2012.08.11 sat

新聞1面トップ 2012年8月11日

新聞1面トップ 2012年8月11日


【リグミの解説①】 本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、日経、東京の全紙が「消費増税関連法の成立」を報じています。韓国大統領の竹島訪問も重要ニュースとして1面を飾っていますが、朝日と毎日と日経が2番扱い、読売はオリンピックにつぐ3番目の記事でした。国政を揺るがしてきた消費増税関連法の成立に関して、各紙の事実報道は基本的に差がありませんが、強調点に「違い」を見ることができます。
 

  • 読売新聞は、「財政健全化への歴史的一歩」という社説を掲げ、法案成立を評価しています。総選挙の結果、反増税勢力が政権を取ったとしても、民自公は「消費税10%」の実現まで責任を共有すべきである、と釘をさしています。
  • 朝日新聞の社説のタイトルは「『新しい政治』の一歩に」で、「政策よりも政争に走る政治の弱点が露わになった。やられたらやりかえす子どものケンカのような政治はもう願い下げだ」と批判。今回の一件が、「建設的な批判は大いにしあい、不毛な政争はやめ、協力すべきは協力する新しい政治文化」を築く第一歩となることに期待を寄せています。
  • 毎日新聞は、社説「『決める政治』を続けよう」で、今回の法案成立に見られた2つの特異点を指摘。1つ目は、初めての純粋増税であること(過去2回は減税とセット)。2つ目は、この不人気政策を与野党が合意した政治方式の新しさにおいて。「山積する困難な政治課題を解決するための貴重な前例を作ったものであり、政治上画期的なこと」と評価しています。
  • 日経新聞は、1面の解説タイトルが「次の焦点は成長力強化」、社説タイトルは「この増税を次の改革につなげたい」。欧州危機を題材に、国の財政への信認が崩れたとき、一番の被害を受けるのは国民の暮らしだ、と指摘。「日本は長い時間をかけて財政再建と経済成長の両立に取組む必要がある」と訴えています。
  • 東京新聞の社説のタイトルは「『代議』機能せぬ危機」。増税がいずれ避けられないことを認めた上で、政府や国会の無駄を削ることなく、社会保障の全体像も示さないまま、国民が選択していない(=マニフェストに明記されていない)消費増税法を強行したことを「代議制の危機」と厳しく批判しています。「最後に政治を動かすのは民意」とし、早期解散を求めています。


【リグミの解説②】 今回の消費増税法の成立の経緯を見て、2大政党制の政治ダイナミクスは「外交」に近い、という印象を持ちました。過去、日米関係が良好だったときは、中曽根首相とレーガン大統領の関係や、小泉首相とブッシュ大統領の関係など、リーダー同士が互いを信頼し、直接のコミュニケーションが取れたことが大きく寄与しました。民主党と自民党は、党利党略で激しく争い合っていますが、野田首相と谷垣総裁の個人的な信頼関係とリスペクトが、最後は「決め手」になったのだと思います。

そういう意味で、毎日新聞の調査報道「ストーリー」の5月13日の内容が、野田さんと谷垣さんの「相思相愛」を指摘していたのは示唆的です。本日の毎日新聞2面で、政治評論家の岩見隆夫さんはこの記事に触れ、「(ふたりの)相性だけでなく、何か知的に響き合うものが一気決着を誘った気がする」と述べています。

竹島問題で一気に冷え込みそうな日韓関係ですが、野田首相と李大統領は、両国の真の国益になる判断と行動を取れるでしょうか。相手の「内政」の混乱に乗じて、「外交」の攻勢をかけるのは、領土問題の定石ともいえます。それをさせないために、内政を安定させることが第一。同時に、日本にとって重要な国家関係を外務省任せにせず、国のリーダーが率先して関係づくりに努めなければなりません。消費増税法と竹島問題。トップのイニシアティブのの大切さをを実感するテーマが続きます。



