2012.08.19 sun

新聞1面トップ 2012年8月19日

新聞1面トップ 2012年8月19日


【リグミの解説】
「下部構造は上部構造を規定する」、とマルクスは言いました。「下部構造」である経済の仕組みが、歴史を進歩させる基本的な動力であり、「上部構造」である政治制度や法律制度を一方的に規定する、というマルクスの唯物史観。地震で大地(下部構造)が揺れれば、建物(上部構造)も揺れますが、建物が大地を揺らすことはありません。マルクスの言う通りだとすれば、東アジアで今起きている騒動も、根元には経済の仕組み(下部構造)の大きな変動がある、と見ることができます。


中国が尖閣諸島に対して「核心的利益」を公言するようになったのは、国内経済が発展し、海洋資源などを求めて目を太平洋に転じてからです。三沙諸島でフィリピン、ベトナムと領有権を争っているのも同じ理由によります(参照「本日の新聞1面トップ」【8月18日】東京新聞)。

韓国の李明博大統領が、竹島を訪問したあと、日本の国際社会での影響力は「昔と同じではない」という趣旨の発言をしましたが、これは日本の国際社会における経済的地位という下部構造が弱まったことで、今までのように日本に気を使う必要はないという「本音」を口にした、とも受け取れます。中国がGDPで日本を抜いて世界2位になり、韓国経済が中国シフトを強めている現実と、韓国自身が経済力をつけてきた自信の表れでもあるでしょう。米国のオバマ大統領が2011年の一般教書演説で言及した海外の国名は、アフガニスタンを除いて韓国が5回と最多で、日本への言及はゼロだったことも、日韓の相対的な力関係の変化を象徴しています。

今日の毎日新聞と東京新聞のトップ記事は、期せずして共にシリーズの調査報道であり、内容もロシアの極東経済の動きについてです。毎日新聞は、APEC首脳会議を控えたウラジオストクで、日本などの協力を得て経済的な基盤整備を進める様子を伝え、東京新聞は、ロシアが日本への石油などの供給を高めて経済を潤すエネルギー政策を推進する様子を報じています。7月にはメドベージェフ首相が北方領土の国後島を訪問し、中国、韓国と並んで、ロシアとの領土問題も深刻であることを印象付けました。その一方で、日本企業はロシアの極東地域の資源開発やインフラ整備に相次いで参加し、経済関係は深まっています。

一国の経済状況の変化によって、領土問題という外交政治問題が浮上しているという現実。同時に、新たな経済的なつながりを求めて、政治が戦略的に隣国に接近するのも、もうひとつの現実です。マルクスは、「上部構造は下部構造との関係が矛盾するときに変化する。その結果、革命が起き歴史が進歩する」と考えました。しかし、マルクスは大事なことを見落としていたと思います。それは「上部構造」と「下部構造」は建物と大地のような無機的なものではなく、頭脳と身体のように有機的なものだということです。

政治と経済は、生命的ダイナミクスに満ちたものです。日本は、経済という「身体」をこれからも鍛え、大きくしていく努力を放棄すべきではありません。しかし政治や外交における「頭脳」そして「心」を鍛え、高めていくことで、体の大きくなった隣国と、調和的で発展的な関係を築くことは、十分に可能です。経済力は「ハードパワー」の源泉にも、「ソフトパワー」の源泉にもなります。それは、国家の「心がけ次第」、といえます。


讀賣新聞

【記事】 丹羽大使交代へ

  • 政府は18日、丹羽宇一郎中国大使を10月にも交代させる方針を固めた。後任には、外務省の西宮伸一外務審議官を起用する方向で最終調整している。
  • 丹羽氏は民主党政権が掲げる「脱官僚依存」の象徴として、菅政権発足直後の2010年6月に任命された。丹羽氏は、伊藤忠商事の社長や会長として中国との貿易・投資に積極的に取り組んできた。中国政府や経済界との人脈が豊富であることから、当時外相だった岡田副総理の主導で起用された。
  • 丹羽氏就任から3ヵ月後の2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生。丹羽氏が経済外交を進める環境が損なわれた。さらに今年6月の英紙フィナンシャル・タイムズの取材に対し、「(東京都の尖閣諸島購入計画が)実行されれば日中関係が極めて重大な危機に陥る」と発言。与野党から「日本の国益を代弁する大使としては不適格」として交代論が強まっていた。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 東電、六ヶ所村に2.7億円

