2012.08.17 fri

新聞1面トップ 2012年8月17日

新聞1面トップ 2012年8月17日


【リグミの解説】

毛利元就(もうり もとなり)が3人の息子に伝えたとされる「三矢の教え」。「1本の矢では簡単に折れるが、3本まとめると容易に折れないので、3人共々結束すること」。日米韓国による初の合同軍事演習が、朝鮮半島沖の公海で実施された今年6月、米国を長兄とする”3兄弟”の関係は、あたかも元就の言葉を実践するかのごとく、盤石に見えました。しかし実際には、3本の矢は束ねられてはいませんでした。2ヵ月後の今月に韓国の李大統領が竹島を訪問し、さらに「天皇謝罪要求発言」をするに及んで、矢を束ねるどころではなくなりました。

日本から見ると、韓国の矢は一体全体どこを向いているのか、と心配になります。しかし、東アジアの状況は、そもそも「三矢の教え」を簡単に実践させてくれるような構図になっていません。もっとずっと複雑化しています。日韓の共通の問題は北朝鮮ですが、北朝鮮は中国と手を繋いでいます。その中国は太平洋に広がる権益の拡大を狙い、日本、韓国、台湾、さらにはフィリピンとつばぜり合いをしています。ところが、経済大国化した中国との関係がますます重要になっているために、韓国は政権が代わっても中国シフトを強めていくのではないか、との観測もあります。日本にとっても、中国との経済関係は、最も重視しなければならないもののひとつです。

東京新聞の本日のトップ記事は、「地殻変動~東アジア・太平洋の今」という特集記事の第1回として、「強国の波間に揺れる韓国」が済州島に海軍基地を建設する様子を報じています。韓国は、半島という地政学的な一大特徴によって、大国の中国とどう向き合うか、長い歴史の中で常にバランス感覚を求められてきました。一方の日本は、大陸から海を隔てた絶妙の距離によって、中国そして朝鮮半島と独自の政治・経済・文化の往来をしてきました。それが近世になると、「ハードパワー」を体得した日本が、朝鮮半島や中国大陸に野心を持つようになり、長い歴史を通して培われてきたバランスが崩れました。

日本は、明治維新から太平洋戦争に至る80年間で、次第に軍国主義へと傾斜し、「ハードパワー」の頂点を極めたあと、国が焦土と化す徹底した敗戦を体験しました。日本は、次の80年間の途上にあります。それは「ソフトパワー」の頂点を極める道程ともいえます。もし日本に本当の意味での「ソフトパワー」があるなら、21世紀初頭に次第に混沌としてきている東アジアの現状に対して、軍事力や強腰の政治外交パフォーマンスによらない解決策を各国に提示できるはずです。

日中韓は「三矢の教え」を実践すべし、とは言いません。しかし、角突き合わせる関係は、どう見ても「未来志向」ではありません。ここはせめて、「じゃんけん」の精神でいくべきかもしれません。勝ち負けは相対のゲームである、という「三拳の教え」を念頭におき、手を握り合える分野を着実に積み上げていく。それが、3つの国をつなぐ長い歴史的関係から学べる「知恵」ではないでしょうか。



讀賣新聞

【記事】 生活保護、家賃を自治体が納付

  • 厚生労働省は、受給者の増加が続く生活保護制度の見直しに向けた包括的な改革を打ち出す。生活困難者の自立に向けた新たな総合支援策の一環として、就労可能な受給者の自立に向けた内容となる。
  • 家賃などの住居費(住宅扶助)を、原則自治体が受給者に代わって直接収める「現物給付」方式を取ることにより、確実に住まいを提供し、同時に不正受給を防ぐ。また、就業前に一定期間、比較的簡単な仕事をしてもらう場を提供する。
  • 生活困窮者支援構想は、①「住まいの確保」②「家計再建」③「就労支援」を柱とする。働く意欲があるのに職が見つからず、生活保護に至りやすい人たち向けに、事前に支援することで生活再建を果たすと共に、急増する給付費の抑制にもつなげたい。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 都、東電への売電解約へ

