【リグミの解説】
国内航空3位のスカイマークが経営破綻しました。6紙がそろって社説で論じています。特徴的な指摘を比較します。
<読売新聞> スカイマーク 強引な経営手法が招いた破綻
・ スカイマーク破綻に、航空行政も有効な手を打てなかった。経営改善策として、スカイマークは日航との共同運航を提案したが、公的支援で再生した日航の事業拡大につながることを理由に国土交通省は難色を示した。全日空を交えた共同運航などを模索するうちに、経営が行き詰まった。競争促進による利便性向上と、航空会社の経営安定をいかに両立させていくか。航空行政の在り方を点検すべきだ。
<朝日新聞> スカイマーク―空の競争を立て直せ
・ 国交省は自らの姿勢を省みるべきだ。スカイマークを巡っても、日航との提携方針を打ち出した際に太田国交相が「厳しく判断する」と語り、全日空を巻き込む方向に事実上誘導した。民主党政権のもとで破綻(はたん)しながら劇的な再生をとげた日航に対しては、かつて蜜月関係にあった自民党の厳しい姿勢が目につく。そんな政治状況への配慮がなかったと言い切れるかどうか。日航だけとの提携が公平な競争を妨げると考えたのなら、きちんと説明するべきだ。
<毎日新聞> スカイマーク 新たな挑戦に期待する
・ とどめを刺したのが、エアバス社製超大型機「A380」の購入だ。結局、支払い能力の不足からキャンセルせざるを得ず、巨額の違約金を課されてしまった。大株主で社長だった西久保慎一氏が圧倒的支配力を持ち、暴走を制御する経営体制が不在だったことが失敗を決定的にしたと見られる。失敗の責任は重いが、役所の采配のもとでJALやANAとの提携を進めるより、経営責任者が交代し、法律に沿った透明な形で再生を試みる方が望ましい。
<日経新聞> 寡占化が懸念されるスカイマークの挫折
・ スカイマークにまず求めたいのは、安全運航の徹底である。経営状態がどうあれ、飛行機を飛ばす以上は安全の確保が大前提であり、それが揺らげば経営再建にも大きな支障となる。航空業界を所管する国土交通省には、乗客の足に混乱をきたさないよう万全の体制を敷いてほしい。万一スカイマーク機の運航が止まった場合でも、ANAホールディングスや日本航空などの他社便を増やすなどして、乗客の利便確保に努めるべきだ。
<産経新聞> スカイマーク破綻 安全と競争忘れず再生を
・ 業績不振を打開するため、日本航空と全日空に求めていた共同運航について、引き続き協議するという。収益向上には、効率的に座席を販売するため提携が必要との判断だが、大手2社を含む健全な競争環境の確保が前提でなければなるまい。同社以外の新興航空会社も競争に苦戦し、全日空の支援を受け入れた経緯がある。競争を通じ、多様なサービスや料金を提供するという、航空自由化の本分が改めて問われている。
<東京新聞> 航空3位破綻 消費者利益を損なうな
・ 心配なのは、大手二社の市場支配力がLCCや新興航空会社を含めて一段と強まる恐れがあることだ。新規参入があった路線では、大手が対抗して大幅な割引運賃を設定するなど、競争による運賃引き下げ効果が生まれた。独立経営を維持してきたスカイマークの破綻により、こうした動きが停滞したり寡占状態に逆戻りすることがあってはならない。
サウスウェスト航空の事例
米国のビジネススクールのケーススタディー(企業事例研究)の定番といえば、サウスウェスト航空が上げられます。1967 年にテキサス州ダラスで設立されたサウスウェスト航空は、たった3 機の中古ボーイング737型機をリース契約して事業を開始しました。既存の大手航空会社との「違い」を「低運賃」と「速さ」に求めました。
「低運賃」は安い航空機を手に入れ巨大な投資負担を持たないことと、余計なサービスをいっさいしないオペレーション(自由席のみ、機内エンターテインメントなし、エコノミークラスのみ、機内食なし、チケット販売は自社サイトのみ)などにより、大手の半額の運賃を実現しました。
起業家の創造性
「速さ」の実現法は一層クリエイティブです。小型機であるボーイング 737 型機に限定することで、旅客の搭乗や手荷物の積載にかかる時間を短縮。1機種に限定すれば、従業員の技術の熟練が早まります。さらに、サウスウエストでは、従業員にマルチタスクを課し、パイロットも機内清掃。一便でも多くの航空機を飛ばせるよう尽力します。さらに混雑する主要空港を避け、大都市の第2空港に集中することで利発着枠を増やしました。結果、サウスウェストのターンアラウンドタイム(次の出発までの地上待機時間)はたった10分。大手の6分の1に縮めることに成功しました。
サウスウェストは、従業員が機内でパフォーマンスを始めるなど、独特の企業文化があり、企業研究の題材としてこれほど面白いケースも少ないと思います。私自身、30年前にこのケーススタディーを米国で学び、経営者がクリエイティブな戦略で大手を負かし、メジャーになっていく姿に、一級のエンターテインメントのような醍醐味を感じました。サウスウェストは今日では500機以上の航空機を保有するメジャープレイヤーとして活躍しています。
規制緩和の効果
しかしサウスウェスト航空のケーススタディーで印象的なのは、航空行政の規制の話がほとんど出てこないことです。米国でも1960 年代までは、安全性の確保を主な理由に航空業界は厳しい規制によって保護されていました。規制緩和が始まる 1978 年まで、米国の航空市場は、ビッグ 4と呼ばれたアメリカン航空・ユナイテッド航空・イースタン航空・デルタ航空で形成されていました。民間航空委員会(CAB: Civil Aeronautics Board)が実質上のカルテルを容認していたためビッグ 4は横並びに均一価格を提供していたと言われます。
