【リグミの解説】 本日の1面トップ記事は、読売、朝日、毎日が、タイトルもそろって「韓国大統領きょう竹島へ」という記事です。副タイトルも「日本、中止を求める」というほぼ同一のものです。このことから、情報源が同一で、記事の意図も共通であることをうかがわせます。
3紙とも、李大統領が来年2月の任期切れを控えた政権末期のレームダック(死に体)状態の中、「光復節」(8月15日)を前に求心力と支持率の回復を図りたい意図がある、と解説しています。背景には、旧日本軍によるいわゆる従軍慰安婦問題での国内世論の硬化があるようです。
外交における領土問題は、基本中の基本です。国境があるから外交が存在する、とすら言えます。その領土問題は日本の場合、3つの「島」に存在します。ロシアが実効支配している北方領土(歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島)、日本が実効支配し中国が領有を主張している尖閣諸島、そして韓国が実効支配し日本が領土を主張している竹島です。
ここにきて、3つの領土のすべてで外交を揺るがす動きが出ています。7月初旬には、ロシアのメドベージェフ首相が国後島を訪問し、「一寸たりとも領土は渡さない」と地元住民に断言したと伝えられます(msn)。一方の尖閣諸島は、石原都知事が公言した東京都による買い上げ案について、民主党政権が国による買い上げに言及しました。そして今回の竹島への韓国大統領の訪問計画です。
領土問題の難しさは、外交が「ハードパワー」(軍事力を背景とした政治的・経済的な影響力)の直接的なつばぜり合いの場になることです。サッチャー政権時代のフォークランド紛争(フォークランド諸島をめぐる英国とアルゼンチンの武力衝突)は、まさにハードパワーの直接衝突でした。この時は英国が圧勝し、英国から遠く離れた領土を一層確たるものにしました。このように、領土の実効支配がカギを握る、というのが外交のリアリズムとなっています。
しかし、そうした冷厳な現実に対して、21世紀の東アジアに新しい風を起こすことはできないのでしょうか。外交は「ハードパワー」だけでは能力を発揮できません。「ソフトパワー」との融合が欠かせません。ソフトパワーは、一国の「文化、歴史、社会や産業の魅力」と考えられますが、それにとどまりません。「国や民間が進めるさまざまな支援活動や、交流活動による相互理解と信頼関係」、そして「テクノロジーやノウハウを応用した、さまざまな分野での問題解決能力の発揮」などが、大きなソフトパワーとなります。日本はこうした領域で、今までたくさんの実績を積んできましたし、将来も一層大きな貢献が可能な立場です。
おりしもロンドンオリンピックでは、男子サッカーと女子バレーで、日韓が銅メダルを賭けて戦います。オリンピックは、各国が「ソフトパワー」の成果を競う世界最高の祭典のひとつです。勝っても負けても、お互いに健闘をたたえ合い、握手をして試合を終えるところに、国際競技の清々しさと美しさがあります。オリンピックが終わっても、領土問題は続きます。日韓も日露も日中も、互いに礼節をもって課題解決力を発揮する「ソフトパワーの競争」をする好機です。
讀賣新聞
【記事】 韓国大統領きょう竹島へ
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 韓国大統領きょう竹島へ
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 韓国大統領きょう竹島へ
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 経常増益2%に鈍化
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 消費増税で中小企業に悪影響
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