【リグミの解説】
ロシアのプーチン大統領が、1年前にウクライナ南部のクリミア半島編入の際に、北大西洋条約機構(NATO)との対決に備えて核兵器の使用を準備していた、とインタビューで明らかにしました。この耳を疑う発言について、朝日と毎日が社説で批判をしています。要旨を比較します。
<朝日新聞> ロシア核発言―併合1年の無謀な言動
・ 責任ある大国の指導者の発言とは到底思えない。プーチン氏は自国の領土拡張のために、核の準備の可能性まで考えていたのだ。こんな姿勢では、そうした場所で分離・独立の問題が起きるたび、世界は核戦争を心配しなくてはならなくなる。プーチン氏の行動は、前時代的な大国意識の表れではないか。これ以上、国際秩序に挑むような言動は慎むべきだ。
<毎日新聞> プーチン発言 核の脅しは許されない
・ 驚くべき発言である。事実上の脅しである。こうした発言は危機を一層エスカレートさせる危険性がある。ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国であり、世界の安全に大きな責任を負う国の指導者として許されないことだ。核の存在を露骨に見せつけることが、いかに危険であるかをロシアは自覚すべきだ。
パワーとは何か
パワー(力、権力)とは何か。組織行動学の大家、スティーブンP.ロビンスは、主著『組織行動のマネジメント』の中で、次のように指摘しています。
「パワーとは、AがBの行動に影響を与え、AがそうさせなければしなかったであろうことをBにさせる能力をいう」(同書p.290)
ロビンスは、リーダーシップが目標の一致を必要とするのに対して、パワーはそれを必要としないとも指摘しています。一言でいえば、パワーは一方的なものだということです。そして、上下関係を前提とした支配・服従を想定しています。
パワーの源泉はいろいろありますが、基盤にあるのは肉体的な強さです。野生の動物の集団でボスになる個体は、体が大きくケンカで負けないことで支配力を得ます。人間においても、これは同じ構図です。やっかいなことに、人間は科学技術により、個体の限界を超えた破壊力を持つ武器を手に入れました。
麻薬に依存しない
パワーは麻薬のようなものではないでしょうか。いったん手に入れると、使いたくなります。そしてその効能を知ると、もっと大きなパワーを求めるようになります。プーチン大統領の発言は、したたかな政治的意図をもってなされたものと想像しますが、それがどれだけ危険なものか自覚しているのでしょうか。
国連の常任理事国は、米国、英国、フランス、中国、ロシアの5か国です。これら諸国は、残りの国連加盟国に対してリーダーシップを発揮する立場です。そのために、特別なパワー(権力)を与えられているのです。それらの国に求めたいことは、パワーの暴走を止めるということ。パワーを得た国に、もっとも求めにくいことかもしれません。しかし、核軍縮という道のりに反することは、常任理事国の名に値しません。
リーダーシップとフォロワーシップ
後世、歴史家は2015年を「既に第三次世界大戦は始まっていた」と記述するかもしれない、とある会合で発言した大学関係者がいて、驚きました。しかし、会合にいた人々は、それが空想的と断定できない不安を共有していました。私たちは、パワーに対してどのような態度を取るのか、取れるのか。プーチン氏の発言は、他人事ではありません。
パワーに依存しないリーダーシップ、そしてリーダーと共に行動する主体的なフォロワーシップが、民主主義の存立基盤です。パワーの暴走を抑える方法を私たちは真剣に探る必要があります。
(文責:梅本龍夫)
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