2015.02.05 thu

2015年2月05日【新聞解説】遊び心を応援する

2015年2月05日【新聞解説】遊び心を応援する


【リグミの解説】

日本サッカー協会は、サッカー日本代表のアギーレ監督が、八百長に関与したとするスペイン検察当局の告発を現地の裁判所が受理したことを受け、監督の解任を決断しました。本日の読売、朝日、毎日、日経の4紙がこのことについて社説を掲げています。特徴的な指摘を比較します。
 
<読売新聞> アギーレ氏解任 日本協会に選択肢はなかった
・ 日本協会は、1月のアジア杯の指揮をアギーレ氏に委ねた。裁判所の対応が不透明な段階で契約を解除すれば、アギーレ氏側から訴訟を起こされる事態などを懸念したのだろう。連覇を目指したアジア杯は、ベスト8止まりだった。不本意な結果に終わったことで、日本協会としては、解任に踏み切りやすくなったとも言えよう。
 
<朝日新聞> 代表監督解任―経緯を検証し教訓に
・ W杯予選に向けて貴重な強化の場だったアジアカップ直後の監督交代で、チームづくりは振り出しに戻る。そもそも、昨夏のW杯ブラジル大会で惨敗した検証も十分にされないまま、監督に迎えられたのがアギーレ氏だった。いったんそこまで立ち返って、後任監督の人選や契約交渉を進めるべきだろう。
 
<毎日新聞> アギーレ氏解任 「灰色監督」は不適任だ
・ サッカーをはじめスポーツにとって社会の中で存在を認められ、共感を集める上で清廉さは重要な要素だ。サポーターに加え、多くの国民が声援を送り、日本を代表する企業がスポンサーに名前を連ねるのはクリーンなイメージがあればこそ。八百長はその対極にある行為だ。
 
<日経新聞> 清新な代表に生まれ変われ
・ 気になるのは、協会の決断が遅かったのではないかという点だ。その背景にサッカーの八百長に対する認識の甘さがなかったか。世界のサッカーが抱えている大きな問題は八百長と人種差別である。幸い、日本に八百長問題は起きていないが、差別は現実のものになっている。八百長も対岸の火事ではない。アギーレ氏解任を機に、あらためて関係者全体が八百長に対して毅然とした姿勢を取ることを確認する必要がある。
 
ビジネスとしてのスポーツ
日経の社説では、つぎの指摘もしています。
 
「サッカーは世界で最も人気のあるスポーツだ。ビジネスの要素も大きい。たとえば国内のリーグ戦で下部リーグに降格すれば、チームの経営は大打撃を受ける。裏社会も触手を伸ばしている。選手や審判に八百長を持ちかけて試合の結果を左右し、賭博で大もうけしようという犯罪行為は後を絶たないといわれる」
 
現代のメジャースポーツの本質はビジネスであると思います。超一流の選手たちが手にする法外な報酬がそのことを端的に物語っています。監督をはじめ、関係者のすべてが、多かれ少なかれ、ビジネスのロジックを受け入れ、その枠組みの中で仕事をしています。
 
心を狂わすもの
ただ、金銭というものは、人の判断を狂わせるものでもあります。八百長という行為は、ふつうの企業活動でいえば、経理の不正処理であり、粉飾決算にあたります。あるいは、欠陥品、粗悪品を意図的に作り、法外な値段で売りつける行為ともいえます。そんなことをすれば、いつか報いを受けることになるのに、人はしばしば、そうした行為に手を染めます。
 
なぜなのでしょうか。1000万円では不正をしない人も、1億円積まれれば手を出すかもしれない。10億円になれば、ほとんどの人の目が眩む。お金にはそのような魔力があります。巨大なお金が動く現代メジャースポーツは、八百長などの不正や、その他の倫理的課題と常に背中合わせなのではないでしょうか。
 
