【リグミの解説】
テロ事件後の「シャルリーエブド」
フランスの週刊紙「シャルリーエブド」へのテロ事件をきっかけに、表現の自由か宗教への冒とくか、という議論が起きています。シャルリー紙の風刺画家の一人は「表現の自由は条件や制限がついたものではない」と発言しています。同紙は事件後の最新号でも、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載しました。テロには屈しないという姿勢を示した形です。このテーマについて、本日の読売と毎日が社説を掲げています。要旨を比較します。
<読売新聞> 仏紙風刺画問題 多様な価値観受容する社会に
・ 仏国民は1789年のフランス革命で、政教分離の原則などと共に、表現の自由を勝ち取ったことに誇りを持っているとされる。風刺画も、王侯貴族や聖職者、政治家など権力者を批判する手段として根付いてきた。
・ しかし、文化が異なれば、風刺画に対する受け止め方も違う。表現の自由といえども、公共の福祉などに反すれば、無制限に認められるものではないというのが、日本における一般的な考え方だ。報道機関は、記事などが社会的に及ぼす影響を十分に考慮し、掲載する必要がある。受け取る側の多様な価値観を尊重する精神こそが、成熟した民主主義社会の基盤になる。
<毎日新聞> 表現すること 他者を尊重する心も
・ 表現の自由か宗教への冒とくか、という議論が起きている。だが、この二つは果たして、相いれぬものだろうか。表現の自由を守りつつ、宗教の違いなど価値観を異にする者が共存できる社会のありようを模索することこそ、必要なはずだ。言論への暴力に反対することと、表現の自由のあり方は、分けて考えるべきではないか。
・ 表現の自由は、多様な価値観を尊重しあう社会のためにこそ、守られるべきものであるはずだ。それには自分の価値観と同様に、他者の価値観も尊重することが大切である。他者の心情を傷つけ、差別する表現が無制限に許されるようになっては、社会はむしろ、多様さと寛容さを失い、場合によっては表現への権力の介入を招くことにもなりかねない。
風刺画、再び
私は、「シャルリーエブド」が最新号でも預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことは、テロに屈しないという姿勢を鮮明に出したという一点において、評価します。暴力は勝利できないという強烈なメッセージになるからです。
しかし、そもそも偶像崇拝を認めないと言われるイスラム教に対して、聖者を茶化す絵を描くことが、どれぐらいイスラム教徒の心を傷つけるかについて、私たちは思いを致す必要がありそうです。福島第1原発事故に対する風刺画で足が3本になった人々が描かれた例を思い出せば、このことは容易に想像できます。
表現の自由と基本的人権
「表現の自由」は、「基本的人権」と同じぐらい根源的な価値であると私も思います。同時に、この2つの根源的な価値は、実は一対のものなのではないかとも感じます。「表現の自由」とは、人間が本来「自由な存在」であることの表象です。そして「基本的人権」とは、人間は生まれながらにして(ありのままの姿で)認められ尊重されるという「存在することの尊厳」を謳ったものです。
存在そのものに尊厳がある人間は、自らの可能性を自在に表現する権利がある。それが「表現の自由」だと思います。したがって、「表現の自由」は他者の「基本的人権」と調和するものでなければならない。そういう関係なのだと思います。
表現の自由のさらなる高みに
であれば、風刺画はどういう立ち位置になるのか。私は、風刺の本質は、「真実をあぶりだすこと」だと思います。人々を抑圧したり、偏見に導くようなゆがみと間違いに満ちた世界において、「基本的人権」を取り戻し、本来の自由な存在に解放していく。それが、風刺画がめざすべきことだと感じます。偏見を助長する描写が過ぎるとすれば、それは「表現の自由」の逸脱となり、風刺画そのものの価値を貶めるのではないでしょうか。
「自由、平等、博愛(友愛)」という人類史的価値を獲得したフランス人であれば、「基本的人権」とは多様性を認め、偏見を排除していくものであり、「表現の自由」はそのことのために活用されるべきことを、どの国の人々よりもよく知っているはずです。「表現の自由」のさらなる高みをめざしてもらいたい、というのが私の希望です。
(文責:梅本龍夫)
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