2015.01.23 fri

2015年1月23日【新聞解説】15億人とつながる

2015年1月23日【新聞解説】15億人とつながる


【リグミの解説】

日本人が「イスラム国」のテロリズムの標的にされました。パリ新聞社襲撃事件が起きたばかりの今、日本が直接攻撃の対象になる事件です。読売と産経は、人質の解放に全力を傾けよという趣旨の社説を掲げています。
 
<読売新聞> 邦人人質事件 国際連携で救出策を探りたい
・ 世界が注目するのが、2億ドル(約236億円)という巨額の身代金要求への日本の対応だ。仮に日本が身代金を支払えば、テロリストの新たな活動資金に使われることになる。日本が脅迫に屈しやすい国だとみなされ、今後、世界中で日本人がテロの標的になりかねない。
・ 気になるのは、安倍首相の中東歴訪がテロリストを刺激し、今回の事件を招いたかのような、的外れの政権批判が野党の一部などから出ていることだ。首相の中東訪問は、各国との連携を深め、地域の平和と安定に貢献することが目的である。
 
<産経新聞> 日本人人質 無事解放に全力を挙げよ
・ 要求されている身代金は2億ドル(約236億円)だが、これを受け入れるわけにはいかない。テロに屈することは、新たなテロを誘発することになる。
・ イスラム国やアルカーイダに代表される過激組織は、本来の平和を愛するイスラム教徒とはかけ離れた存在であるはずだ。だからこそ、イスラム世界を挙げてこの蛮行を止め、人質救出に力を貸してほしい。日本政府も彼らに協力を求めるべきだ。
 
人命の位置づけ
「イスラム国」は話の通じる相手なのか。ふつうに考えれば「無理」という判断になると思います。自分の要求を通すために「禁じ手」を平然と使うテロリストほど厄介な交渉相手はいません。暴力に訴える相手に私たちは恐怖を感じます。同時に、そのような脅しをかけてくる相手を軽蔑します。しかし、恐怖も、軽蔑も、私たちから冷静な判断力を奪います。
 
毅然とした態度を保ち、身代金要求に応じない。さもなければ相手はわれわれを甘く見てさらにつけあがってくる。これが対テロの戦いにさらされている欧米諸国の共通認識です。日本の為政者はかつて、「一人の生命は地球より重い」とし、多額の身代金支払いに応じました。38年前に起きたダッカ日航機ハイジャック事件に際して、当時の福田赳夫首相が語った言葉です。
 
「目には目を」
当時、経済成長を続けていた日本は自動車や電化製品を諸外国にたくさん輸出していました。諸外国からは「テロまで輸出するのか」という非難を浴びました。しかし、当時は身代金要求に応じる例は少なくありませんでした。この後、各国は特殊部隊を編成し、テロ制圧に走るようになります。「目には目を、歯には歯を」すなわち、「暴力には暴力を」という路線に転じていきました。
 
その結果をどう判断したら良いのでしょうか。個別のテロ事件に毅然と対応すれば、犠牲者が出るのを覚悟しなければなりません。しかし、要求に屈すれば与しやすい相手とみなされ、次のテロ事件を誘発する、という見立ては本当に正しいのか。少なくとも、「目には目を」の対応だけでは、目前のテロ再発は阻止できても、巡り巡ってより大きく深刻なテロを誘発しているのが、今の世界の現実ではないでしょうか。
 
勇気と知恵を
私たちは、暴力に屈しない勇気と同時に、暴力を生まない知恵をも求められているのだと思います。テロの脅威が世界を覆うようになっても、日本が比較的テロ事件に巻き込まれずにきた理由はどこにあるのか。そして今後世界のあり方にどのような姿勢で臨むべきなのか。パリ新聞社襲撃事件と「イスラム国」による日本人人質事件は根っこでつながっています。
 
テロには毅然と対応しつつ、同時に、世界に15億人いるといわれるイスラム教徒に対して融和の手を差し伸べる。日本がただちにイニシアチブを取るべきテーマだと思います。15億人とつながる最初の一歩はどこにあるのでしょうか。わが国にいるイスラム教徒と話し合うことから始めるべきかもしれません。
 
人質にされた湯川遥菜さんと後藤健二さんが無事に解放されることを願っています。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 「イスラム国」人質 解放働きかけ全力 政府 部族・宗教者にも
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150122-OYT1T50113.html
  2. 欧州中銀が量的緩和 毎月8兆円 国債購入
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150122-OYT1T50138.html
  3. ロボット市場 2.4兆円に 政府新戦略 福島に開発拠点

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 反体制派通じシリアへ トルコ国境 人質の後藤さん
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11565289.html
  2. 先物勧誘 規制緩和へ 政府方針 収入・年齢に条件
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11565284.html
  3. 欧州中銀、量的緩和へ デフレ防止狙い初導入
    http://www.asahi.com/articles/ASH1Q1RKTH1QUHBI003.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 日本人殺害予告 解放交渉 鍵握るトルコ 対イスラム国 過去に実績
    http://mainichi.jp/select/news/m20150123k0000m030103000c.html
  2. 欧州中銀、初の量的緩和 デフレ回避 月8兆円資産購入
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20150123ddm001020132000c.html
  3. 東電元会長ら不起訴 福島原発事故 検察審再審査へ
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20150123ddm001040136000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 欧州中銀が量的緩和 国債など購入 1兆ユーロ超 来年9月まで 必要なら延長
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASGM22H8I_S5A120C1MM8000/
  2. 有機EL国内量産 17年にも 開発費800億円 ソニーなど出資新会社
    http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ22HPG_S5A120C1MM8000/
  3. 広がる感染症 命救う貢献 途上国に検査キット 医出づる国 国境を越えて
    http://www.nikkei.com/article/DGKKZO82251300S5A120C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 日本人人質 交渉頓挫か 捕虜と交換 金銭で条件合わず
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150123-00000079-san-int
  2. 欧州中銀 量的緩和を決定 国債購入など月8兆円
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150122-00000133-mai-brf
  3. 自衛隊派遣の「恒久法」周辺事態法改正で対応 政府・与党
    http://www.sankei.com/politics/news/150123/plt1501230004-n1.html

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 「イスラム国」追い返すか議論の末 後藤さん 検問所で拘束か 身代金 きょう午後期限
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2015012302000145.html
  2. 東電元会長ら再び不起訴 検審、強制起訴か 審査へ 原発事故
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015012302000144.html
  3. 辺野古移設で抗議 秘密保護法 言わねばならないこと 集団的自衛権
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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