お金では測れないもの
人はしかし、お金では測れないものを求めてスポーツに興じます。人間が鍛錬を積み、与えられたルールのもとで精いっぱい能力を発揮する姿は、実に清々しいものがあります。見ているだけで気持ちが高揚し、勇気を与えられます。卓越を求め、実際に卓越していく人々を、私たちは称賛し、自分たちの内側にある無限の可能性を追体験するともいえます。そこに巨額のお金がからんだとしても、それはパフォーマンスの素晴らしさの結果であり、目的とするところではありません。心の満足を凌駕する報酬はありません。
 
近鉄バッファローズのエースだった野茂英雄は、周囲の無理解と批判の大合唱をものともせず、当時不可能と言われたメジャーリーグ移籍を実現しました。そして「トルネード投法」で巨体のメジャーの打者たちをバッサバッサと三振に打ち取り、「ドクターK」の異名を取りました。当時のメジャーリーグはストライキに揺れ、選手たちのステロイド疑惑もあり、野球の最高峰の場としての輝きを失っていましたが、野茂はそこで異彩を発揮。米国人もまた、野球が本来もっていた純粋な面白さ、醍醐味を思い出し、熱狂しました。野茂はとにかく、最高の舞台で思い切り野球を楽しみたかっただけでした。そしてそれを実現し、伝説になりました。
 
スポーツとお金はほんらい何の関係もありません。名誉すら関係ありません。スポーツは、ただ純粋に遊びたいという人間の本性をもっとも溌剌と発揮する行為であるところにその本質があります。「遊び」という無駄に興じられる人間の素晴らしさに私たちはどうしようもなく引き付けられ、共鳴するのです。不正や八百長や無理な人体改造は、遊びのスピリットをぶちこわしにします。遊びに興じる嬰児たちを、私たちは声を枯らして応援している。だから、子どもの心を忘れないでほしい。そう願います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 裁判員死刑判決 破棄確定へ 最高裁決定 過去の量刑重視
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20150204-OYT1T50108.html
  2. ヨルダン軍が報復も 操縦士殺害
    http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150204-OYT1T50144.html
  3. 墜落台湾機 死者25人に
    http://www.yomiuri.co.jp/world/20150204-OYT1T50115.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 裁判員の「死刑」破棄確定へ 最高裁、無期判決を支持
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11586878.html
  2. 国民投票 参院選後に 首相、憲法改正へ意向
    http://www.asahi.com/articles/ASH245S79H24UTFK00F.html
  3. パイロット殺害伝える「イスラム国」のラジオ局
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11586897.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 裁判員「死刑」破棄確定へ 最高裁 2事件「無期」
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20150205ddm001040191000c.html
  2. 考える道徳へ転換 学習指導要領 文科省が改定案
    http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20150205org00m040005000c.html
  3. 台北墜落26人死亡 旅客機エンジン停止か
    http://mainichi.jp/select/news/20150205k0000m030135000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. トヨタ、最高益2.7兆円 円安や構造改革寄与 今期営業
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASGD04H62_U5A200C1MM8000/
  2. 送配電設備を共同調達 4電力、年560億円削減 来年度から
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS04H38_U5A200C1MM8000/
  3. 掃討へ戦略見直しも 米次期国防長官 対「イスラム国」
    http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM04H96_U5A200C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 来夏参院選後に改憲発議 首相、時期初めて言及
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150205-00000096-san-pol
  2. ヨルダン有志連合の要 女死刑囚処刑、米は支援強化「イスラム国」が操縦士殺害映像
  3. 裁判員「死刑」破棄確定へ 最高裁「説得的根拠示さず」
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150205-00000097-san-soci

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 難しい心の評価 道徳「読む」から「考える」に 教科化へ指導要領改定案
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015020502000153.html
  2. 殺りくの連鎖やめて 後藤さん兄が訴え 心はヨルダンと共に
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015020502000151.html
  3. 「人質事件」の情報 特定秘密の可能性 首相「内容公表せず」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015020502100004.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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