2015.02.19 thu

2015年2月19日【新聞解説】大人とは誰?

2015年2月19日【新聞解説】大人とは誰?


【リグミの解説】

早ければ来年の参院選から現在は20歳以上の投票年齢が18歳以上に引き下げられます。日経新聞がこの取組みについて、社説を掲げています。主な論点を見ます。
 
<日経新聞> 「18歳投票」に備えた有権者教育が急務だ
・ 国会図書館によると、調査した189カ国・地域のうち投票年齢が18歳なのは170もある。遅ればせながら、世界標準の仲間入りすることを歓迎したい。
・ 明るい選挙推進協会によると、2013年の参院選での20歳代前半の投票率は31.18%で、70歳代前半(70.94%)の半分もなかった。放っておけば18、19歳の投票率も似たようなものになろう。適切な有権者教育が急務である。
・ 社会保障・人口問題研究所によると、1960年に41.5歳だった有権者の平均年齢は、半世紀後の2010年には52.7歳になった。政党はどうしても高齢者の意見に耳を傾けがちである。今回の法改正で若い有権者が240万人増える。社会保障などの世代間の負担が公平かどうかを改めて考えるきっかけにしたい。
 
民主主義の基本制度
今回の選挙制度の改革は、民主主義の理念からすれば歓迎すべきことです。かつて高い社会的地位にある男性だけにあった選挙権は、男性全体になり、その年齢が引き下げられ、つづいて女性にも権利が付与されました。日本に限った話ではなく、(選挙権を限定された属性の人だけがもつ)選挙制度の歴史をさかのぼると、古代ギリシャに至るのだと思います。
 
その古代ギリシャは、直接民主制を試みたことでも有名です。政治参加の権利をもつということは、ほんらいは直接的な行為なのだろうと思います。しかしみんなで政治に首をつっこんでいたのでは、船頭が多すぎる状況になります。そこで間接民主主義の基本、選挙制度が登場します。その年齢制限の根拠は、どこにあるのでしょうか。識見と器のある人物を見極める眼力、妥当性の高い政策を理解する能力、そして国家や地域で保守すべきことと変革すべきことの両面を正しくとらえる判断力。そうしたものは、いったい何歳になったら身につくのでしょうか。
 
子どもの期間が延びる時代に
生物進化の過程で脳の発達が進むと、幼児期が延び、成人にいたる年齢が遅くなるといわれます。人間社会も、平均寿命が延びると、「大人」の期間が長くなるというよりも、「子どもの時代」が長くなる傾向がみられます。精神的な成熟に時間がかかるようになるからです。時間がたっぷりあるので、ゆっくり進もうとするからでしょうか。
 
こうした要素をいろいろと考えると、18歳まで選挙権を引き下げることは、冒険でもあります。しかし私はあえて逆のことを考えてみたいと思っています。未来に選挙権を15歳まで引き下げるメリットついてです(デメリットはすぐに思いつきますが、ここでは触れません)。最大の効用は、子どもを「大人扱い」することで社会に変化が生まれることです。まず親(親権者)は子どもを15歳までしっかり育てることに集中することになり、義務教育は文字通り子どもを社会的に一人前の大人に育てる支援をする場と位置付けられるようになります。子どもたちは、15歳でどのような社会人になりたいかを問われるので、自覚をもって生きるようになります。
 
15歳で大人になるとしたら
実際には15歳から約10年間は猶予期間(モラトリアム)を可能にする社会であるのが良いと思います。「大人扱い」をしますが、一種のトレーニング期間です。しかし選挙権やその他の権利・義務は付与します。大人になるということは、自分の判断で学びたいことを学ぶ姿勢に変化します。そこでの教育は、上から目線ではなく、対等になります。
 
日経の社説に、次の記述があります。
 
「明るい選挙推進協会によると、2013年の参院選での20歳代前半の投票率は31.18%で、70歳代前半(70.94%)の半分もなかった。放っておけば18、19歳の投票率も似たようなものになろう。適切な有権者教育が急務である」
 
これは正しい指摘ですが、この有権者教育は実は全世代に必要です。平均投票率が50%を切る選挙が頻繁に行われている事実(特に地方選挙)は、問題を若年層に押し付けるべきではありません。
 
イノベーションの創発
最後に、世代別の位置づけを、マーケティングの仮説と重ねて考えてみます。イノベーションの普及プロセスにおけるロジャースの5分類、「イノベーター(2.5%)」「アーリーアダプター(13.5%)」「アーリーマジョリティー(34%)」「レイトマジョリティー(34%)」「ラガード(16%)」です。ラガードは「ぐずぐずしている人」という意味です。ニュアンスはよくありまぜんが、社会の変革が必要なときに既得権益にしがみつく「守旧」というセグメントがあるとすると、それは「レイトマジョリティー」から「ラガード」にかけて存在する可能性があります。これがちょうど、高年齢世代と重なるとしたらどうでしょうか。
 
15歳以上の若者が、新しい「イノベーター」「アーリーアダプター」として登場することは、社会にとってデメリットよりもメリットが大きいのではないでしょうか。自覚をもった若者は、守りに入り未来を考慮しない高年齢世代よりも「愚か」で「未熟」であるといえるでしょうか。むしろ、大人として対等に扱うことで、高年齢の世代にとって、未来を一緒に考え、創っていく創発の場になるのではないか。私はそのような期待と希望をもちます。
 

(文責:梅本龍夫)



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(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



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(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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    http://www.sankei.com/affairs/news/150218/afr1502180034-n1.html

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(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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