  • 東京都は、ダムで発電した電力を随意契約で東京電力に売っているが、これを来年度から競争入札に変える方針を固め、東電に契約の解約を伝えた。
  • 都側は、「電気事業を取り巻く社会情勢が大きく変化した」として、2019年までの随意契約の打ち切りを打診した。東電は契約継続を求め、解約の場合は補償金の交渉が必要としたが、都側は「補償金の支払い義務は発生しない」との考えを伝え、7月に解約を通告した。
  • 猪瀬直樹副知事は、「東京都をモデルとして公営電気の入札が全国で広がれば、新電力への販売が増え、電力市場が活性化するだろう」と語る。随意契約は、地域独占の電力会社以外に電気の売り先がなかった時代の制度であり、入札の場合より安く売られてきた。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 尖閣上陸、香港実業家らが支援

  • 香港の活動家ら14人が尖閣諸島に上陸して逮捕された事件を受け、中国では活動家らの釈放を求める抗議行動が相次いだ。
  • 活動家が所属する香港の民間団体「保釣行動委員会」は、香港の親中派の実業家らが支援しており、中国本土や台湾などの「保釣」団体と共同歩調を取るなど、連携を深めている。今回の活動には、台湾の民間団体も合流する予定だったが、最終的には台湾当局によって阻止された。
  • 台湾紙によると、中国本土の福建省からも抗議船が合流する予定だったが、中国当局の圧力で断念した。中国は、日本を牽制したい思惑を垣間見せつつ、民間の活動を利用して一定のガス抜きを図り、日中の決定的な対立は回避しようとしている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 シャープ、主要事業売却

  • シャープは今月2日に5000人規模の人員削減計画を発表したが、追加のリストラ策を主力取引銀行に近く提示する。同社は今期の最終損益が、2500億円の赤字になる見通し。
  • シャープが検討する主なリストラ策は以下の通り。①AV・通信機器部門=国内のテレビ組み立てから事実上撤退、②健康・環境機器部門=空調機器などの売却、③情報機器部門=複写機などの売却、④液晶部門=中小型パネルを生産する亀山工場を分離、⑤太陽電池部門=葛城工場の生産を大幅に縮小し堺工場に集約、⑥その他デバイス部門=LEDなど電子部品の売却。
  • シャープは来年秋に2000億円の転換社債の償還を予定するなど、5000億円規模の資金の借り換えが必要となる見通しだ。主力2行のみずほコーポレイト銀行と三菱東京UFJ銀行は、追加リストラ策と、提携先の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ本体への出資を条件に、金融支援の検討に入る。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 強国の波間、韓国焦燥

  • 東アジア・太平洋地域は、張り詰めた空気に覆われている。韓国・済州島は、日本海、東シナ海、黄海の接点となる海上交通の要衡だが、その南岸で海軍基地の建設が進む。2015年の完成を目指す。基地建設方針を決めた1995年当時の政府高官は、「海運の安全や大陸棚の資源確保、中国の軍事力増強への備えが目的だ」と明かす。
  • 中国と韓国の間には、境界が未確定な海域が残る。排他的経済水域(EEZ)の境界未画定の暗礁は済州島からは約176キロで、釜山の海軍基地の500キロよりはるかに近い。済州島に基地ができれば、事が起きたとき、中国よりも早く到達できる。また、北朝鮮の人民軍の海上行動に対する牽制にもなる。
  • 今年6月には、日米韓3国の合同軍事演習が実施された。日本では、北朝鮮と中国に対する日米韓の連携は盤石と考えられがちだが、韓国の思いは複雑だ。李大統領の竹島上陸と天皇謝罪発言の背景には、旧日本軍従軍慰安婦問題などでの韓国民の不満がある。さらに中国は2004年以降、最大の貿易相手国となっている。「韓中関係が韓米関係に優先することはないが、韓米日の3国連携になると、常に韓中関係に優先するとは限らない」と韓国政府当局者は言う。日本は、自らの微妙な立ち位置を自覚する必要がある。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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