(ここまでの参考文献:模倣者としてのサウスウエスト
米国流の規制緩和やビジネスモデル、経営スタイルがかならずしも優れているわけではなく、日本の環境に適しているともいえません。ただ、起業家が創造性を発揮し、新しい価値を生み出す環境づくりのダイナミクスは見習うべきところがたくさんあります。
航空行政のケーススタディーを
航空業界は「安全」が他の交通サービスに比べ、圧倒的に重要です。何らかの公的規制が常に必要な分野です。しかし本日の各紙の社説を読み比べても、スカイマークの破綻について、航空行政への要請や苦言が並ぶことに、どこか違和感もあります。
健全な競争が新しいマーケットを創造し、経済社会全体を豊かにしていくために、行政がすべきことと、すべきでないことは何か。米国や他国の事例を客観的に分析し、日本にふさわしい全体観のあるビジョンを打ち出すべきです。政府や国交省が業界再編を主導するような方向での議論があるうちは、航空業界は前途多難であると思います。
政治と行政の役割が企業を上から抑え込んだり、指導する姿勢でなく、下から支え、背中を押すあり方に変われるかどうか。「岩盤規制」という言葉が流行していますが、規制緩和のあるべき姿を明示するために、「航空行政のケーススタディー」をまとめるのも一案だと思います。「日本のサウスウェスト航空」が(まったく別の業界を含め)、生まれる日はいつ来るでしょうか。
(文責:梅本龍夫)
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http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150129-OYT1T50130.html - スカイマーク12路線減便
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(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
- 死刑囚なおヨルダンに「パイロット生存証拠を」「日没」前に会見 メディア相
http://www.asahi.com/articles/DA3S11576805.html - 牛肉関税9% 米に提案 TPP日米交渉 十数年かけて
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(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
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http://mainichi.jp/select/news/20150130k0000m030175000c.html - 国民保護法発動せず 集団的自衛権行使時 ハードル下げる狙い
http://mainichi.jp/select/news/20150130k0000m010159000c.html - 東京五輪 活躍誓う 毎日スポーツ人賞表彰式
http://mainichi.jp/sports/news/20150130k0000m050055000c.html
(毎日jp http://mainichi.jp/)
- 大容量データ拠点 整備 大手5社、投資倍増
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ29HRY_Z20C15A1MM8000/ - 牛肉関税10%前後に 日米TPP10年以上かけて下げ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H5M_Z20C15A1MM8000/ - 死刑囚なおヨルダンに「期限」経過 後藤さん解放見えず
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGM29H85_Z20C15A1MM8000/
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
- 死刑囚なおヨルダンに「応じねば操縦士殺害」「イスラム国」要求 期限超す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150130-00000075-san-int - LCC台頭 存在意義薄れ 独立経営 譲れぬ一線 スカイマーク破綻 第三極の誤算
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150130-00000088-san-pol
(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/)
- 日本人人質事件 ヨルダン官僚「重要局面」操縦士安否なお不明
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015013002000131.html - JR南武支線に新駅 15年度末
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150130/CK2015013002000158.html
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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