讀賣新聞

【記事】 一体改革法案が成立

  • 消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法は10日夕に参院本会議で、賛成多数で可決、成立した。民主、自民、公明3党が賛成に回った。賛成188票、反対49票(投票総数237、欠席4)。民主党から6人が造反し、反対票を投じた。
  • 現行5%の消費税率は、2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられる。関連法は経済状況の好転を消費増税の条件に規定し、税率引き上げ時期の半年前を目途に最終判断をする。
  • 民主、自民、公明3党は、「法案成立後、近いうちに国民に信を問う」と合意しており、お盆明けの政局の焦点は衆院解散・総選挙の時期や、9月の民主党代表選と自民党総裁選の対応に移る。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 消費税率、14年4月に8%

  • 消費増税関連8法案が10日、参院本会議で民主、自民、公明などのの賛成多数で可決、成立した。税率は2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられる。消費税率の引き上げ法が成立するのは18年ぶり。
  • 首相は消費増税関連法の成立後、記者会見で「(消費増税は)2009年の総選挙で民主党が勝利した時のマニフェストに明記していない。深くおわびしたい」と陳謝した。その上で、「社会保障の安定財源を確保し、財政健全化を同時に達成する歩みを始めていくことだ大事だ」と強調した。
  • 野田首相が「政治生命をかける」と明言してきた消費増税関連法が成立したことで、今後の焦点は、谷垣自民党総裁と合意した「近いうちに国民の信を問う」とする衆院解散・総選挙の時期に移る。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 消費増税法が成立

  • 消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連8法は10日の参院本会議で、民主、自民、公明3党など賛成多数で可決、成立した。賛成188票、反対49の大差となったが、民主党の6議員が反対票を投じた。
  • 野田首相は消費増税関連法の成立後の記者会見冒頭で、2009年の衆院選の民主党マニフェストに消費増税を明記していなかったことを「深く国民におわびしたい」と陳謝した。重要法案が成立した後の会見で、首相が陳謝するの異例。
  • 今回の消費増税法では、景気動向によって増税を一時凍結できるが、現在の5%から2014年4月に8%への引き上げが実現すれば、17年ぶりとなる。さらに2015年10月に10%へ2段階で引き上げられることで、「消費税2桁時代」に突入する。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】消費増税法が成立

  • 消費税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法は、10日の参院本会議で、民主、自民、公明3党など賛成多数で可決、成立した。賛成188、反対49、欠席・棄権が4。民主党で6人が反対した。
  • 現行5%の消費税率は、2014年4月に8%、2015年10月に10%へと2段階で引きあがられる。消費税率の引き上げは、3%から5%になった1997年以来となり、17年ぶりとなる。
  • 野田首相は一体改革法の成立を受けた記者会見で、2009年の衆院選の民主党マニフェストに消費増税を明記しなかったことを「深くおわびしたい」と陳謝。その上で「増収分はすべて社会保障として国民に還元される」と約束した。先進国で最悪の状態にある財政の健全化に向け、ようやく一歩を踏み出す。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 民意が握る最終判断

  • 消費税率の引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革関連法が10日、参院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。税率は、2014年4月に8%、2015年10月に10%に2段階で引き上げられる。
  • 一方で民主党がマニフェストの主要政策に掲げた最低保障年金や後期高齢医療制度の廃止などは棚上げするなど、社会保障制度の抜本改革はほとんど見送られた。募る生活不安に応える議論はされず、「成立ありき」の民自公3党の思惑が先行。国権の最高機関としての役割を果たせなかった。
  • しかし、増税実施が正式に決まったわけではない。止める道筋はまだいくつも残っている。成立した増税法には「名目3%、実質2%の経済成長を目指す」と明記した「景気条項」という附則がある。「努力目標」ではあるが、法律に書かれた数字を達成しないまま、増税に踏み切ることは許されない。さらに大切なのは、増税前に必ず衆院選が行われることだ。増税の是非は、衆院選後の新政権が最終判断する。増税の最終判断は民意が握っている。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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