中部電力浜岡原発の停止を求める600人分の署名を静岡県庁に届けた。
- ドイツは連邦制で、各州の独立性が高い。エネルギー体制も地域分散型で、自治体や市民が取り組む風力や太陽光などの再生可能エネルギーは昨年、全発電量の2割を占めた。対する日本は中央集権体制の下、一極集中で経済成長にひた走り、都市も地方も画一化が進み、ゆがんだ。「原発事故の前から日本は壊れていた」と高田さんは言う。
- 3.11後、日本でも自治体がエネルギーの自立を目指し始めている。生活の根幹であるエネルギーを地域に取り戻すことは、市民の手に民主主義を取り戻すことでもある。高田さんがドイツに渡った30年前、議会の外で市民がものを言い、主権者として変革の力を生み出した。官邸前で、原発再稼働に反対する抗議運動に参加する人々の姿が、当時のドイツと重なる。硬直化した社会を変えるチャンスが目の前にある。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