  • 東京電力が福島第1原発事故後、青森県六ケ所村に約2.7億円を支払っていた。朝日新聞が入手した資料によると、東電は2011年5月末と2012年5月末に、1億3340万円ずつを六ヶ所村に支払った。東電は、六ヶ所村の漁業振興対策事業の助成が目的で、原発建設に関連する支出だと説明する。
  • 経済産業省は、東電の電気料金値上げ申請を受けた審査で、六ケ所村への漁業補償は既に終えているため「電気を供給する上で必須とは言えない。見返りがなく、寄付金に近い性質を持つ」と判断。今年度分以降について、電気料金算定の基礎となる経費「原価」に組み込むことを認めなかった。
  • 東電は長年、地域振興などの名目で原発立地自治体などに年間20億円程度の寄付金を出し原価に組み入れてきたが、福島事故賠償に向けたコスト削減策として、寄付金の原則廃止を表明してきた。しかし、原発建設費という別の名目で事実上寄付を継続していた疑いが出てきた。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 開発担う中朝労働者~極東の風-1

  • 9月に、ロシアで初めてのアジア太平洋経済協力会議(APEC)が、極東の港町ウラジオストクで開催される。プーチン大統領は、これおを起爆剤にアジアの活力ある「風」を呼び込もうと狙う。
  • APECを控えたウラジオストクでは、道路の建設や建物外壁の改修工事などが進む。その担い手は北朝鮮、中国、ウズベキスタンなどからの出稼ぎ労働者だ。APEC会場の施設も外国人労働者によって建設された。請け負ったゼネコンによると、延べ約1万5000人の労働者の5分の4がウズベク、トルコ、北朝鮮、中国などの労働者だ。建設労働は「経験があって安い賃金でも長時間働く」外国人に依存し、「通常なら7年かかる工事を3年で仕上げた」という。
  • 労働力だけではない。プーチン大統領が国家の威信をかけ、6800億ルーブル(約2兆400億円)の国費を投じたAPECのインフラ整備は、中国のセメント製造設備、米国の淡水化装置、日本の熱電供給システムなど、「外国頼み」だった。ロシア政府は、これを機に外国投資を呼び込み、石油化学工場や液化天然ガス工場などの大型プロジェクトを実現させたい考えだ。しかし地元には経済基盤もビジネス環境も整っておらず、APEC後の展望に悲観的な見方も強い。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 電力債の担保廃止

  • 政府は、電力会社が発行する債券(電力債)に認めている特殊な担保を廃止する方針だ。担保があると、債権の保有者が優先的に資金を回収でき、原発事故が起きた場合などに被害者への賠償の妨げとなると判断した。
  • 電力債は、普通の企業の社債と異なり、電気事業法により他の債権者より優先して弁済を受けられる「一般担保」がつく。電力各社は、発電所や送電線の新設・維持に要する多額の資金を電力債を通じて調達している。東日本大震災以前の年間調達額は、総額1兆円に上っていた。
  • 今回の政府判断は、担保を持たない新電力(特定規模電気事業者)と起債条件を同じにし、競争条件を公平にする狙いもある。ただし、政府が推進する風力発電などの普及には送電線への投資が欠かせないため、発送電分離など経営改革を進める場合には例外も検討する。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 経済戦略、狙いは日本~地殻変動-3

  • 欧州経済危機で「西」への輸出が伸び悩む今、ロシアの視線は「東」へ向いている。「狙いは日本。東京や名古屋周辺に3日で原油を運べる」と、ロシア極東・沿海地方のナホトカ近郊にある石油積み出し専用港の運営会社幹部は、熱い思いを口にする。
  • ロシアが日本などへの輸出拡大に期待するもうひとつの理由は、中国との関係だ。東シベリアから延びる石油パイプラインは、途中から支線が中国に延びる。その中国に国際価格よりも安く買いたたかれた。中露は国際政治の舞台では蜜月だが、ビジネスでは、ロシアは輸出の多角化を余儀なくされた。
  • 政治、経済の重心が「西」から「東」に移動する世界史的な流れの中、プーチン政権は、極東・シベリア経済をアジア太平洋経済賢へ融合させることを国家戦略に据える。9月にウラジオストクで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を機に、いかに投資を呼び込めるか。エネルギーがロシアの国家戦略の成否を握る。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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