2015.05.22 fri

2015年5月22日【新聞解説】地球を生きる時代

2015年5月22日【新聞解説】地球を生きる時代


【リグミの解説】

日本動物園水族館協会(JAZA)は、追い込み漁で捕獲したイルカを購入しないように要求した世界動物園水族館協会の意向を受け入れ、世界協会傘下にとどまることを決めました。本日の読売、朝日、毎日、産経の4紙が、この問題を社説で取り上げています。
 
<読売新聞> イルカ伝統漁 国際的圧力に屈した組織残留
・ 追い込み漁は、政府による資源管理の下で、合法的に実施されている。菅官房長官は「資源の持続的な利用について、丁寧に説明していきたい」と述べた。鯨類に関する日本の伝統文化について、国際社会の理解を得る努力を続けていかねばならない。
 
<朝日新聞> イルカ漁―国際理解へ努力重ねよ
・ 欧米では、野生の生物を捕まえて飼い、ショーをすることを否定する動きが広がりつつあるという。動物園や水族館が生物保護の拠点としての役割を強め、伝統的な生業には理解を求める。そんな戦略が必要だ。
 
<毎日新聞> イルカ漁 誤解正す努力も必要だ
・ 欧米にはイルカは知的で親しみがあるといった考え方が根強い。日本には、クジラやイルカに感謝しつつも、海の恵みとして活用してきた伝統がある。今後も輸出が続くのであればなおさら、文化や伝統の違いが生む、「残酷」との誤解を解く努力を重ねていく必要がある。
 
<産経新聞> イルカ入手困難 実情をさらに訴え続けよ
・ 四方が海の日本で、海洋生物だけの問題なら違う決断もあった。アフリカゾウやオランウータン、ライオンまでが「人質」に取られては打つ手はなかった。今度は動物園を巻き込んだ除名通告である。通告は受け入れたが、文化の破壊は許されない。伝統的な漁法を保護するとともに、官民協力して実情を粘り強く国際社会に訴え続けていく必要がある。
 
「食文化」への偏見
「クジラ・イルカ問題」は、日本から見ると典型的な文化摩擦の様相を呈しています。私は幼少の時、カナダのバンクーバーで暮らしていました。駐在員だった父は、母の助けを借り、取引先のカナダ人を対象としたホームパーティーを開催することがありました。日本の食文化を紹介しようと「すき焼き」を振る舞いました。牛肉を使った料理であり、美味しく大好評だったのですが、子供心に横で見ていて気になることがありました。
 
それは、参加者の少なからぬ者が、器に入れられた生卵を見て顔をしかめたことです。「卵を生で食べるとは、なんと野蛮な―」。そんな表情でした。当時は日本食自体がまだ欧米では認知されておらず、寿司も今日のような世界的な人気になっていませんでした。「魚を生で食べるなんて気持ち悪い―」。寿司への理解も、この程度でした。
 
多様性と一様性のせめぎ合い
私たちは今、むつかしい時代を生きています。世界は多様で豊かであることに人々は気づいています。同時に、世界はひとつの価値観で統制されるべきだという圧力も高まっています。このふたつの立場は時に二項対立になります。世界統一価値観に沿う限りにおいて、多様性は認められる。そのような着地になると、多様性とは動物園の檻に入れられ、保護された存在のようなものになってしまいます。いっぽうで、多様性を野生のまま放置すれば、「テロ」のような災厄が生じるかもしれない。
 
動物園自体が、将来的に存続がむつかしくなるかもしれません。汎動物主義ともいうべき立場が強くなり、クジラやイルカなど特定の動物だけを差別的に優遇するのではなく、すべての動物を野生に返せ、となるかもしれません。肉食の「文化」も、将来否定的な視点で議論されるようになるかもしれません。そのような時代の動物観察は、野生の中で人間が檻の中に入ることでかろうじて実現する姿も想像します。
 
生命の大潮流
これ自体はかならずしも不健全とはいえません。問題があるとすれば、人間を頂点とする生物界における伝統的なピラミッド支配意識です。クジラやイルカは人間に近いから大事にするが、牛や豚は下等だから食しても良い。この発想は、生命の大潮流を見ないきわめて人間臭い狭量さといわなければなりません。私たちは、地球全体を生命として理解し、生きる時代の入り口に立っています。大きな思想と行動が必要になっていると思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 人質対応「政府誤りない」検証報告 渡航制限に課題「イスラム国」日本人殺害
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150521-OYT1T50115.html
  2. アジア支援5年13兆円 インフラ整備 AIIBに対抗 首相表明
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150521-OYT1T50104.html
  3. 韓国禁輸WTO提訴 政府 8県水産物 原発事故に
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150521-OYT1T50090.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 人質対応「誤りない」IS邦人事件 検証委、政府を追認
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11767182.html
  2. 「広島・長崎」復活せず NPT最終文書案「被害経験共有」盛る
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11767186.html
  3. 個人情報保護法 改正案が衆院通過 同意なく利用 範囲拡大へ
    http://www.asahi.com/articles/ASH5P7FYGH5PULFA02X.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 精神的賠償18年3月まで 自民復興提言 避難指示区域 困難区域除き
    http://mainichi.jp/select/news/20150522k0000m010132000c.html
  2. 核廃絶 国連総会で法規定 NPT議長草案 被曝経験共有促す
    http://mainichi.jp/select/news/20150522k0000m030160000c.html
  3. 「救出阻む誤りなし」IS人質事件 政府報告書公表
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20150522ddm001030162000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 首相「アジアに13兆円」インフラ整備、5年で 第21回「アジアの未来」
    http://www.nikkei.com/article/DGKKZO87132040S5A520C1MM8000/
  2. 後発薬、増産へ投資 印大手、日本向け専用工場
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21I0J_R20C15A5MM8000/
  3. 米で最高級銅板 生産 新日鉄住、車の軽量素材
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21I10_R20C15A5MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 政府の対テロ姿勢「適切」検証委報告書 情報収集には課題「イスラム国」日本人殺害脅迫
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150522-00000082-san-pol
  2. ぶれぬ「指名」失敗恐れず 番頭の時代 第3部 スポーツを支える黒子
  3. サンゴ密漁 海底に散乱 中国漁船の綱と断定 小笠原調査結果 水産庁が公表
    http://www.sankei.com/affairs/news/150521/afr1505210049-n1.html

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 2500万人 知らぬ間に義勇隊「何かしないと」弱者の思い利用
  2. 原発慰謝料 18年3月終了 避難指示は17年に解除 自民復興5次提言
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052202000117.html
  3. 「被爆地訪問」復活せず「経験共有促す」へ修正 NPT最終文書案
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2015052202000112.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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