【リグミの解説】 本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、日経が「消費増税関連法案の成立への動き」を報じています。東京新聞も、消費増税と生活保護を関連付けた記事です。
- 読売新聞は社説で、「日本政治の危機は瀬戸際で回避された。『先送りしない政治』の実現を目指して民主、自民、公明の3党が結束したことは、大きな意義がある」と合意を評価した上で、「野田首相が政治生命をかけると明言しているのに、輿石幹事長らは水を差してきた。混乱をもたらした民主党執行部は猛省すべき」、と民主党を厳しく批判しています。
- 朝日新聞の社説は、「改革の頓挫という最悪の事態だけは避けられた。首相の専権事項である解散判断に対して、重要法案を人質に取り確約せようとする自民党のやり方は筋違いだ。国会はやるべき仕事がまだ残っている。1票の格差是正、赤字国債の発行、原子力規制委の人事案の結論などだ」と民主・自民のみならず、政党政治全体を批判的に総括しています。
- 毎日新聞の社説は、「『何も決められない政治』に再び戻る危機はどうにか回避された。3党合意を高く評価してきたが、自民党の強硬路線への転換は理解に苦しむものだった」と自民党を批判。「民主党は、党分裂の末に消費増税法案を決定したのだから、所属議員は増税の必要性を総選挙で正々堂々と訴え、国民の理解を求めるのが政権与党の責任だ」と、民主党の自覚を促しています。
- 日経新聞1面と社説で、「消費増税の必要性はもはや論を待たない。日本がぬるま湯につかっていられる時代は去った」との認識を示したうえで、「自民党は国民を甘く見てはいけない。自分本位の行動を続けていれば、思ったほどの支持は得られまい」と民主党の足元を見た今回の自民党の行動を厳しく批判。「次の選挙ではどの政党も単独で過半を取れない可能性が高い。2大政党が主張をぶつけあい、妥協点を探る政治本来の役割がますます重要になる」と結んでいます。
- 以上の各紙が消費増税を支持しているのに対して、消費増税そのものに反対の立場を取る東京新聞は、増税のしわ寄せが来る弱者に光を当てる、独自色の強い記事となっています。
このどたばた劇を見て、やっぱり日本の政治はだめだ、と失望しシニカルな気分になるのは簡単です。でも、悪いことばかりではありません。今回の一連の動きで、各政党はどのような判断と価値観を示したのか、中小政党も含めてすべての政党の具体的な言動をつぶさに分析すれば、日本の将来を託すに値する政党や政治家が見えてくるのではないでしょうか。前を向いて、あるべき日本の将来像を作るために、貴重な1票を活用するタイミングが、「近いうちに」やってきます。
讀賣新聞
【記事】 一体改革あすにも成立
- 野田首相は8日夜、谷垣自民党総裁、山口公明党総裁と国会内で、消費増税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案の取り扱いについて対談。衆院解散の時期に関して「法案が成立した暁には、近いうちに国民に信を問う」との認識を示した。
- これを踏まえ3党首は、一体改革関連法案を早期成立させることで合意した。自民党は、内閣不信任決議案と首相問責決議案の提出を見送った。社会保障・税一体改革関連法案は、10日にも参院で可決、成立する運びとなった。
- 早期解散の確約を強く迫っていた谷垣総裁が、強硬姿勢を一変させたことで、解散時期について野田首相と何らかの密約があったのではないか、との見方も出ている。社会保障・税一体改革関連法案の成立の危機が回避された今、解散時期が具体的にいつなのかが今後の最大の焦点となりそうだ。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事】 消費増税法案成立へ
- 野田首相は谷垣自民党総裁と国会内で8日に会談。自民党が求めていた衆院解散の確約について、首相が「近いうちに国民に信を問う」としたことで、消費増税関連法案の今国会での成立について合意した。公明党の山口代表も了承した。
- 自民党は、内閣不信任決議案の提出をとりやめる。野党が提出している内閣不信任決議案は、自民党は欠席予定で、9日の衆院本会議で与党など反対多数で否決される見通しだ。
- 自民党が衆院解散の確約を求める強硬路線に転換したことで混迷した消費増税関連法案は、10日の参院本会議で可決・成立する運びとなった。ただ、解散時期についてあいまいな合意をしたことで、具体的な時期について解釈が割れるのは確実で、混乱する可能性がある。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事】 増税法案あす成立
- 野田首相は8日夜、谷垣自民党総裁と国会内で30分にわたり2人だけで話し合い、消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連法案について「3党合意を踏まえて早期に成立を期す。成立した暁には近いうちに国民に信を問う」ことで合意した。
- 谷垣氏が野田首相の言葉を、衆院の早期解散の確約と解釈したことで、野田首相が政治生命を懸ける消費増税関連法案は、10日に参院で可決・成立する運びとなった。
- 自民党は合意内容の文書化を求めたが、民主党側は拒否したため、解散時期の解釈が火だねとして残った。公明党の斉藤幹事長代行はBSフジの番組で「どんなに遅くても年内。秋の臨時国会の初めとか年内にあると感じている」と語るなど、「今秋解散」の見方が強まっている。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事】 消費増税案あす成立
- 野田首相は8日夜、国会内で谷垣自民党総裁、山口公明党総裁と会談。衆院解散について「社会保障と税の一体改革関連法案が成立した暁に、近いうちに国民に信を問う」と伝えた。谷垣氏と山口氏はこれを受け入れ、3党合意を踏まえ、一体改革関連法案の早期成立を目指すことで一致したため、法案は10日参院で可決、成立する見通しとなった。
- 野田首相は会談後に記者団に対して、「解散時期の明示には応じられない」とする自らの考えを自公の両党首が理解した、との認識を強調した。2012年予算の財源の裏付けとなる赤字国債の発行案や、衆院小選挙区の「1票の格差」を是正する法案についても、「これから真摯に協議していきたい」と述べ、解散前の処理に意欲をにじませた。
- 「近いうちに国民の信を問う」という表現をめぐって、具体的な解散時期の明示を求めてきた自民党内では反発が強まりかねない。民主党の輿石幹事長は、今国会での解散について「そんなことはない」と記者団に語り、解散時期の解釈について今後、混乱が拡大する可能性がある。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事】 生活保護、最後のとりで
- 私たちの暮らしを左右する社会保障と税の一体改革関連法案が、国会で与野党攻防の「取引材料」にされた8日。その周辺を、あるデモ隊が練り歩いた。「生活保護は恥じゃないぞ」」。それは、いま生活保護を利用している人たちの声だ。
- この日のデモに参加したのは、支援団体などの呼びかけで集まった103人。「ぜひ知っておいてほしいことがあります。生活保護は最後のとりでなんです」。大やけどで両目の視力と左足は膝から下、両手もも親指以外を失い、車いすで生活する日笠方彦さんは訴えた。
- 生活保護を抑制しようとする動きは国でも地方自治体でも強まっている。消費増税されて生活が苦しくなっても、制度そのものが手厚くなる可能性は低い。「国会では、財源か解散かの話ばかりで、ちゃんと僕たちを見ていない」と日笠さんは言う。民意を託されたはずの人々の茶番を、視力を失ったまなざしで見つめている。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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