【リグミの解説】
小中学校の統廃合
子どもの人数が極端に少ない小中学校が増えていることを受け、文部科学省は、約60年ぶりに統廃合の手引きをまとめました。クラス替えができないほど小規模になった場合は速やかに統廃合を検討するか、統廃合ができない場合はデメリットを解消する対策に取り組むことになります。本日の読売と毎日がこのテーマを社説で論じています。要旨を比較します。
<読売新聞> 小中学校統廃合 地域の将来見据えて進めたい
・ 学級数があまりに少ないと、子供の人間関係が固定化する。同じ子供が長期間、いじめに遭う恐れもある。クラス対抗の行事や部活動にも制約が生じる。集団生活で社会性を身に付ける機会が少なくなることが懸念される。子供たちの良好な教育環境を保つためには、一定の学校規模が必要になるのは間違いない。
・ 学校が地域コミュニティーの核としての機能を持っていることにも留意する必要がある。休日に開放された運動場で、汗を流す住民は多い。災害時には避難所となる防災拠点でもある。学校をなくすことが人口流出に拍車をかけ、地域の衰退を招くような事態は避けねばなるまい。
<毎日新聞> 学校統廃合 地域に根差した視点を
・ 明治以来、学校は子供の公教育の場であるだけでなく、しばしば地域の行事や社交、情報や意見交換の場の役割も担ってきた。近年は防災拠点としての比重も高い。それは地域の絆の象徴でもある。東日本大震災では被災地域の人たちが学校再開を切望した。復興の一つの証しであり、心の支えともなる。
・ 文科省が統廃合推進だけでなく「残す選択」を示したのは、政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」も反映している。それは、地域の小規模校の活性化、休校学校の再開支援などをうたう。だが、安定的、継続的な教員増員や施設整備など具体的な支援の裏づけがなければ、地域再生のカギとすることは難しい。国には、かけ声に終わらぬ覚悟が求められる。
教育に一家言
教育問題は誰しもが一家言持つと言われます。だからでしょうか、読売も毎日も、約60年ぶりという文科省の小中学校の統廃合方針の変更について、さらっと表面をなでるだけの論評に終わっています。百家争鳴となりかねない問題にあえて深入りしないということでしょうか。
私も、人並みに教育には関心があります。それはたぶん、人生の中で「教育される」立場にいた時間が長いこと、そしてそれが人生の多感な時期と重なることが大きいのではないかと思います。社会人になり人角の仕事ができるようになると、今度は好むと好まざるとに関わらず自分が「教育する」立場(部下の育成など)に立たされることも影響していると感じます。
人間の関係性の基本を学ぶ場
さらにいえば、親子の関係が人間の意識の形成に根本的な影響を与えることも見過ごせません。私たちは例外なく「子」という立場でこの世に生を受けます。「親」(または実の親でない養育者)との関係性を通して、私たちは世界の成り立ちや自分のあり方を理解し、生き方の基本を身に着けていきます。長じて「子」を持つ立場になれば、今度は自分が「親」として「子」に決定的な影響力を与える経験を積みます。
こう見ていること、教育とは「人間の関係性」の根本と常に関わる活動であることがわかります。私たちがつい一言さしはさみたくなる理由かもしれません。
60年で大きく変わった人口構造
文科省が統廃合の手引きをまとめた60年前といえば1955年。いわゆる団塊の世代のピークとなる1949年生まれの子どもたち約270万人が小学生になる時期でした。2013年の出生数は約103万人でした。60年間で子どもの数は6割以上減ったことになります。いっぽう人口構成全体を見ると、こんな感じでした。1955年は、中学生以下にあたる0~14歳の人口は約3000万人、15歳以上が6000万人、1対2の比率でした。これが2012年には、0~14歳の人口は約1700万人、15歳以上が1億1000万人、1対6の比率(正確には6.5)にまで変化します。
小中学校を見るふたつの視点
地域コミュニティーにおける小中学校の位置づけが、大きく変化しているとみなすことができる統計数値です。これは正反対のふたつの見方ができます。ひとつは、かつては小中学校は重要だったが、今は人口比で重要度が下がり、統廃合を合理的に進めるのは致し方ない、という発想。もうひとつは、地域コミュニティー=大人たちにとって小中学校の意味合いが変化し、児童の教育機関にとどまらない存在とみなすべき時代になっている、という見立て。このふたつです。
私個人としては、後者の見立ての方が「人間の関係性」という教育の本質から見て、より価値があるのではないかと考えます。子どもたちと日常的に接する機会がない大人が増えています。人口統計を見ればそれは当然のことであり、そこに社会の変化が加わります。教育において、親子・親族とも学校とも違うもうひとつの場が地域コミュニティーでした。その部分が社会から消えさって久しいです。私たちは、そこをもう一度良い形で取り戻すチャンスを与えられているのではないでしょうか。単純に小中学校の統廃合を進めるのが良いのか。それとも地域コミュニティーの問題として、主体的に教育に参画していくきっかけとするのか。
対話型教育の次代
最後にもうひとつ個人的見解です。日本の教育は明治維新後一貫して国家の要請に従い、規格化された人材の供給をめざしてきたように思います。その基本は教師から生徒への一方通行の教育スタイルです。でも今は、一つの正解を覚える時代ではありません。答えはひつつではない。場合によっては、答えが見つからないかもしれない。そういう社会においては、問いを発し続け、共に探求する教育姿勢が大事になります。
必然的に、クラス編成は少人数になるのがふさわしいと思います。対話型の教育では最大15人程度が活発になるように感じます。また教師と生徒との1対1の関係もより充実させる。さらに、生徒3人のセットももっと考えていいと思います。ひとりが話し、もうひとりが耳を傾ける。そして3人目がふたりの様子を客観的に見ている。この「発信」「受信」「観察」の3態は、対話型の教育の基本になっていくと思います。
そんな密度の濃い学校現場は、しかし人数が少なければ閉鎖的になるという弊害があります。そこで地域コミュニティーの大人たちが学校とつながり、日常的に活動を共にする地域教育をいっしょに考える。それが私のつたない「教育アイデア」です。
(文責:梅本龍夫)
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